日本の自転車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/06 10:11 UTC 版)
通行空間
自転車は、原則として車道の左側を走行することが定められている[14][15]。ただし、車道が危険なためにやむを得ない場合は普通自転車に限って歩道の通行も認められている[16]。
このほか自転車の通行空間としては、道路法令に定められた各種の専用道路・道路の部分、道路交通法に定められた交通規制によるものがある。これらについては、根拠となる法律によって、通行できる自転車や通行方法について相違点が見られる。1970年以降、自転車の歩道通行が条件付きで認められている。自転車の歩道通行を認めた国は、ノルウェーを除き日本以外にはほぼ見られず[17][18]、特異な政策であるといえる。
車道左側(原則)
道路交通法では、自転車は他の車両と同様に歩道・路側帯と車道の区別のある道路での車道通行[19]、車道においての左側通行[20]が義務づけられている。
車両通行帯のない道路では、自転車を含む軽車両は、原則として道路の左側端を通行する[21]。車両通行帯 の設けられた道路(公安委員会の指定がある片側2車線以上の道路)では、原則として軽車両は最も左側の通行帯を通行する[22]。
ただし、車両通行帯に関する規定については、いくつかの問題がある(後述)。
左折レーン、直進レーンなどが設置してある交差点でも、どちらに進むかに関係なく、原則として最も左側の通行帯を通行しなければならない[23]。
自転車レーン
車道の左端に道路標識および道路標示または区画線により設置されている車両通行帯である。これは正式には普通自転車専用通行帯と言う。
あるいは、車両通行帯に満たない路肩部分を「路面表示」により通行誘導しているものも存在する[注 5][注 6][注 10]いずれも、縁石または柵により区画された自転車道とは異なる。
通行方法は「普通自転車専用通行帯」を参照。
自転車道
ここでは、縁石または柵により区画された自転車道のうち、道路構造令第2条第2号および道路交通法第2条第1項第3号の3に規定する縁石線又はさくその他これに類する工作物により区画して設けられる道路(車道)の部分を指して言う。
通行方法は「自転車道#狭義の自転車道」を参照。
路側帯
道路の左端に道路標示または区画線により設置されている部分であって、歩道の無い道路、または道路の歩道の無い側の左端に設置されたものである。なお、普通自転車専用通行帯は通例、歩道の有る道路または道路の歩道の有る側に限り設置されるため、路側帯との混同は法令上は起こらない。
通行方法は「路側帯」を参照。
歩道通行およびその要件
普通自転車は一定の要件により、歩道を通行できる(原則として徐行)。なお、普通自転車に該当しない自転車、軽車両は「歩道」の通行は認められない。
通行方法は「普通自転車#歩道通行の要件」および「普通自転車通行指定部分」を参照。
各種の「自転車道」
日本の法令上「自転車道」という用語は、「自転車道の整備等に関する法律」に見られるように道路法令に定められた専用道路や道路の部分の総称として広義で使われる場合と、道路構造令・道路交通法にいう道路の部分を指す狭義で使われる場合がある。
- 自転車専用道路 … 道路法第48条の13第1項
- 自転車歩行者専用道路 … 道路法第48条の13第2項
- 自転車道 … 道路構造令第2条第2号
- 自転車歩行者道 … 道路構造令第2条第3号
道路交通法・交通規制によるもの
- 自転車専用通行帯 … 第20条第2項
- 普通自転車以外の通行が禁止されている道路 … 第8条第1項
- 普通自転車が通行できる歩行者用道路 … 第8条第1項
- 路側帯 … 第2条第1項第3号の4(定義)、第17条の2第1項(通行可の根拠)
- 普通自転車通行可の歩道(自転車歩行者道) … 第63条の4第1項
- 自転車横断帯 … 第2条第1項第4号の2(定義)、第63条の6・第63条の7(義務の規定)
注釈
- ^ 四輪以上の自転車の規定は、2020年12月1日に改正施行された道路交通法施行規則第1条の5で新設された。
- ^ 2013年12月1日以降、路側帯の通行も左側のものに限定された[10]。なお、歩道や自転車歩行者道については規定されていないため、道路の右側にある道路を通行しても構わない。
- ^ 車道はもとより、路側帯、普通自転車の歩道通行部分や自転車道(狭義)、自転車専用道路等であっても禁止である。
- ^ 道路標識で許可されている場合に限り、普通自転車同士の2台の並進に限り許可される。ただし、「並進可」の標識は全国で数箇所しかなく、東京都には1箇所もない[11]。なお、他の自転車を追い越す場合に短時間並進する行為は(ここで言う並進には該当せず)は禁止されない[12]。
- ^ この場合、車両通行帯が無く、かつ(左側に)歩道が無い場合においては、道路左端の実線(実線+破線、二本実線を含む)で区画された部分は、自転車レーンでは無く歩行者も通行する路側帯となる(道路構造令上も通例は路肩となる)。ただし、路側帯においては、自転車の通行誘導「路面表示」は行われない。この場合、路側帯の右側に接した車道部分の左端に自転車の通行誘導「路面表示」が設置される場合もある。なお、この位置は道路交通法第18条第1項の「道路(車道)の左側端」となる。(路側帯は、軽車両も通行可であるが、原則として歩道に準じ歩行者が通行するものであるため、同条同項の道路の左側端の範疇から除外される。)
- ^ また、車両通行帯が無く、かつ(左側に)歩道が有る場合においては、道路左端の実線などで区画された部分は車道外側線となり、道路構造令上の路肩となる。この部分は路側帯扱いとはならないため歩行者は原則として通行できない。この車道路肩部分にも「路面表示」による通行誘導が設置される場合がある。この場合、道路交通法第18条第1項を補足する誘導表示とも考えられるが、この「路面表示」に関わらず、自転車を含む軽車両は車道の左側端(歩道との境界寄りで通行に支障が無いできるだけ端部)を、原則として通行する。
- ^ ただし、駐停車などの場合や、道路外に出るためにまたは進行方向別通行区分が設置されていない交差点において左折する場合、軽車両または二段階右折原動機付自転車が右折のため交差点の側端に寄って通行する場合、緊急自動車に避譲する場合などは、この部分に入る。
- ^ 実態上は、路肩部分が自転車・軽車両の通行に十分な幅員の場合、自転車・軽車両が通行していたが、法令上は自転車・軽車両も路肩の左側の第一通行帯を通行する規定となっていた。
- ^ ただし、普通自転車専用通行帯として設置される場合は法的にも通行位置が同一となるが、「路面表示」による通行誘導である場合には、厳密には法令上の通行位置とは一致せず、「法定外表示」と扱われる余地もある。
- ^ さらに、車両通行帯が有り、かつ(左側に)歩道が有る場合においては、道路左端の実線などで区画された部分は、車両通行帯最外側線であり、かつ道路構造令上の路肩となる。この部分は、路側帯扱いではなく歩行者が原則として通行できない事はもとより、車道としても車両通行帯を構成する部分ではないため、原則として自転車、軽車両を含む全車両はこの部分を通行しないが[注 7]、この路肩部分にも「普通自転車専用通行帯の道路標識・道路標示」または「路面表示」による通行誘導が設置される場合があり、その場合は運用が異なる。「普通自転車専用通行帯の道路標識・道路標示」による設置の場合、車両通行帯最外側線は道路交通法上は単なる車線境界線として機能し、当該普通自転車専用通行帯の部分が第一専用通行帯となる。「路面表示」による通行誘導の場合、軽車両・自転車は原則としてこの部分を通行することとなる。従来は、車両通行帯最外側線の左側部分の路肩部分には、自転車レーンの表示(普通自転車専用通行帯・「路面表示」による通行誘導のいずれか)がされる事はなく、この部分における自転車の通行は法令上曖昧なままであった[注 8]、自転車レーンの表示により通行誘導位置が明確となった[注 9]。なお、そもそも路肩部分が狭隘であるかまたは存在しない(車両通行帯最外側線が引かれていない)場合、普通自転車専用通行帯としての設置は無く、単に路肩部分(あるいは第一通行帯の左端部分)に「路面表示」による通行誘導が行われるだけである。
- ^ 都道府県により異なり、静岡県・神奈川県では5mとなっている。
- ^ 都道府県により異なり、佐賀県・静岡県・山梨県・神奈川県・東京都では赤色だけ、その他の都道府県では赤色または橙色が認められている。
- ^ 都道府県により異なり、静岡県・山梨県では50mとなっている。
- ^ 兵庫県は、条例により保険加入を2015年10月から義務化する[53]。兵庫県交通安全協会の「自転車会員」になれば加入できる形式を取る。
出典
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- ^ 佐野裕二『自転車の文化史 : 市民権のない5,500万台』文一総合出版、1985年、81ページ
- ^ 歴史探訪「うつくしま」への系譜 日本最古の自転車を製作 鈴木三元が夢見た 三元車のロマン
- ^ “三元車展 日本最古の国産自転車 初公開 三元車がやってくる!!」”. 2011年7月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年11月27日閲覧。
- ^ 輸入実績表(自転車・同部品・同付属品)2022年01月 出所:財務省貿易統計 (一財)自転車産業振興協会
- ^ 疋田智『大人の自転車ライフ : 今だからこそ楽しめる快適スタイル』光文社、2005年 ISBN 4334783619 74ページ
- ^ 小池一介『華麗なる双輪主義 : スタイルのある自転車生活』東京書籍、2006年 ISBN 9784487801190 23ページ
- ^ 斎藤純『ペダリスト宣言! : 40歳からの自転車快楽主義』日本放送出版協会、2007年、ISBN 9784140882405 129ページ
- ^ a b “自転車の安全利用の促進について”. 内閣府 (2022年11月1日). 2023年3月5日閲覧。
- ^ “自転車走行、路側帯は左側だけ 改正道交法施行”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2013年12月1日) 2018年2月5日閲覧。
- ^ 警視庁広報課のツイート
- ^ “併走は原則禁止”. 自転車道路交通法研究会 (2013年5月1日). 2018年2月5日閲覧。
- ^ “自転車用ヘルメットの着用”. 警視庁 (2023年1月13日). 2023年3月6日閲覧。
- ^ 浅井建爾 2015, p. 49.
- ^ 道路交通法第18条第1項
- ^ 道路交通法第63条の4第1項第3号
- ^ 元田 良孝、宇佐美誠史、後藤俊、高橋慶多 『自転車歩道通行政策の矛盾に関する考察〜求められるパラダイムシフト〜』、自転車活用推進研究会『自転車DO!』第58号
- ^ 浅井建爾 2015, p. 50.
- ^ (第17条第1項)
- ^ (同第4項)
- ^ (第18条第1項)
- ^ (第20条第1項)
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- ^ 安全運転のポイント 三井住友海上
- ^ 側方間隔 教習所ナビ
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- ^ 永沢総合法律事務所 トピックス(岸田真穂「判例研究」『運転管理』平成17年6月号から)
- ^ グーサイクル 自転車ツーキニストでいこう!疋田智の連載えっせい 第9回「ほんなこつ“路上駐車”は何とかならないものか」
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- ^ https://www.tomin-anzen.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/kakusyutaisaku/jitensha/anzennriyou-sokushin/jitenshahoken/index.html
- ^ 運輸省編『80年代の交通政策のあり方を探る : 運輸政策審議会答申「長期展望に基づく総合的な交通政策の基本方向」』ぎょうせい、1983年、109ページ
- ^ 消える「自転車横断帯」警察、車道通行を徹底 日本経済新聞
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