長期と短期 短期から長期への移行

長期と短期

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/05/02 06:03 UTC 版)

短期から長期への移行

短期から長期への移行は次のようにされる。すなわち、需要と供給の均衡に関して、一部の短期均衡が同時に長期均衡でもあるとみなす。この均衡状態を、さらに均衡を妨げる要因を変化させて作り出した新たな短期均衡状態および長期均衡状態と比較する(この均衡を妨げるような要因とは、例えば物品販売税率が挙げられる)。この比較に対して、まず短期調整を描き、つぎに長期調整を描く。これらのそれぞれのプロセスは比較静学の考えに沿うものであり、このような静的な状態を比較・分析する手法はアルフレッド・マーシャル(1890)が開発したものである[6]。マーシャルは(一時的な)市場期間(産出量は固定)を「短期」として長期と区別した。こうした手法は、Viner 1931Hicks 1939、そしてSamuelson 1947によって形式化された[6]。この法則は短期限界費用曲線の正の傾きに関連している[注釈 2]

マクロ経済学における用法

「長期」と「短期」のマクロ経済学における用法はミクロ経済学によるものと異なっている。ジョン・メイナード・ケインズ1936年に刊行された主著『雇用・利子および貨幣の一般理論』において、市場経済が完全雇用から乖離し、経済が完全雇用に到達しない期間について論じ、経済のファンダメンタルな要素を強調した[8]。より近代のマクロ経済学における用法では、「長期」という語は「経済の総需要曲線と総供給曲線のシフトに関して価格水準が完全に柔軟である期間」として用いられている。「長期」では、加えて、経済の部門(セクター)間における労働力と資本の完全に自由な移動が仮定され、国際間の資本の完全に自由な移動が仮定されている。しかし、短期においてはこれらの条件のどれにおいても完全に満たされる必要はない。総需要曲線・総供給曲線のシフトに関して、価格水準は粘着的もしくは固定的である。資本も部門間を完全に自由に移動するわけではなく、また、資本の国際的な移動に関しても、国家間での利子率の違いおよび固定為替レートによって、資本は完全には自由に移動しないとされている[9]

長期分析の非現実性や、短期分析の軽視への批判はジョン・メイナード・ケインズによるものがある。貨幣供給を倍にすることで物価水準が倍になるということを主張する貨幣数量説の長期命題を評して、ケインズは「長期的には我々は皆死んでいる」と述べた(Keynes 1923, p. 65)。

関連項目


注釈

  1. ^ 長期であるからこそ固定資本を変化させることができるのであって、短期においては固定資本は変化させることはできない。
  2. ^ While the law does not directly apply in the long run it is not irrelevant. The long run is the planning phase. A manager deciding which of several plants to build would want to know the shape of the SR cost curves associated with each of these plants. Marginal diminishing returns are related to the shape of the short-run marginal and average cost curves. Thus the law indirectly effects long-run decision making per R. [7]

出典

  1. ^ Paul A. Samuelson and William D. Nordhaus (2004). Economics, 18th ed., [end] Glossary of Terms, "Long run" and "Short run."
  2. ^ Melvin & Boyes, 2002. Microeconomics, 5th ed., p. 185. Houghton Mifflin.
  3. ^ a b c Boyes, W., 2004. The New Managerial Economics, p. 107. Houghton Mifflin.
  4. ^ Melvin & Boyes, 2002. Microeconomics, 5th ed., p. 185. Houghton Mifflin.
  5. ^ Perloff, J, 2008. Microeconomics Theory & Applications with Calculus, p. 230. Pearson .
  6. ^ a b Whitaker 2008.
  7. ^ Pindyck & D. Rubinfeld, 2001, Microeconomics, 5th ed., pp. 185-86. Prentice-Hall.
  8. ^ Carlo Panico and Fabio Petri, 2008. "long run and short run," Short- and long-period in Keynes, The New Palgrave Dictionary of Economics, 2nd Edition. Abstract.
       • John Maynard Keynes, 1936. The General Theory of Employment, Interest and Money, pp. 4-5.
  9. ^ N. Gregory Mankiw, 2002. Macroeconomics, 5th ed. pp. 240, 120, and 327-329.


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