要石 香取神宮

要石

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/16 15:31 UTC 版)

香取神宮

香取神宮の要石

香取神宮の要石の地上部分は丸い。香取神宮の要石は総門の手前にある[18]

大村神社

大村神社の要石社

三重県伊賀市(旧・青山町)の阿保に所在する大村神社は、土地の守り神である大村神を祀る地震との関わりが深い神社であり、拝殿の西側に大鯰を抑える形で奉鎮されている[19]

また、近隣の名張市の下比奈知には、地震の神であるなゐの神を祀っていたとされている名居神社が存在する。

鹿島神社

宮城県加美町の鹿島神社にも要石があり、風土記によれば鹿島神宮のものを模したものだという。1973年にはまた別の要石が奉納され埋められた。

この鹿島神社は鹿島神宮と祭神は同じだが、他の多くの「鹿島神社」と違い、鹿島神宮ではなく塩竈神社からの勧請である。

各神社の関係

大鯰にを打ち下ろす武甕槌大神

『香取神宮小史』によれば、葦原中津国平定において香取ヶ浦はなお「ただよへる國」「地震(なゐ)頻り」であった[20]。これは地中に大きなが住みついて荒れ騒いでいるためであった[16]。そこで香取と鹿島の大神は地中に深く石の棒をさし込み、大鯰の頭と尾を刺し通した[16]。鹿島神宮の要石は大鯰のを押さえると伝えられる[6]鯰絵では、大鯰を踏みつける姿や、剣を振り下ろす姿がよく描かれる。 地上部分はほんの一部で、地中深くまで伸び、地中で暴れて地震を起こす大鯰あるいはを押さえているという。あるいは貫いている、あるいは打ち殺した・刺し殺したともいう。あるいは、2つの要石は地中で繋がっているという。また、龍は柱に巻き付いて国土を守護しているとも言われる[21]。ただし、大鯰(または竜)は日本全土に渡る、あるいは日本を取り囲んでいるともいい、護国の役割もある。なお、鹿島神宮と香取神宮は、日本で古来から神宮を名乗っていたたった3社のうち2社であり(もう1社は伊勢神宮)、重要性がうかがえる。

要石を打ち下ろし地震を鎮めたのは、鹿島神宮の祭神である武甕槌大神(表記は各種あるが鹿島神社に倣う。通称鹿島様)と、香取神宮の祭神である経津主神だといわれる(前述)[16]。ただし記紀にそのような記述はなく、後代の付与である。建御雷命(武甕槌神)は葦原中国平定国津神を悉く鎮め平らげたことから、大地を要石で押し鎮めたという伝説が生まれたとされる[2]。武甕槌大神は武神・神(剣をフルう神)であるため、要石はしばしば剣にたとえられ、石剣と言うことがある。『新鹿島神宮誌』では「建御雷神(タケミカヅチ)」「布都御魂(フツミタマノツルギ)」の語源より「天にありては雷(イカヅチ)としてものを震(フル)わせ、地にありては地震として震(フル)う」とし[22]、狭義としての地震ではなく「フツギョウ(払暁)」「万物の胎動としての震い起こし(剣を振う/震い起す大神、鹿島立ち、東国の芽生え、安産祈願としての常陸帯)[23]」等の象徴的意味合から要石信仰がはじまったとする[24]

また、大村神社の要石も武甕槌大神と経津主神によって神護景雲元年(767年)に奉鎮されたものとされており、現在は配祀神として祀られている[19]

鹿島神社の要石については、鹿島神宮のものを模したものであるとされている。

伊能穎則(江戸時代末期の国学者)は「あづま路は 香取鹿島の二柱 うごきなき世を なほまもるらし」と詠んでいる[16]

比喩

要石は、動かせないもの、動かしてはならないものの比喩に使われることがある。

ただし、重要なもの、欠けてはならないものの比喩に使われるキーストーン (keystone) が要石と訳されることがある。そのため、この2つの比喩は混同しやすい。


  1. ^ 鹿島神宮(学生社) 2000, p. 191a要石
  2. ^ a b c d 神道大辞典1巻(平凡社1937)コマ202(原本345頁)『カナメイシ 要石』
  3. ^ 新鹿島神宮誌 2004, pp. 52–53摂社 奥宮 祭神 武甕槌神荒魂
  4. ^ 鹿島神宮(学生社) 2000, pp. 20–21七不思議の一つ要石(かなめいし)
  5. ^ 新鹿島神宮誌 2004, p. 157鹿島神宮附近名所旧蹟図
  6. ^ a b c d 鹿島神宮(学生社) 2000, p. 191b.
  7. ^ a b 新鹿島神宮誌 2004, p. 19.
  8. ^ 宇治谷、日本書記(上) 1988, p. 64.
  9. ^ 新鹿島神宮誌 2004, p. 10.
  10. ^ 宇治谷、日本書記(上) 1988, p. 58.
  11. ^ 鹿島神宮(学生社) 2000, pp. 60–61常陸は天といわれていた
  12. ^ 鹿島神宮(学生社) 2000, pp. 68a-70はじめて祀られた場所
  13. ^ 鹿島神宮(学生社) 2000, pp. 68b-70.
  14. ^ a b 黒田 2003, pp. 195–201.
  15. ^ 香取神宮小史 1995, p. 68.
  16. ^ a b c d e 香取神宮小史 1995, p. 63b.
  17. ^ 黒田 2003, pp. 186–188.
  18. ^ 香取神宮小史 1995, p. 76〈香取神宮境内見取図〉
  19. ^ a b 大村神社
  20. ^ 香取神宮小史 1995, p. 63a要石
  21. ^ 黒田 2003, pp. 201–206.
  22. ^ 新鹿島神宮誌 2004, p. 105.
  23. ^ 新鹿島神宮誌 2004, pp. 87–88〈常陸帯の故事〉
  24. ^ 新鹿島神宮誌 2004, pp. 82–83.






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