昭和館 (栃木県庁舎)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/27 03:41 UTC 版)
建築
1938年(昭和13年)10月に竣工した、鉄筋コンクリート造一部鉄骨造地上4階地下1階建ての建築物である[1]。現存するのは、4代目の栃木県庁舎のうちの正面部分に相当する[8]。設計者は地元・栃木県出身の建築家である佐藤功一[1]、施工者は戸田組(現・戸田建設)である[3]。佐藤が設計し、同時期に建てられた滋賀県庁本館と意匠がよく似ている[8]。また、付近にある宇都宮中央警察署県庁前交番(2012年3月26日開設)は、レンガと石を用いて、昭和館の外観を模している[9]。
外観はルネサンス様式を基調としたもので、1階の人造石の横目地の強調と、2階から4階までを貫く灰色の付柱(ピラスター)によるスケール感の強調を特徴とする[2][10]。付柱の柱身は縦の深い堀溝があり、柱頭には佐藤のオリジナルであるコンポジット式の装飾を施している[10]。付柱と付柱のあいだの壁には薄茶色のスクラッチタイルを貼っている[2]。
佐藤が設計した滋賀県庁と宮城県庁は中央部に塔・ドームを載せて威厳を出しているが、昭和館は一段高くしているだけである[2]。この一段高くなっている部分の内部は「正庁」と呼ばれる、庁舎内で最も優雅な雰囲気を持つ部屋であった[2]。
内部のデザインはパルメット模様で統一している[2][10]。
現役庁舎時代の特徴
間口118メートル×奥行き64メートルで[1][2]、建築面積は1,129.54坪(≒3,741平方メートル)、延床面積は4,677.73坪(≒15,495平方メートル)であった[2]。建物は上から見ると「ロの字形」で、各室を結ぶ廊下は、北側と西側は外周部に、南側と東側は中庭側に配置することで、執務室の日照と採光を確保していた[11][12]。3階に知事室と貴賓室があった[13]。
本庁舎の西側にあった現存しない栃木県議会議事堂は、南側・西側の優美なファサードを特徴としていた[11][12]。議事堂を中庭ではなく西側に配置したのは、当時としては大胆な設計であった[2]。
佐藤の作品は古典主義・重厚を特徴としつつ、本人は常にネオ(新しい)を追求していた[2]。4代目栃木県庁舎は古典主義的な形式美を重視しつつも、車寄せの庇柱に軽快さが見られるなど、佐藤の作品らしさが窺える[2]。東京工業大学教授の藤岡洋保は、「戦前の府県庁舎のデザインの到達点を示す建築」、「佐藤功一の現存作品中の傑作」と評した[2]。また佐藤は都市景観の視点を持っており、周辺の景観との調和を図りつつ、単調なスカイラインにアクセントをつけ、街区を引き締めるという考えの下で設計した[3]。
- ^ a b c d e f g h i j k l 岡田・市田 2020, p. 56.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 岡田 2003, p. 130.
- ^ a b c d e 岡田 2003, p. 131.
- ^ a b c d “昭和館案内”. 栃木県管財課 (2010年10月30日). 2021年1月2日閲覧。
- ^ a b c d e f g “昭和館展示”. 栃木県立文書館 (2020年12月1日). 2021年1月2日閲覧。
- ^ a b c 「県庁舎本館の閉庁式 65年の歴史に幕」2003年10月4日付朝刊、栃木北32ページ
- ^ a b c d e f g 塙和也「新県庁舎 落成式に国会議員や首長ら380人招く」毎日新聞2007年12月15日付朝刊、栃木版27ページ
- ^ a b 「近江の近代建築7選 ヴォーリズだけじゃない ② 県庁舎本館 どっしり構える存在感」朝日新聞2009年11月18日付朝刊、滋賀版27ページ
- ^ 「れんが調の新交番 県庁前に設置 宇都宮中央署、17年ぶり管内に」朝日新聞2012年3月27日付朝刊、栃木版28ページ
- ^ a b c 岡田・市田 2020, p. 57.
- ^ a b 岡田 2003, pp. 130–131.
- ^ a b 岡田・市田 2020, p. 56, 58.
- ^ 岡田・市田 2020, p. 58.
- ^ a b c d 「重さ6000トン動いた! 栃木県庁旧本館の曳家工事公開」読売新聞2004年6月17日付夕刊、社会面19ページ
- ^ “県庁舎配置図”. 栃木県管財課 (2016年5月27日). 2021年1月2日閲覧。
- ^ a b c d e f 武石将弘「ひと紀行 100年の行く末見守る 新 県庁舎 玄関にトチノキの舟/日光並木杉も建材に 県産食材にこだわり」読売新聞2008年2月24日付朝刊、栃木2、34ページ
- ^ a b "「ふくしレストラン」オープン 福田知事「情報発信の場に」"朝日新聞2008年1月9日付朝刊、栃木版26ページ
- ^ 李舜"「いちご王国」に記念碑 生産量日本一50年連続祝う JAと生産者、県に寄贈 県庁前でお披露目"毎日新聞2020年8月22日付朝刊、栃木版21ページ
- ^ "「新時代」へ奮起促す 仕事始め トップあいさつ"読売新聞2008年1月5日付朝刊、栃木北31ページ
- ^ 長谷川陽子「伝統的な技術とキャリア 伝統工芸士13人認定」朝日新聞2014年7月20日付朝刊、栃木版37ページ
- ^ "「県民の警官」に3警部補 県庁昭和館で表彰式"読売新聞2016年11月18日付朝刊、栃木2、32ページ
- ^ 「ひも細工・紬、作って着て実感 きょうまで、県庁で伝統工芸品展」朝日新聞2009年10月10日付朝刊、栃木版29ページ
- ^ 作新V あの感動を写真で再び 県庁で29日から 大優勝旗も展示」朝日新聞2016年10月17日付朝刊、栃木版27ページ
- ^ 「県民の日 雨でも楽し 県庁や各地でイベント」読売新聞2019年6月16日付朝刊、栃木1、29ページ
- ^ 「県産品をPR販売 県庁でイベント 東京五輪・パラも」毎日新聞2019年6月16日付朝刊、栃木版23ページ
- ^ "明治〜昭和、県民のお宝と共に 「〝ふるさと とちぎ〟回想展」来月17日まで"朝日新聞2013年2月18日付朝刊、栃木版29ページ
- ^ a b 葛西大博「雑記帳 栃木県庁で12日 1組のカップルが…」毎日新聞2009年4月14日付朝刊、社会面29ページ
- ^ a b 尾河和子「♡♡公館結婚式♡♡ 気分はVIP」読売新聞2010年5月13日付朝刊、大阪版生活面A、17ページ
- ^ “あすは「環境の日」 県庁昭和館が緑にライトアップ”. 下野新聞 (2022年6月4日). 2022年6月8日閲覧。
- ^ a b 「自閉症に理解を 啓発コンサート 来月2日、宇都宮」朝日新聞2016年3月30日付朝刊、栃木版26ページ
- ^ 「女性への暴力 ノー 県庁昭和館ライトアップ」朝日新聞2018年11月21日付朝刊、栃木版25ページ
- ^ “ロケ実績”. 栃木県フィルムコミッション. 2022年11月3日閲覧。
- ^ 栃木県歴史散歩編集委員会 編 2007, p. 5.
- 昭和館 (栃木県庁舎)のページへのリンク