月経前症候群 月経前症候群の概要

月経前症候群

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/06 13:13 UTC 版)

診断基準に合致するものは、社会的または経済的な能力に明確に障害がある場合である[4]。正確な原因は不明である[5]。月経前症候群が5.4%、精神障害としての月経前不快気分障害(PMDD)が 1.2%の有病率であり、欧米では2~4%とされる[4]

治療には、栄養改善と定期的な運動が推奨される[5][4]。イギリスのガイドラインでは、薬物療法の前に、チェストツリー大豆イソフラボンセント・ジョーンズ・ワートによる補完療法や、ビタミンB6マグネシウムカルシウムの補充が推奨されている[5]。より症状が重い場合には、SSRI系抗うつ薬や認知行動療法、経口避妊薬やホルモンが推奨されている[5][4]婦人科産婦人科)での診察・治療が一般的となっている[6]。詳しい治療法については、「月経前症候群#治療」を参照。

小史:医学と精神医学

キャサリーナ・ダルトン英語版は、1953年にイギリスで最初の月経前症候群(PMS)に関する医学論文を出し、1954年にロンドンのユニバーシティ・カレッジ病院に世界初のPMSの診療を設けた[7]。その1953年の研究では、心理的な症状を訴えたのは33%であった[8]。彼女が、1982年にプロゲステロンの安全性の審査のために呼ばれ、このホルモンが投与されている女性では55%が心理的な症状を訴えていた[8]

1987年にアメリカ精神医学会(APA)の診断分類である『精神障害の診断と統計マニュアル』(DSM)に、後期黄体期不快気分障害(LLPDD)の案が掲載され、1994年にそれが現在の月経前不快気分障害に変わった[8]。PMSの認識が公となるという大きな利点があった一方で、精神の専門家は身体を実際に診察する医学に長けていないという問題も生じた[8]。医学的にはPMSはプロゲステロンの投与が有効なホルモンの異常であり、精神科医や心理学者は、そうとはみなさず抗うつ薬心理療法で治療する傾向がある[8]

症状

身体的症状と精神的症状に分けられ、症状の程度と出現する症状には個人差がある。下記に代表的な症状を挙げる[9]

月経前症候群代表的症状
身体的症状 精神的症状
下腹部膨満感
下腹痛
頭痛
乳房痛、乳房が張る
腰痛
関節痛
むくみ、体重増加、脚が重い
にきび
めまい
食欲亢進
便秘あるいは下痢
悪心、動悸
過剰な睡眠欲
不眠
怒りやすい、反感、闘争的
憂鬱
緊張
判断力低下、不決断
無気力
孤独感
疲れやすい
不眠
パニック
妄想症
集中力低下、気力が続かない
涙もろい
悪夢を見る
異性に対してのみ攻撃的になり暴力をふるう

上記症状は単独で出る事は少なく複合で現れる。その為月経前症候群と呼ばれる。また症状の現れ方は月によって変化する事がある。また個人によっても症状が異なる。

原因

月経前症候群の正確な原因は不明である[5]。女性ホルモンのバランスが急激に変化することにより、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことが関係しているのではないかと言われている[10]


  1. ^ 高橋俊文、渡邊憲和、倉智博久、「月経前症候群」 臨床婦人科産科 66巻5号 (2012年4月)p.53-56, doi:10.11477/mf.1409103015 (有料閲覧)
  2. ^ 月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS) 日本産科婦人科学会
  3. ^ 佐野敬夫、「月経前症候群と更年期障害の関係」, Morse CA, Dudley E, Guthrie J, et al : Relationships between premenstrual complaints and perimenopausal experiences., J Psychosom Obstet Gynecol, 19 : 182-191,1998 『心身医学』 1999年 39巻 5号 p.341-, doi:10.15064/jjpm.39.5_341
  4. ^ a b c d e f g h i j k 産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2014.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u イギリス月経前症候群協会ガイドライン.
  6. ^ 武田 卓 (2011). “月経前症候群の治療”. 産科と婦人科 78: 1311-1314. 
  7. ^ K・ダルトン、W・ホルトン 2007, p. x.
  8. ^ a b c d e K・ダルトン、W・ホルトン 2007, pp. 91–95.
  9. ^ a b c 月経前症候群 (PMS) MSDマニュアル プロフェッショナル版
  10. ^ 月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)”. 公益社団法人 日本産科婦人科学会 (2018年6月16日). 2023年2月24日閲覧。
  11. ^ a b c K・ダルトン、W・ホルトン 2007, pp. 7, 12.
  12. ^ K・ダルトン、W・ホルトン 2007, p. 22.
  13. ^ 月経困難症治療剤ヤーズ配合錠による血栓症について』(pdf)(プレスリリース)医薬品医療機器安全機構、2014年1月https://www.pmda.go.jp/files/000147579.pdf2018年11月25日閲覧 
  14. ^ Marjoribanks, Jane; Brown, Julie; O'Brien, Patrick Michael Shaughn; Wyatt, Katrina; Brown, Julie (2013). “Selective serotonin reuptake inhibitors for premenstrual syndrome”. The Cochrane Database of Systematic Reviews: CD001396. doi:10.1002/14651858.CD001396.pub3. PMID 23744611. 
  15. ^ Armour M, Ee CC, Hao J, Wilson TM, Yao SS, Smith CA (August 2018). “Acupuncture and acupressure for premenstrual syndrome”. Cochrane Database Syst Re: CD005290. doi:10.1002/14651858.CD005290.pub2. PMID 30105749. https://doi.org/10.1002/14651858.CD005290.pub2. 
  16. ^ Cerqueira RO, Frey BN, Leclerc E, Brietzke E (December 2017). “Vitex agnus castus for premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder: a systematic review”. Arch Womens Ment Health (6): 713–719. doi:10.1007/s00737-017-0791-0. PMID 29063202. 
  17. ^ Verkaik S, Kamperman AM, van Westrhenen R, Schulte PFJ (August 2017). “The treatment of premenstrual syndrome with preparations of Vitex agnus castus: a systematic review and meta-analysis”. Am. J. Obstet. Gynecol. (2): 150–166. doi:10.1016/j.ajog.2017.02.028. PMID 28237870. 


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