日本の自転車 自転車の定義

日本の自転車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 06:24 UTC 版)

自転車の定義

道路交通法では、次のように規定される。同法で自転車が法的に定義されたのは1978年(昭和53年)の改正が最初である。自転車は、法的分類および道路標識等の用語上は、「軽車両」、「車両」、「車両等」に含まれる。

ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車(レールにより運転する車を除く。)であつて、身体障害者用の車、小児用の車及び歩行補助車等以外のもの (原動機を用いるものにあつては、人の力を補うため原動機を用いるものであつて内閣府令で定める基準に該当するものを含み、移動用小型車及び遠隔操作により通行させることができるものを除く。)
道路交通法第2条第1項第11号の2

道路交通法の定義により業務上過失傷害罪・重過失傷害罪などの公訴事実には、現代の日本国内では比較的見掛ける機会の少ない手こぎ式自転車四輪自転車三輪自転車と区別するため、「二輪の足踏み式自転車を運転し」などと表記される。

道路標識道路標示における「自転車」は、「普通自転車」の略称である(道路標識、区画線及び道路標示に関する命令 別表第2備考一の(六))。

日本産業規格 JIS D 9111:2016(自転車—分類及び諸元)では、「ペダル又はハンドクランクを用い,主に乗員の人力で駆動操縦され,かつ,駆動車輪をもち,地上を走行する車両の総称」と定義される。同規格の以前の版では、「乗員の運転操作により,人力で駆動され,走行する車両」とした上で、「十分な強度の車体構造」、「複数の車輪」、「乗員の座席装置」、「駆動、操だ(舵)、制動の諸装置」を備え・もつことを要件としていた(JIS D 9111-1980)。

自転車の下位分類と周辺

普通自転車
道路交通法と関連法令で、自転車のうち、一定の条件を満たし歩道を通行することのできるもののことをいう。日本国内の大部分の自転車が該当する。道路標識・道路標示における「自転車」という語は普通自転車の略称として使われている。
法律上の定義は、以下[9]
  • 車体の大きさ及び構造が道路交通法施行規則(昭和35年総理府令第60号)第9条の2の2で定める基準に適合する自転車で、他の車両を牽引していないもの。
<道路交通法施行規則第9条の2の2に定める基準>
  • 一 車体の大きさは、次に掲げる長さ及び幅を超えないこと。
    • イ 長さ190センチメートル
    • ロ 幅60センチメートル
  • 二 車体の構造は、次に掲げるものであること。
    • イ 四輪以下の自転車であること。
    • ロ 側車を付していないこと。
    • ハ 一の運転者席以外の乗車装置(幼児用座席を除く。)を備えていないこと。
    • ニ 制動装置が走行中容易に操作できる位置にあること。
    • ホ 歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないこと。
電動アシスト自転車
JIS D 9111:2016(自転車—分類及び諸元)の大分類の一つ。交通法令では「人の力を補うため原動機を用いる自転車」、「駆動補助機付自転車」と表記される。踏力アシストの比率を一定以下に制限する(時速24km以上では補助駆動力がゼロとなる)ことで、運転免許が不要な自転車として扱われている。
一輪車
「二輪以上の車」という要件を満たさないため、道路交通法上の自転車には含まれない遊具とされ、交通の頻繁な公道で使用することはできない。JIS D 9101:2012(自転車用語)では特殊自転車の一種として例示され「曲技,スポーツ,遊戯に使用する1輪の自転車」と定義されていた。同規格を統合したJIS D 9111:2016でも「その他の特殊自転車」として例示されているが、定義はなくなった。JISが一輪車を自転車の一種として扱ってきたのは、自転車メーカーの製品に一輪車が含まれることと関連する。
原動機付自転車
自転車に小型のエンジンを取り付けた乗り物(モペッド)を起源とするのでこの名があるが、法律上、自転車に含まれない
二輪車
自転車は一般に二輪であるものの、道路標識や道路標示における「二輪」や「二輪車」は、原動機付自転車と自動二輪車の総称であり、自転車を含めることはない。電動アシスト自転車の要件から外れた電動自転車もこちらに含まれ出力に応じて原動機付自転車と自動二輪車に分類される。ただし、道路標示「二段停止線(203の2)」における「二輪」の停止線は自転車など軽車両をも対象とする。

道路交通法上、サイドカーまたはサイクルトレーラー付きのものを除き、二輪・三輪の自転車、および普通自転車サイズ以下の四輪以上の自転車[注 1]を押して歩いている者はみなし歩行者として扱われる。このため歩道や路側帯を通行でき、かつ原則として通行する必要がある。


注釈

  1. ^ 四輪以上の自転車の規定は、2020年12月1日に改正施行された道路交通法施行規則第1条の5で新設された。
  2. ^ 2013年12月1日以降、路側帯の通行も左側のものに限定された[10]。なお、歩道や自転車歩行者道については規定されていないため、道路の右側にある道路を通行しても構わない。
  3. ^ 車道はもとより、路側帯普通自転車の歩道通行部分自転車道(狭義)、自転車専用道路等であっても禁止である。
  4. ^ 道路標識で許可されている場合に限り、普通自転車同士の2台の並進に限り許可される。ただし、「並進可」の標識は全国で数箇所しかなく、東京都には1箇所もない[11]。なお、他の自転車を追い越す場合に短時間並進する行為は(ここで言う並進には該当せず)は禁止されない[12]
  5. ^ この場合、車両通行帯が無く、かつ(左側に)歩道が無い場合においては、道路左端の実線(実線+破線、二本実線を含む)で区画された部分は、自転車レーンでは無く歩行者も通行する路側帯となる(道路構造令上も通例は路肩となる)。ただし、路側帯においては、自転車の通行誘導「路面表示」は行われない。この場合、路側帯の右側に接した車道部分の左端に自転車の通行誘導「路面表示」が設置される場合もある。なお、この位置は道路交通法第18条第1項の「道路(車道)の左側端」となる。(路側帯は、軽車両も通行可であるが、原則として歩道に準じ歩行者が通行するものであるため、同条同項の道路の左側端の範疇から除外される。)
  6. ^ また、車両通行帯が無く、かつ(左側に)歩道が有る場合においては、道路左端の実線などで区画された部分は車道外側線となり、道路構造令上の路肩となる。この部分は路側帯扱いとはならないため歩行者は原則として通行できない。この車道路肩部分にも「路面表示」による通行誘導が設置される場合がある。この場合、道路交通法第18条第1項を補足する誘導表示とも考えられるが、この「路面表示」に関わらず、自転車を含む軽車両は車道の左側端(歩道との境界寄りで通行に支障が無いできるだけ端部)を、原則として通行する。
  7. ^ ただし、駐停車などの場合や、道路外に出るためにまたは進行方向別通行区分が設置されていない交差点において左折する場合、軽車両または二段階右折原動機付自転車が右折のため交差点の側端に寄って通行する場合、緊急自動車に避譲する場合などは、この部分に入る。
  8. ^ 実態上は、路肩部分が自転車・軽車両の通行に十分な幅員の場合、自転車・軽車両が通行していたが、法令上は自転車・軽車両も路肩の左側の第一通行帯を通行する規定となっていた。
  9. ^ ただし、普通自転車専用通行帯として設置される場合は法的にも通行位置が同一となるが、「路面表示」による通行誘導である場合には、厳密には法令上の通行位置とは一致せず、「法定外表示」と扱われる余地もある。
  10. ^ さらに、車両通行帯が有り、かつ(左側に)歩道が有る場合においては、道路左端の実線などで区画された部分は、車両通行帯最外側線であり、かつ道路構造令上の路肩となる。この部分は、路側帯扱いではなく歩行者が原則として通行できない事はもとより、車道としても車両通行帯を構成する部分ではないため、原則として自転車、軽車両を含む全車両はこの部分を通行しないが[注 7]、この路肩部分にも「普通自転車専用通行帯の道路標識・道路標示」または「路面表示」による通行誘導が設置される場合があり、その場合は運用が異なる。「普通自転車専用通行帯の道路標識・道路標示」による設置の場合、車両通行帯最外側線は道路交通法上は単なる車線境界線として機能し、当該普通自転車専用通行帯の部分が第一専用通行帯となる。「路面表示」による通行誘導の場合、軽車両・自転車は原則としてこの部分を通行することとなる。従来は、車両通行帯最外側線の左側部分の路肩部分には、自転車レーンの表示(普通自転車専用通行帯・「路面表示」による通行誘導のいずれか)がされる事はなく、この部分における自転車の通行は法令上曖昧なままであった[注 8]、自転車レーンの表示により通行誘導位置が明確となった[注 9]。なお、そもそも路肩部分が狭隘であるかまたは存在しない(車両通行帯最外側線が引かれていない)場合、普通自転車専用通行帯としての設置は無く、単に路肩部分(あるいは第一通行帯の左端部分)に「路面表示」による通行誘導が行われるだけである。
  11. ^ 都道府県により異なり、静岡県・神奈川県では5mとなっている。
  12. ^ 都道府県により異なり、佐賀県・静岡県・山梨県・神奈川県・東京都では赤色だけ、その他の都道府県では赤色または橙色が認められている。
  13. ^ 都道府県により異なり、静岡県・山梨県では50mとなっている。
  14. ^ 兵庫県は、条例により保険加入を2015年10月から義務化する[53]。兵庫県交通安全協会の「自転車会員」になれば加入できる形式を取る。

出典

  1. ^ 齊藤俊彦『くるまたちの社会史 : 人力車から自動車まで』中公新書1346 中央公論社、1997年 ISBN 4121013468 78ページ
  2. ^ 佐野裕二『自転車の文化史 : 市民権のない5,500万台』文一総合出版、1985年、81ページ
  3. ^ 歴史探訪「うつくしま」への系譜 日本最古の自転車を製作 鈴木三元が夢見た 三元車のロマン
  4. ^ 三元車展 日本最古の国産自転車 初公開 三元車がやってくる!!」”. 2011年7月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年11月27日閲覧。
  5. ^ 輸入実績表(自転車・同部品・同付属品)2022年01月 出所:財務省貿易統計 (一財)自転車産業振興協会
  6. ^ 疋田智『大人の自転車ライフ : 今だからこそ楽しめる快適スタイル』光文社、2005年 ISBN 4334783619 74ページ
  7. ^ 小池一介『華麗なる双輪主義 : スタイルのある自転車生活』東京書籍、2006年 ISBN 9784487801190 23ページ
  8. ^ 斎藤純『ペダリスト宣言! : 40歳からの自転車快楽主義』日本放送出版協会、2007年、ISBN 9784140882405 129ページ
  9. ^ a b 自転車の安全利用の促進について”. 内閣府 (2022年11月1日). 2023年3月5日閲覧。
  10. ^ “自転車走行、路側帯は左側だけ 改正道交法施行”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2013年12月1日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2804E_R01C13A2CR8000/ 2018年2月5日閲覧。 
  11. ^ 警視庁広報課のツイート
  12. ^ 併走は原則禁止”. 自転車道路交通法研究会 (2013年5月1日). 2018年2月5日閲覧。
  13. ^ 自転車用ヘルメットの着用”. 警視庁 (2023年1月13日). 2023年3月6日閲覧。
  14. ^ 浅井建爾 2015, p. 49.
  15. ^ 道路交通法第18条第1項
  16. ^ 道路交通法第63条の4第1項第3号
  17. ^ 元田 良孝、宇佐美誠史、後藤俊、高橋慶多 『自転車歩道通行政策の矛盾に関する考察〜求められるパラダイムシフト〜』、自転車活用推進研究会『自転車DO!』第58号
  18. ^ 浅井建爾 2015, p. 50.
  19. ^ (第17条第1項)
  20. ^ (同第4項)
  21. ^ (第18条第1項)
  22. ^ (第20条第1項)
  23. ^ (第35条第1項)
  24. ^ 無灯火自転車がなぜ危険なのか 4コマ漫画が反響”. ライブドアニュース (2017年5月23日). 2017年5月24日閲覧。
  25. ^ “母親驚愕「息子の自転車事故の賠償金9500万円」の“明細”は…”. サンケイビズ. (2013年8月18日). https://web.archive.org/web/20130821043242/http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/130818/cpd1308181332000-n1.htm 2014年2月22日閲覧。 
  26. ^ 東京都自転車対策懇談会 第2回 議事録 (2012年7月12日)9ページ
  27. ^ 警察庁交通局『交通安全対策推進プログラム
  28. ^ 「暴走自転車 摘発急増」『朝日新聞』2007年11月21日夕刊
  29. ^ 京都はきびしい…自転車悪質違反は即「赤切符」 読売新聞 2011年11月25日
  30. ^ 警察庁 自転車対策検討懇談会『自転車の安全利用の促進に関する提言』 4ページ
  31. ^ 自転車でひき逃げ・重過失傷害の容疑…男を逮捕 読売新聞 2013年1月25日
  32. ^ 自転車事故:商店街で通行人の2割遭遇 大阪・天神橋筋 毎日新聞 20132年11月23日
  33. ^ 大阪・天神橋筋商店街:駅南も自転車規制 来月31日から日中通行禁止 毎日新聞 2013年12月6日
  34. ^ 自転車の安全利用の推進(警察庁) 2010年9月26日閲覧
  35. ^ JA共済の“捏造広告”を許すなの(週刊 自転車ツーキニスト510) 2014年10月20日閲覧
  36. ^ 「人身事故、逆転無罪 バイク側に大阪高裁「自転車接触は不可避」」『朝日新聞』(大阪本社版)2006年12月9日朝刊38面
  37. ^ 「「事故予測困難」被告に無罪判決 寝屋川の交差点事故」『朝日新聞』(大阪本社版)2007年10月17日夕刊11面
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  39. ^ 会社に内緒、自転車「闇通勤」で処分も 「軽く考えないで 朝日新聞 2021年10月22日
  40. ^ (16訂版道路交通法解説P271及びP756)
  41. ^ 自転車記者がまじめに走ってみた、車道こそ安全な場所だ カナロコ(神奈川新聞)
  42. ^ 自転車に幅寄せして車ぶつける=危険運転致傷容疑で男逮捕―警視庁(時事通信)セロン
  43. ^ 安全運転のポイント 三井住友海上
  44. ^ 側方間隔 教習所ナビ
  45. ^ 警察庁 自転車対策検討懇談会『自転車の安全利用の促進に関する提言 』10ページ
  46. ^ 永沢総合法律事務所 トピックス(岸田真穂「判例研究」『運転管理』平成17年6月号から)
  47. ^ グーサイクル 自転車ツーキニストでいこう!疋田智の連載えっせい 第9回「ほんなこつ“路上駐車”は何とかならないものか」
  48. ^ “道路交通法の一部改正により「自転車運転講習」制度が導入されます”. 久喜市. (2015年5月28日). http://www.city.kuki.lg.jp/kurashi/norimono_anzen/safety/zitensyakousyu.html 2018年2月5日閲覧。 
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  56. ^ “自転車保険、加入義務化 4月から条例施行 賠償負担軽減などで 関東初 /埼玉”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2018年1月12日). https://mainichi.jp/articles/20180112/ddl/k11/010/200000c 2018年3月15日閲覧。 
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  58. ^ 運輸省編『80年代の交通政策のあり方を探る : 運輸政策審議会答申「長期展望に基づく総合的な交通政策の基本方向」』ぎょうせい、1983年、109ページ
  59. ^ 消える「自転車横断帯」警察、車道通行を徹底 日本経済新聞





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