日本の自転車 自転車の利用

日本の自転車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 06:24 UTC 版)

自転車の利用

通勤通学に利用されるほか、日常の買い物などに利用される。通勤・通学の場合、自宅から駅までという利用も多く、放置自転車の問題も起こっている。このほか、地域によっては、新聞配達、郵便配達、自転車便、卸売市場関係者、商店、警察官などで職業上の利用もある。駐車違反の取締り強化により、電動アシスト自転車を利用する運送業者も現れている。

1961年のスポーツ振興法(2011年の改正によりスポーツ基本法)では主に健康面から自転車旅行=振興法第10条(サイクリング=基本法第24条)が奨励され、自転車道の整備等に関する法律により地方自治体が河川沿いなどに自転車道を建設している。

公共交通機関(鉄道や船・飛行機など)で移動する際、自転車を分解し専用の袋に入れて運ぶことを「輪行」と呼ぶ。この輪行の方法によらず、自転車をそのまま鉄道車両に持ち込むことを認めるサービスをサイクルトレインという。このほかヤマト運輸日本サイクリング協会と提携し「サイクリングヤマト便」という制度を運用している。扱いはトラック便の一種である「ヤマト便」になり、一律60kg相当の扱いとなる(営業所持込みまたは集荷のみ、宅急便取次所では扱わない)。

日本サイクリング協会によれば、日本全国の自転車の保有台数は7千万~8千万台で、うち約3千万台が日常的に利用されていると推定している[25]

自転車にかかわる問題

自転車は、運転免許不要で身近な乗り物であるが、問題も発生している。日本における主な問題には次のようなものがある。次に箇条書きで挙げた問題についてはそれぞれの項目に譲る。

自転車の車体に関するもの

前照灯の不良(照度の不足、光軸のずれ、赤色の使用、球切れ)、後部リフレクタ(反射器材)の損傷や欠損、タイヤの空気圧不足、ブレーキの効きの悪い状態の放置といった整備不良がある。スポーツ車では、前照灯や尾灯(または後部リフレクタ)の未装備などの事例が見られる。2007年前後から流行しだした両輪または片方の車輪にブレーキを装備しないトラックレーサーノーブレーキピスト)が、本来認められない公道を走っていることが問題となっている。自転車には車検制度がないが、自転車安全整備制度(TSマーク制度)があり、付帯する保険の期限が1年となっていることで、定期的な点検を促している。一般的に自転車の取扱説明書には、初期点検と定期点検を奨励する文言がある。

一方、低品質な自転車も問題になっている。1990年代以降量販店をはじめ、一般的な自転車店でも売られるようになった低価格な輸入製品の中には、JISをはじめとした日本国内の安全基準に適合しないものもある。これは輸入品に関しては輸出国の安全基準を満たしていれば日本国内で販売できることによる。外見は国内の規格に適合した製品と変わらないため、こうした安価な製品が消費者に選ばれる傾向にある。自転車業界は、基準を満たさない製品の販売を禁止するPSC制度を自転車にも適用するよう申し入れているが、対象にならなかったため業界の自主的な安全基準「自転車協会認証」(BAA) を導入した[26]

自転車の運転に関するもの

自転車の違反行為に対しては、自動車等と同じく罰則規定が適用されることになっている。しかし、自転車利用者の違反行為に対する処分は、自動車等の一般的な反則を対象とするいわゆる交通反則通告制度(青切符)ではなく、即時、刑事手続きの下(赤切符)で進められることになるので実際の適用件数は少ない。警察庁は2006年4月『交通安全対策推進プログラム』を策定し、「悪質自転車対策」として「自転車利用者による交通違反の指導取締りの強化」を打ち出し、「酒酔い運転、信号無視、一時不停止、無灯火等の悪質・危険な違反については積極的に検挙する」とした[27]。同月13日には、通達『自転車利用者に対する交通指導取締りの強化について』を出した。警察庁のまとめによると、2007年1月から9月までに摘発(逮捕・書類送検・赤切符交付)された人数は599人にのぼり、前年1年間の585人を上回り、4年前の約5倍に当たる。警察官による指導・警告は2007年1月から9月までの期間で134万件、2006年は145万件であった。警察では、違反した自転車利用者に対して、まず指導・警告をし、従わない場合摘発をすることとしている[28]京都府警察2011年12月以降、信号無視や飲酒運転など、自転車での交通違反でも特に悪質なものに対し、赤切符(刑事処分対象)を発行することとしている[29]

以下本節において、条文番号は断りのない限り道路交通法のものであり、「罰金又は科料」を単に罰金と表記する。

歩行者との軋轢・事故

自転車対歩行者の事故は1995年の563件から2005年の2576件と、10年間で約4.6倍に急増している[30]

2013年1月には、自転車で事故を起こし、相手を負傷させたまま逃げたとして、道路交通法違反(ひき逃げ)容疑での逮捕者が出ている[31]大阪市北区天神橋筋商店街では、人通りの増加に伴い、自転車と歩行者との接触事故が多発するようになったことから、商店街側が自転車の通行規制を大阪府警察に要望。これを受け同府警は、2014年1月31日以降に天満駅南側において、時間帯を区切っての自転車の通行規制を実施することになった[32][33]

安全確認の不徹底

交差点などで安全確認を怠ったり一時停止を無視したりすること、さらには信号無視なども多く見られる。自転車事故は、72.7%が交差点付近で発生し、特に信号機のない交差点での自動車との出会い頭事故、信号機のある交差点での自動車との右左折時の事故が多くを占める。2009年に起こった自転車事故のうち、自転車側に法令違反があった割合は、3分の2を占め、死亡事故に限ると4分の3近くに上る。[34] また、警察庁の資料によると、自転車側が第一当事者である事故は15.4%(「交通統計平成23年版」(警察庁交通局)平成24年7月発行)である。[35]

自転車側に信号無視などの原因がある場合、自動車等との間で起こった事故であっても、裁判で自動車等の運転者の責任が不問になる例がある。2003年12月に大阪府大東市の交差点で、自転車をはねて重傷を負わせたとして業務上過失致傷に問われた二輪車の男性に対し、2006年12月、大阪高等裁判所は、罰金8万円とした枚方簡易裁判所の一審判決を破棄、逆転無罪の判決を言い渡した。判決は、自転車の男性は交差点を渡り終えた直後、右折先の道路が赤信号であったのに突然右折を始めたため、右から追い越そうとした二輪車の男性がこれを避けるのは不可能だったとして、二輪車側の注意義務を否定した[36]。2007年1月に大阪府寝屋川市の交差点で赤信号無視の自転車をはねて、乗っていた少年に重傷を負わせたとされたトラック運転手に対し、同年10月枚方簡易裁判所は、罰金10万円の求刑をしりぞけ無罪を言い渡した[37]

無灯火

自転車の前照灯は、従来、車輪の回転を利用した発電機(ブロックダイナモ)を電源とすることが多かった。この方式では点灯時は消灯時に比べ、肉体的負担が増す。日本発電ランプ工業会の調査によると、ランプ装着率は100%に近いものの、点灯率は25〜27%であるという[38]。2000年代半ば頃以降、高輝度で省電力のLEDランプが安価になり、一般用自転車・スポーツ自転車双方で普及しつつある。一般用自転車を中心に走行時の抵抗がほとんどないハブダイナモを電源とするものも現れている。

無灯火走行は対向する自動車等に視認されにくいだけでなく、歩行者や他の自転車などへの脅威となり、事故の一因となっている。無灯火運転は灯火の点灯義務(第52条第1項)違反であり、5万円以下の罰金が科される。

2人乗り・定員外乗車

2人乗り

自転車の定員は通常1人である。2人乗りは第55条の規定に違反する定員外乗車であり、5万円以下の罰金が科される。16歳以上の者が、幼児用座席を取り付けた自転車に6歳未満の幼児1人を乗車させる場合などの例外が、都道府県ごとに公安委員会規則により定められている。

3人乗りは、16歳以上の者が幼児用座席に幼児を1人乗車させ、幼児1人をひも等で確実に背負う場合に限り、一部の公安委員会で例外的に認められていた。しかし都市部の幼稚園や保育施設の周辺などでは、本来認められない幼児用座席を二つ取り付けた3人乗りが日常的に見られる光景となっている。警察は、こうした3人乗りについて2008年春の「交通の方法に関する教則」改正に合わせて禁止行為であることを周知徹底する方針を明らかにしたが、2009年7月「幼児二人同乗用自転車」の基準に適合した自転車の使用を前提に解禁した。2007年の改正で新設され、2008年6月に施行された第63条の10では、自転車に乗車する幼児児童にヘルメットを着用させる努力義務を保護者に課している。

ながら運転など

このほか、携帯電話の使用や喫煙、犬の散歩をしながら、あるいは傘を差しながらといったながら運転は、自動車のながら運転と同様に安全運転義務(第70条)違反になる場合があり、3月以下の懲役または5万円以下の罰金が科される。

追越しの際の一時的な場合などを除き、並進は禁止されている(第19条)。自転車をはじめとした軽車両でも飲酒運転は禁じられており、酒酔い運転は自動車の場合と同じで5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される。

他、鉄道バスなど交通機関で通勤するとして職場から通勤手当を受け取っていながら、実際には自転車で通勤する「闇通勤」も見られる。職場の中には、こうした闇通勤に対して懲戒処分を課す例もある[39]

道路環境や自動車との関係によるもの

自動車による幅寄せ

自転車に対する自動車・オートバイの故意の幅寄せ等の妨害運転行為は、その行為単独として暴行罪として立件される可能性があるほか、妨害のため危険な方法で故意に走行中に幅寄せや割込み等で著しく接近した場合は道路交通違反(妨害運転)の罪に問われる(2020年6月30日施行)。また、著しく接近しその結果他人を死傷させた場合には、危険運転致死傷(妨害運転致死傷)の罪に問われる。たとえ過失であっても道路交通法第70条の安全運転義務違反[40]に該当し十万円以下の罰金に処される。

これらの法律に反し、車道を走行中の自転車に自動車が意図的に幅寄せをしたり、安全上必要な側方間隔がとられていないことが多い[41]。そのために接触事故となる場合もある。例えば、2013年には埼玉県で自動車が故意に幅寄せを行い、車道を走っていた自転車にぶつけけがをさせる事故が発生しており、危険運転致死傷罪の容疑で逮捕されている。[42]

追い越し時の側方通過時の安全な間隔について、道路交通法上では具体的な数値は規定されていないが、過去の判例から側方通過時の車両同士(自転車に限らない)の間隔はおおむね1m以上を基準とし、道路の状況、車両の速度、車種等を考慮し、社会通念に応じて判断されるべきもの(16訂版道路交通法解説P71)とされる。自転車の背面から接近する場合は、最低でも1.5メートルは確保するのが望ましいと考えられる[43][44]

道路における通行空間の未整備

本来、自転車の通行空間は車道の左側や自転車道とされている。しかし、自転車道の整備延長は道路延長のわずか0.9%(1999年、建設省の調査による)に過ぎない。急激なモータリゼーションにより暴走自動車が市民を加害する事故が多発し、自動車による被害犠牲者が戦時中のような多さから1970年代には「交通戦争」と呼ばれ、この時に自転車も「車両等」でありながら歩道走行が容認されるよう道路交通法が改訂された(後述)。

自転車の安全確保のために自転車道や自転車レーンといった自転車専用の通行路が導入されることになったにもかかわらず、空間の有限性や整備コストなどを理由に困難だとして、その整備は進んでない。一方で「普通自転車歩道通行可の規制」が多用されるようになった。その総延長は2005年度末で6万8992.6kmと、全歩道の44.2%を占める[45]

自転車が車道を通行する場合、道路の幅員や路面状態、電柱といった障害物などのほか、自動車の駐停車、パーキングメーターパーキングチケット発給機といった路上駐車施設の存在により自転車が安全に通行できる空間が確保されていないことが多い。また、自転車レーンでさえも自動車違法駐車が多発しており、自転車安全走行環境確保のため警察による違法駐車取り締まり強化が為されている。

2001年9月、埼玉県川口市の市道で、自転車に乗った小学生が違法駐車車両を避けようとし、対向車と衝突して死亡した。この小学生の母親が対向車と違法駐車車両の運転者を相手取り損害賠償を請求した裁判で、2004年8月さいたま地方裁判所は対向車だけでなく違法駐車車両の運転者の損害賠償責任をも認める判決を言い渡した[46]。違法駐車車両の駐車場所は車道左側寄りであり、自転車の走行空間と重なり、事故の原因となることから「自転車乗りにとっては本当に深刻な問題」であるにもかかわらず、軽視され状況が悪化していると指摘される[47]

自転車に対する取締など

自転車に対する規制

ほぼ、道路交通法の改正による。

  • 2013年12月1日改正施行の同法では、法令の基準に適合するブレーキを備えてない自転車(典型例として「ピスト」等)に対して、警察官が停止させ、検査をし、応急措置や運転禁止命令をすることができるとされ、検査拒否や命令違反に対しては5万円以下の罰金に処されることとなった。
  • その他、一定の違反行為が都道府県公安委員会規則に規定されており、禁止行為に違反すると5万円以下の罰金となる。(以下は東京都の場合)
    • 自転車運転中に携帯電話を手で保持して通話使用や画面を注視するなどの行為
    • 傘を差し、物を担ぎ、物を持つ等視野を妨げ、又は安定を失うおそれのある方法での運転
    • 高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態での運転
    • 警音器の整備されていない自転車の運転

自転車運転講習

2015年6月1日から、以下の行為が「危険行為」に指定され、危険行為を3年以内に2回以上繰り返した場合、「自転車運転者講習」の受講が義務付けられる[48]。受講しなかった場合、5万円以下の罰金が科せられる[49]

  • 信号無視
  • 通行禁止場所の通行
  • 歩行者用道路での歩行者妨害
  • 歩行者用道路・路側帯の通行及び車道右側通行
  • 左方優先違反・優先道路通行車の妨害等
  • 右折時、直進車や左折車への通行妨害
  • 環状交差点安全進行義務違反等
  • 一時不停止
  • 歩道での歩行者妨害
  • 制動装置不備の自転車走行
  • 酒酔い運転
  • 安全運転義務違反(傘さし運転、携帯電話をしながらの運転等)
  • 他の車両等へのあおり運転(妨害運転) - 2020年6月30日施行

免許制度導入の是非

自転車の無秩序な通行とそれによる事故を解消するために、自転車にも免許制度を導入すべきだとの主張が時折見られる。

警察庁は、2013年の道路交通法改正試案に対するパブリックコメント募集結果で、自転車免許導入論に対して「自転車が幼児や児童といった低年齢者や自動車等の運転免許を受けていない者、自動車等を保有していない者にとって不可欠な移動手段となっていることや、自転車の運転方法が相当に平易で一般的に走行速度も低いことなどを踏まえると、現時点で自転車に運転免許制度を導入することは適切ではない」との認識を示した[50]

事故防止を目的とした交通安全教育の一環として、おもに児童・生徒を対象として自転車免許証を与える自治体・学校の実施例がある。これらはあくまでも交通安全教育の教材のようなものであって、法的な根拠・拘束力はない。

自転車の運転自体には運転免許を必要としないが、自転車運転中に事故の原因となった危険行為(薬物使用)を理由として自動車の運転においても危険を引き起こす可能性がある[51]として、運転免許停止の処分となった例がある。2012年5月奈良市の市道で後方を確認せず道路を横断し、二輪車と衝突事故を起こし逃げたとして、奈良県警察は同年11月20日、この自転車を運転していた男性に150日間の自動車運転免許停止処分を科した[52]

保険

自転車には、自動車等における自動車損害賠償責任保険(自賠責)にあたる加入義務のある保険はない[注 14]。自転車総合保険は1980年に登場したが、2010年3月までに損害保険各社で販売が中止されている(現在は日本サイクリング協会会員に対して協会から斡旋があるのみ)。背景には保険料の割に支払いが多く、認知度が低く販売実績が少ないなどの事情がある。この結果自転車に特化した保険は団体向け販売のみになっている[54]。こうした傾向に関連して、「全国交通事故遺族の会」は自転車による人身事故を自賠責の対象とするよう提言している。しかし国土交通省は「自転車の実際の利用台数が不明で、どの程度の保険料とすればいいのか推計できない。車検のような機会がなく保険料の徴収も困難」(自賠責を所管する同省自動車交通局保障課)、「国民が受け入れるかどうか」(同省幹部)など、消極的立場をとっている[55]

自転車安全整備制度のTSマークには1982年4月以降保険が付帯しているほか、日本サイクリング協会などの自転車関係団体には会員を自転車団体保険の被保険者とするものがある。

交通事故傷害保険や普通傷害保険、家族傷害保険、海外旅行保険など自転車に特化したものでない一般に販売されている傷害保険においては、種類によるが自転車を用いたレジャーや通勤通学などの交通における対人及び対物の傷害に対する補償にも対応する保険商品がある。自動車保険にも人身傷害や日常生活賠償特約など、自転車での事故に対応した契約がある。

自転車保険は法律上は加入義務はないが、自治体によっては条例で加入が義務または努力義務となっている所がある[56]。2023年7月現在で義務化されているのは、都道府県単位では秋田県・宮城県・山形県・福島県・栃木県・群馬県・埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・新潟県・福井県・長野県・山梨県・岐阜県・静岡県・愛知県・三重県・滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・広島県・香川県・愛媛県・福岡県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県、政令市では岡山市、県庁所在地では金沢市である。また、努力義務化されているのは、北海道・青森県・岩手県・茨城県・富山県・和歌山県・鳥取県・徳島県・高知県・佐賀県である。また、地方条例で義務化・努力義務化される保険は、他人に対する賠償義務を担保する保険であり、自転車利用者の傷害等を担保する保険ではない。「自転車保険」の名称で販売されている保険に限らず、火災保険自動車保険傷害保険等の保険商品の特約や、クレジットカードに付帯される保険で、条例が要求する個人賠償責任を担保するものであれば、加入義務に対応できる。[57]

法規・行政上の待遇

自転車は、法規や行政の上で、車両であるにもかかわらず歩行者に近い扱いを受けることが多い。「自家用車と違って燃料の消費等を通じてその利用を把握しにくく、かつ、基本的な移動手段としての性格を有する」(「長期展望に基づく総合的な交通政策の基本的方向—80年代の交通政策のあり方を探る」第二部第四章第三節[58])ために、運輸行政上“交通機関”とみなされてこなかった、との指摘がある。

  • 道路交通法第63条の7により交差点を通行する際に自転車横断帯を進行することが義務づけられているが、その大部分が歩道通行を前提に横断歩道の車道側に沿って設けられている。車道を走行してきた自転車がこれに従った場合に歩行者や自動車との事故が多発した[59]ことなどから、自転車横断帯は順次撤去されているが、いまだに残存する横断帯があり、法改正もなされていない。
  • 左折レーンのうち特に2車線以上のものや交通島によって構造的に分離されるものなど、車両通行帯の設計や信号機の運用により、自転車が安全に直進や右折をすることが困難な交差点をはじめ、自転車での通行がまったく考慮されていない設計の箇所がみられる。[要出典]

このほか法令などの影響により、日本では普通自転車に該当しない特定の車種の自転車を目にする機会が諸外国に比べ少なくなっている[要出典]。たとえばタンデム車については、サイクリングロード以外の公道での二人乗り走行が禁止されている場合が多かった。ただし、2010年代以降徐々に都道府県別に解禁される自治体が相次いでおり、2019年中までに47都道府県中27都道府県までが、タンデム車二人乗りの原則解禁、または条件付き解禁を行っている。

自転車関係団体など


注釈

  1. ^ 四輪以上の自転車の規定は、2020年12月1日に改正施行された道路交通法施行規則第1条の5で新設された。
  2. ^ 2013年12月1日以降、路側帯の通行も左側のものに限定された[10]。なお、歩道や自転車歩行者道については規定されていないため、道路の右側にある道路を通行しても構わない。
  3. ^ 車道はもとより、路側帯普通自転車の歩道通行部分自転車道(狭義)、自転車専用道路等であっても禁止である。
  4. ^ 道路標識で許可されている場合に限り、普通自転車同士の2台の並進に限り許可される。ただし、「並進可」の標識は全国で数箇所しかなく、東京都には1箇所もない[11]。なお、他の自転車を追い越す場合に短時間並進する行為は(ここで言う並進には該当せず)は禁止されない[12]
  5. ^ この場合、車両通行帯が無く、かつ(左側に)歩道が無い場合においては、道路左端の実線(実線+破線、二本実線を含む)で区画された部分は、自転車レーンでは無く歩行者も通行する路側帯となる(道路構造令上も通例は路肩となる)。ただし、路側帯においては、自転車の通行誘導「路面表示」は行われない。この場合、路側帯の右側に接した車道部分の左端に自転車の通行誘導「路面表示」が設置される場合もある。なお、この位置は道路交通法第18条第1項の「道路(車道)の左側端」となる。(路側帯は、軽車両も通行可であるが、原則として歩道に準じ歩行者が通行するものであるため、同条同項の道路の左側端の範疇から除外される。)
  6. ^ また、車両通行帯が無く、かつ(左側に)歩道が有る場合においては、道路左端の実線などで区画された部分は車道外側線となり、道路構造令上の路肩となる。この部分は路側帯扱いとはならないため歩行者は原則として通行できない。この車道路肩部分にも「路面表示」による通行誘導が設置される場合がある。この場合、道路交通法第18条第1項を補足する誘導表示とも考えられるが、この「路面表示」に関わらず、自転車を含む軽車両は車道の左側端(歩道との境界寄りで通行に支障が無いできるだけ端部)を、原則として通行する。
  7. ^ ただし、駐停車などの場合や、道路外に出るためにまたは進行方向別通行区分が設置されていない交差点において左折する場合、軽車両または二段階右折原動機付自転車が右折のため交差点の側端に寄って通行する場合、緊急自動車に避譲する場合などは、この部分に入る。
  8. ^ 実態上は、路肩部分が自転車・軽車両の通行に十分な幅員の場合、自転車・軽車両が通行していたが、法令上は自転車・軽車両も路肩の左側の第一通行帯を通行する規定となっていた。
  9. ^ ただし、普通自転車専用通行帯として設置される場合は法的にも通行位置が同一となるが、「路面表示」による通行誘導である場合には、厳密には法令上の通行位置とは一致せず、「法定外表示」と扱われる余地もある。
  10. ^ さらに、車両通行帯が有り、かつ(左側に)歩道が有る場合においては、道路左端の実線などで区画された部分は、車両通行帯最外側線であり、かつ道路構造令上の路肩となる。この部分は、路側帯扱いではなく歩行者が原則として通行できない事はもとより、車道としても車両通行帯を構成する部分ではないため、原則として自転車、軽車両を含む全車両はこの部分を通行しないが[注 7]、この路肩部分にも「普通自転車専用通行帯の道路標識・道路標示」または「路面表示」による通行誘導が設置される場合があり、その場合は運用が異なる。「普通自転車専用通行帯の道路標識・道路標示」による設置の場合、車両通行帯最外側線は道路交通法上は単なる車線境界線として機能し、当該普通自転車専用通行帯の部分が第一専用通行帯となる。「路面表示」による通行誘導の場合、軽車両・自転車は原則としてこの部分を通行することとなる。従来は、車両通行帯最外側線の左側部分の路肩部分には、自転車レーンの表示(普通自転車専用通行帯・「路面表示」による通行誘導のいずれか)がされる事はなく、この部分における自転車の通行は法令上曖昧なままであった[注 8]、自転車レーンの表示により通行誘導位置が明確となった[注 9]。なお、そもそも路肩部分が狭隘であるかまたは存在しない(車両通行帯最外側線が引かれていない)場合、普通自転車専用通行帯としての設置は無く、単に路肩部分(あるいは第一通行帯の左端部分)に「路面表示」による通行誘導が行われるだけである。
  11. ^ 都道府県により異なり、静岡県・神奈川県では5mとなっている。
  12. ^ 都道府県により異なり、佐賀県・静岡県・山梨県・神奈川県・東京都では赤色だけ、その他の都道府県では赤色または橙色が認められている。
  13. ^ 都道府県により異なり、静岡県・山梨県では50mとなっている。
  14. ^ 兵庫県は、条例により保険加入を2015年10月から義務化する[53]。兵庫県交通安全協会の「自転車会員」になれば加入できる形式を取る。

出典

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