日本基督教団
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信仰と教義
信仰告白
詳細は「日本基督教団信仰告白」を参照。
教義・神学的立場
プロテスタント諸教派・教会が合同した合同教会であるため、各個教会や旧教派の流れをくむグループはそれぞれの伝統を継承しつつも、教団全体としてはプロテスタント諸教派・教会を広く包含するような、ゆるやかな教義・神学的立場を採ることが特徴である。現代のキリスト教の分類からいえば、自由主義神学の歴史的影響を多分に受けたメインライン・プロテスタントに属すると考えられるが、その傾向に反発する保守派の教会やグループ、教会派、カリスマ刷新運動の傾向をもつ教会やグループなど(ホーリネスの群れ、聖霊刷新協議会など)も、教団には存在する。また、教団の枠内で旧教派の信仰理解や制度に基づく教会形成を試みるグループもある。牧師・伝道師は教会・教派の伝統に基づいて最も近い立場の神学校から招聘することが多いが、合同教会化が進む中で、旧教派の枠組みを越えた招聘が行なわれることも増えている。
教団では女性教職者が認められており、多数の女性教職者が存在する。LGBTの教会への受容については、教会ごとに意識の差があるものの、カミングアウトして教会生活を送るLGBTの信徒もいる。性別適合手術後に正式に按手を受けた廣畑涙嘉牧師が有名である。日本基督教団三・一教会の平良愛香牧師はキリストの風集会を開催しLGBTの信徒の交流を行っている。新宿コミュニティー教会の中村吉基牧師は同性のパートナーをもつ同性愛者で、LGBTに寄り添う教会を運営している。
組織と運営
教団の運営
会議制を採る。全国にある17の教区の代表による日本基督教団総会が最高意思決定機関で、その議長である日本基督教団総会議長が代表者である。また、日本基督教団組織の執行責任者として総幹事が置かれる。
日本基督教団総会
日本基督教団歴代役員
全国の教区
17の教区があり、教区内の各個教会間の宣教・伝道協力の場となっている。教団と同じく会議制で運営され、教区総会・教区議長がおかれる。各個教会に対する教区の拘束力は、それぞれの旧教派からの伝統や習慣によって少しずつ異なる。
以下、全国の教区:北海教区、奥羽教区、東北教区、関東教区、東京教区、西東京教区、神奈川教区、東海教区、中部教区、京都教区、大阪教区、兵庫教区、東中国教区、西中国教区、四国教区、九州教区、沖縄教区(全17教区)
各個教会の運営
各個教会の運営も会議制が採られている。教会総会における選挙によって、現住陪餐会員(後述)の中から役員を選び、役員会を組織する。役員会の呼称は、旧教派・教会の伝統や特色によって、長老会、執事会など、異なることも多い。役員会は教会担任教師の主任者が議長となって、伝道や教会の運営に関する主要な事項を決定・実施する。教会総会と役員会の責任分担や権限の範囲の理解も、旧教派・教会の伝統や特色によって異なることがある。
信徒と教師
日本基督教団およびその教会は、信徒と教師の籍をもつものにより構成される。旧教派や教会の伝統、神学的理解により、信徒と教師の違いを教会活動における職分の違いとして対等な立場と理解する教会・グループもあれば、教師に特別の信仰的権威・地位を認める教会・グループもある。また、信徒の中から長老を選出し、これに特別の信仰的役割・地位を担わせる教会・グループもある。
信徒
日本基督教団における「信徒」とは、バプテスマ(洗礼)を受けて教会に加えられ、その教会の会員名簿に登録された者のことである。
信徒には、陪餐会員と未陪餐会員の区別がある。前者は、信仰を告白してバプテスマを受けた者および、未陪餐会員が堅信礼または信仰告白式を了した者。後者は、幼児で父母の信仰に基づいてバプテスマを受け未だ陪餐会員となっていない者。ここに言う陪餐とは、聖餐(式)に与る資格があるという意味である。(しかし近年、聖餐理解には幅が生じ、礼拝出席者全てに陪餐を認めている教会もあり混乱が生じている。)
教師
一般に「牧師」「伝道師」と呼ばれる教職者を、日本基督教団では「教師」と呼称する。教師には、正教師と補教師の区別がある。前者は日本基督教団の実施する正教師検定試験に合格して、教団議長の委任を受けた教区総会の議決を経て按手礼を受けた者がこれになる。後者は日本基督教団の実施する補教師検定試験に合格して、教区総会の議決を経て伝道の准允を受けた者がこれになる。
現在、補教師検定試験を受けて合格するまでに、以下の3つのコースのいずれかを経る。それぞれに、課せられる試験科目が異なっている。Aが最も試験科目が少なく、B、Cと増えていく。
- 通称Aコース:日本基督教団立東京神学大学大学院神学研究科博士課程前期課程、または日本基督教団認可神学校たる同志社大学・関西学院大学の大学院神学研究科博士課程前期課程を修了した者が経るコース。
- 通称Bコース:上記大学の学部段階の卒業者や東北学院大学文学部総合人文学科の卒業者、および日本基督教団認可神学校たる日本聖書神学校・鶴川学院農村伝道神学校・東京聖書学校の卒業者が経るコース。
- 通称Cコース:上記のような神学校を経ない者が受験するコース。独学、西南学院大学やルーテル学院大学など他教団・教派グループの神学校・神学教育機関卒業者が該当する。
教師には、その職分による分類がある。教会に仕える教師を教会担任教師といい、教会に仕える正教師は牧師と呼ばれ、補教師は伝道師と呼ばれるのが普通であるが、補教師でも便宜上牧師と呼ばれている場合がある。その他に、教区内において巡回伝道に従事する巡回教師、神学校で教える神学教師、日本基督教団関係学校で主としてキリスト教学や宗教科(聖書科)の教師を務める教務教師、海外において宣教に従事する在外教師がある。教会や神学校、あるいはキリスト教主義の学校に籍を置かないで、教区内に籍を持つ者を無任所教師と呼ぶ。
二種教職制・信徒籍/教師籍
補教師(伝道師)は教団の教憲教規上、聖礼典(洗礼・聖餐)の執行ができないことになっている。一方で、補教師の主任担任教師としての招聘、赴任そのものは制度上も認められており、こうした教会では日常的に聖礼典の執行が行なえない(聖礼典執行の際は外部から正教師資格を持つ牧師を招かねばならない)という矛盾が生じる。教師に正教師と補教師が存在する二種教職(二重教職とも)制は、第二次大戦下の宗教団体法が、日本基督教団統理者(現在の日本基督教団議長)と教会主管者(現在の主任担任教師)の双方を「教師タルヲ以テ充ツベシ」と規定していたことから、もともと各教派ごとに異なる教師制度であった(教師をおかない教派もあった)ものを、1941年の日本基督教団成立時に二種教職制とすることで対応した制度制度が、戦後もそのまま残存したものである。また二種教職制については、按手をうけていない補教師が正教師の執行する聖礼典の伝統や作法を継承するためにあえて存続の意義を見る考えもある。
また、日本基督教団では教師となると信徒としての教籍(信徒籍)を喪失して、教師としての教籍(教師籍)を得て籍の上では信徒とは区別される。
こうした、二種教職制や信徒籍/教師籍の区別は、信徒と牧師、あるいは牧師同士に職分ではなく身分としての「区別」を与えるものであり、「万人祭司(全信徒祭司)」に代表されるプロテスタントの理念に反するという批判がある。批判・抗議の意思を表すため、あえて正教師試験を受けない補教師や、補教師試験を受けない信徒伝道者が存在する(信徒伝道者そのものの伝統を持つ旧教派・教会もあるので、現にいる信徒伝道者が全てこれにあてはまるわけではない)。また、誰もが各個教会の信徒であり、その中から牧師を立てるという伝統のある教会・グループの中には、運用上、教師も信徒として各個教会の会員名簿に載せているところもみられる。その他、教会・教区として補教師の聖礼典執行を容認することが出来るかどうかの議論(兵庫教区等)や、日本基督教団紛争下で教団内グループが独自に執行した按手礼は有効かといった議論がある。
その他
他には「キリスト教教育主事」という、主に教会学校を指導する職種がある。資格は聖和大学人文学部キリスト教学科(2008年、関西学院大学教育学部に移行)のみで取得可能だったが、現在は教団立神学校、教団認可神学校および教団の指定する幼稚園教員・保育士養成校で所定の単位を取得し、試験を受けて取得するようになっている。かつては青山学院大学神学科でも取得可能だった。
注釈
- ^ a b 宗教年鑑平成28年版 2016, p. 120.
- ^ a b 『キリストこそ我が救い-日本伝道150年の歩み』日本基督教団日本伝道150年記念行事準備委員会
- ^ “統計 Statistics|日本基督教団公式サイト”. 日本基督教団 (2021年11月11日). 2022年6月8日閲覧。
- ^ 『信徒の友』2006年5月号
- ^ 金田隆一『戦時下キリスト教の抵抗と挫折』新教出版社
- ^ 『教団時報』第213号 日本基督教団1942年1月15日発行
- ^ 『日本基督教団史資料集第二巻』125-126
- ^ 『ホーリネス・バンドの軌跡』新教出版社
- ^ 井戸垣彰 『キリスト者であることと日本人であること』いのちのことば社
- ^ 金田隆一 『戦時下キリスト教の抵抗と挫折』新教出版社
- ^ 『特高月報』1942年11月号
- ^ 『日本基督教団史資料集第二巻』131
- ^ 中村敏『日本キリスト教宣教史』いのちのことば社
- ^ a b 金田隆一『戦時下キリスト教の抵抗と挫折』新教出版社
- ^ 中村敏『日本における福音派の歴史』いのちのことば社
- ^ 『教団時報』1942年12月15日
- ^ キリスト教学校歴史研究会『主を畏れる-資料に見る戦時下の金城学院と基督教』キリスト新聞社
- ^ 『日本基督教団資料集』第三巻
- ^ 安藤肇『教会の戦争責任・戦後責任』いのちのことば社 ISBN 4264026989
- ^ 『敬虔に威厳をもって』いのちのことば社
- ^ 『日本キリスト教宣教史』いのちのことば社292
- ^ a b 尾形守『日韓教会成長比較』いのちのことば社
- ^ 『教会の戦争責任・戦後責任』いのちのことば社
- ^ <研究ノート>「小崎道雄所蔵資料」についての紹介と解説原誠 同志社大学神学部
- ^ ナタナエルの信仰-エキュメニカル運動における小崎道雄竹中正夫[リンク切れ]
- ^ 戦争責任告白
- ^ 『日本基督教団史資料集第四巻』日本基督教団出版局
- ^ a b 中村敏『日本キリスト教宣教史』いのちのことば社
- ^ 中村敏『占領下の日本とプロテスタント伝道』福音主義神学会
- ^ 日本基督教団と在日大韓会基督教会総会との協約
- ^ 日本基督教団 実録 教団紛争史小林貞夫 東海教区・日下部教会 初版2011年12月 ISBN 978-4-905239-07-9 C0016
- ^ 日本基督教団 資料[リンク切れ]
- ^ 【4715号】常議員(信徒)プロフィール - 日本基督教団公式サイト
- ^ 『キリスト新聞で読む戦後キリスト教史』キリスト新聞社
- ^ 聖餐の乱れについて
- ^ 日本基督教団(日本キリスト教団)資料[リンク切れ]
- ^ K教師に対する「戒規申し立て」に憂慮する有志の会
- ^ 岐路に立つ日本基督教団 退任勧告決議をめぐって
- ^ 彷徨う聖餐共同体
- ^ 「唯一の、聖なる、公同の、使徒的教会」が建てられるために
- ^ 聖なる闘い、聖なる連帯――生き残ることが出来るか
- ^ 山口隆康「日本基督教団紅葉坂教会における違法な聖礼典の執行の問題」について(東京神学大学第39回教職セミナーにおける講演)
- ^ キリスト新聞2007年1月号
- ^ 『福音と世界』2010年3月号「北村慈郎牧師に「免職」戒規 編集部」
- ^ 日基教団 未受洗者配餐で北村慈郎牧師へ 史上初の「免職」戒規適用 2010年2月27日 Archived 2014年12月27日, at the Wayback Machine.
- ^ 同志社大学文学部神学科は日本西部神学校への合同を拒み、独自の神学教育を継続した(同志社々史々料編纂所 『同志社九十年小史』 学校法人同志社、1965年、327-330頁)。
- ^ 『官報』 1947年6月24日
- ^ 『日本キリスト教歴史大辞典』 教文館、1988年、22-23頁
- ^ “聖路加病院とチャプレンに110万円の賠償命令 元患者の女性が性被害訴え”. クリスチャントゥデイ (2022年12月23日). 2023年9月17日閲覧。
- ^ “日本基督教団所属教師による「性暴力訴訟」に関する判決を受けて”. 日本基督教団 (2022年12月28日). 2023年9月17日閲覧。
- ^ “聖路加国際病院のチャプレンによる性暴力事件について”. 日本聖公会 (2023年4月25日). 2023年9月17日閲覧。
- ^ “聖路加チャプレン事件の被害女性、日本基督教団と日本スピリチュアルケア学会に要望書”. クリスチャントゥデイ ( 2023-09-13). 2023年9月17日閲覧。
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