愛天使伝説ウェディングピーチ 概要

愛天使伝説ウェディングピーチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 08:01 UTC 版)

概要

テレビアニメ『美少女戦士セーラームーン』の初代シリーズ構成およびメイン脚本担当者の富田祐弘が、以前の仕事で付き合いのあった日本アドシステムズ(子会社であるテンユウを含む。『ゲンジ通信あげだま』など)を中心として、トミー(現在のタカラトミー。『伝説巨神イデオン』など)や小学館(『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』小説版など)などの支援を得て立ち上げた戦闘美少女もののオリジナル企画作品。アニメ版の企画初期より、『セーラームーン』の初代キャラクターデザイナーである只野和子が関わっている。この経緯から、『セーラームーン』の実質的な派生・姉妹作品として扱われることもある。

ただし、企画そのものは本作開始の7年以上前(1988年以前)から富田自身が試行錯誤を繰り返しながら温めていたものである[2]。企画当初は後述もするように「植物と自然をベースとした天使と悪魔の戦い」と、それに絡む『ロミオとジュリエット』をオマージュ元に置いた「ラブロマンス」という2つの要素を主軸に置いた企画としてスタートしたもので富田としては当初、小説(ライトノベル)として発表することを考えていた作品であった[2]。その後、独自性を模索する中で当時の日本ではまだあまり知られていなかった結婚式に使われるサムシング・フォーの事を知って「まだ誰も知らないならばモチーフに使える」と考えて、これをもうひとつの要素としてラブロマンスにミクスチャーすることで「愛情」というテーマに行き当たり、さらに1990年代のアニメブーム(アニメバブル)の勢いに乗ってアニメ企画の素案へと動いたものである[2]

本作は一般に派生元とされる『セーラームーン』や当時の他作と比して、特に基礎的な恋愛愛情(主には異性愛を中心に置いた、愛情の継承・多様な恋愛の形質など)を主要素として置いており、主人公を中心とした物語の初期からの登場となる3人の少女たちには、それぞれ個々に異なる恋愛模様や愛情の形を示すストーリーラインが与えられている。また、富田は本作の主テーマを「一途な愛」である、としている[2]。そして彼女ら主人公たちは、自身の愛情の究極の顕現として防護形態を兼ねたウェディングドレスをまとい、そこからさらに「お色直し」をする事で、防護を弱めて攻撃に特化した戦闘服へと可逆の再変身を行える。他にもサムシング・フォー、乾杯アクション、花束(ブーケ)贈呈、結納返しなど「愛情の究極の形」としての結婚(結婚式)を意識し、これをモチーフとして各所に取り入れたアクションやストーリーによる制作がなされている。

一方で企画当初の設定においては、いわゆる自然破壊を起点に置いた、自然の暴走によって生まれた自然公害をモチーフとする「悪魔」と、そうした存在に脅かされる植物をモチーフとする「天使」という構図で製作が進められていた[3]。主人公たちに植物の意匠が設けられている事、当初に登場する敵の名が「プリュイ」「レインデビラ」と、それぞれに「雨」がつく[4] のは、企画当初に酸性雨およびそれが原因で起こる公害(植物枯死による農林被害)のイメージがあったためで、その名残である[3]

2016年韓国コスメティックメーカーであるETUDE HOUSE(エチュードハウス)より、コラボレーションコスメが発売された[5]

原作漫画版

アニメ放映に先駆け、漫画版が小学館の『ちゃお』ならびに同社の刊行する各学年誌・幼年誌に連載された。連載期間は各雑誌によって異なるが、もっとも代表的な『ちゃお』版の期間は1994年3月号からアニメ放映終了年の1996年4月号まで。原作担当は富田祐弘、執筆作画担当は谷沢直。漫画連載版のタイトルには『愛天使伝説』の文字は無く、その代わりとして『愛の超天使伝説』のサブタイトルがつけられている。コミックスにおいてはこれらのサブタイトルは全て削除され『ウェディングピーチ』のみのタイトルで書籍化された。ちゃお連載分については、小学館・ちゃおフラワーコミックスから単行本全6巻が発刊され、その後、北米西欧域などで翻訳版が発刊された。

アニメ企画から漫画版が作られてはいるが、通常においてはウェディングピーチはちゃお漫画版を原作とする(いわゆる原著作権を付与された漫画化作品である)。また、原作者の富田と谷沢は、アニメ版ピーチにおいてもそれぞれメイン脚本家(富田)、ゲストキャラクターデザイン(谷沢)としてスタッフ参加している[注 1]

学年誌漫画版

小学館の幼年誌・学年誌では、1994年度と1995年度に『幼稚園』『小学一年生』『小学二年生』『小学三年生』『小学四年生』で漫画連載された。作画担当者は各誌で異なり、『小三』では原作漫画担当者の谷沢直が、『幼稚園』では此路あゆみが、『小一』ではうえだ未知(10月号以降は、渡辺真由美・KSS作画によるアニメ絵柄に変更されている)が、『小二』では藤井みどりが、『小四』ではたちばな真未が担当した。

単行本は、1994年度版『小四』に連載されていたものがてんとう虫コミックススペシャルより『愛天使伝説ウェディングピーチ 愛天使誕生編』のタイトルで発売された。内容は原作版のプリュイ編(原作単行本3巻の中盤まで。初期設定状態の愛天使たちがアニメに準じたコスチュームにパワーアップするまでの内容)を叩き台にしたものが使用されている。一方、谷沢の担当した1994年度の『小三』と1995年度の『小四』に連載されていたものに関しては、海外版のみにおいて既述した原作版の「第7巻」として単行本化されている。内容は「プリュイ(氷室)編→イグニス編→ポタモス編→ヴィエント(カチューシャ)編→最終決戦」となっており、たくろうが登場しないなどの簡略化が成されている。

原作漫画担当者の谷沢と『小四』版担当者のたちばなは、テレビアニメ版の放送時期に2人で同人サークル「まんどりる」を結成し、アニメ版ピーチのギャグ中心同人誌『爆裂桃嫁』を執筆・発行・頒布した。


注釈

  1. ^ 只野はウェディングピーチの企画参加当時、鎧やメカのデザイニングを苦手としていたため、ファイターエンジェルのデザインにテンユウならびに富田より「部分部分に鎧っぽいものを」と指定されて驚愕したとされる。のちに谷沢側から出されたイメージデザインを見て「なんとかなる」と感じたと語っている。(『ウェディングピーチ シークレットファイル』小学館、1996年、64頁。 
  2. ^ DX第2話では、ももこが船上パーティーで用意されたカクテルをジュースと間違え、それを渡されたじゃ魔ピーが大量に飲んで泥酔状態になってしまい、しばらくダメージを回復できなかった。
  3. ^ 蛇足になるが、ももこ役の氷上は後年、同じく高校野球を題材としたテレビアニメ『プリンセスナイン 如月女子高野球部』で森村聖良の声を担当した。

出典

  1. ^ VizMedia版・Egmont版(いわゆる海外翻訳版)に関しては学年誌連載版を含め全7巻
  2. ^ a b c d e 『ウェディングピーチ シークレットファイル』小学館、1996年、57頁。 
  3. ^ a b 『ウェディングピーチ シークレットファイル』小学館、1996年、58 - 61頁。 
  4. ^ a b c 「プリュイ(pluie )」はフランス語で「雨」(『ウェディングピーチSECRET FILE』P.60 より)。
  5. ^ ETUDE HOUSE(エチュードハウス)が愛天使伝説ウェディングピーチとコラボが超絶可愛いSTYLE HAUS 2016年8月19日記事)
  6. ^ 『ウェディングピーチ シークレットファイル』小学館、1996年、62頁。 
  7. ^ 例えばももこの場合、通常時は「ももこちゃま」、変身後は「ピーチちゃま」となる。後半では、ようすけに対してもそれを用いた。
  8. ^ これは文部科学省による「小学校学習指導要領」の学習漢字別表「学年別漢字配当表」に「浪」の字が入っておらず、代替文字として「波」が指定されている(=本作の仮想主要読者層であるC層が小学校で学習しない文字である)ためである。
  9. ^ a b この話は映像特典ゆえのスタッフのお遊びによる楽屋オチであり、公式作品ではあるがウェディングピーチの正式ストーリーではない。
  10. ^ ピーチのドレスには「メルレットドレス」、リリィには「セレーナドレス」、デイジーには「マルグリットドレス」という商品名が与えられていた。
  11. ^ 「ラブリー・オペラシオン・タンピート」はピーチがお色直しをした後でも使用可能である。
  12. ^ アニメムック『This is ANIMATION ウェディングピーチ』に他の愛天使と同じくフルバージョンの二段変身シーンが掲載されたが、本編未登場。
  13. ^ 実制作OLM
  14. ^ 「全国放送局別放映リスト」『アニメージュ』1995年9月号、徳間書店、204 - 205頁。 
  15. ^ 『北日本新聞』1995年7月5日付、1996年7月31日付各朝刊、テレビ欄。
  16. ^ 『ウェディングピーチ シークレットファイル』小学館、1996年、10 - 13頁。 
  17. ^ 『愛天使世紀ウェディングアップル』富田祐弘・遠藤彰二インタビュー,アニメイトタイムズ,2021年6月23日
  18. ^ 愛天使世紀 ウェディングアップル - TapNovel(タップノベル)






固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「愛天使伝説ウェディングピーチ」の関連用語

愛天使伝説ウェディングピーチのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



愛天使伝説ウェディングピーチのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの愛天使伝説ウェディングピーチ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS