強い相互作用 強い相互作用の概要

強い相互作用

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/20 14:05 UTC 版)

ヘリウム原子の原子核。2つの陽子は同じ電荷を持っているが、核力により同じところにとどまる。
標準模型
標準模型素粒子

強い相互作用は、2つの範囲で観測でき、2つのフォースキャリアにより媒介される。大きいスケール(約1-3 fm)では、陽子中性子(核子)を結合させて原子核を形成する力(中間子が運ぶ力)である。小さいスケール(核子の半径約0.8 fm以下)では、クォークを結合して陽子、中性子などのハドロン粒子を形成する力(グルーオンにより運ばれる)である[2]。後者の文脈では、これはしばしば色力(color force)として知られる。強い力は本来、強い力により結合したハドロンが新たに大きい質量の粒子を作るほどの強さがある。したがって、ハドロンが高エネルギー粒子に衝突すると、自由に動く放射線(グルーオン)を放出する代わりに新しいハドロンを生成する。この強い力の性質は色の閉じ込めと呼ばれ、強い力の自由な「放出」を防ぎ、実際には質量の大きな粒子のジェット英語版が生成される。

原子核の文脈では、同じ強い相互作用(核子内のクォークを結合する力)が陽子と中性子を結合させて原子核を形成している。この能力を核力(または「強い残留力」)と呼ぶ。そのため陽子と中性子内の強い相互作用からの残留力も核を結合させる[2]。このように、強い残留相互作用は核子間の距離に依存した振る舞いをするが、核子内のクォークを結合させるように作用している場合とは全く異なる。さらに、核融合核分裂の核力の結合エネルギーにも違いがある。核融合は太陽や他ののエネルギー生産の大部分を占める。核分裂は弱い相互作用を媒介とすることが多いが、放射性元素や同位体の崩壊が可能となる。人為的には核力に関連するエネルギーは、ウランプルトニウムベースの核分裂兵器や水爆のような核融合兵器では、原子力核兵器で部分的に放出されている[3][4]

強い相互作用は、クォークやアンチクォークなどの間で作用する、グルーオンと呼ばれる質量の無い粒子の交換により媒介される。グルーオンは、色荷と呼ばれるチャージを介してクォークや他のグルーオンと相互作用していると考えられている。色荷は電磁気のチャージ(電荷)と似ているが、1つのチャージではなく3種のチャージ(±赤、±緑、±青)がある。これにより異なる力が生じ、異なる振る舞い方となる。これらのルールは、クォーク・グルーオン相互作用の理論である量子色力学(QCD)で詳しく説明される。


  1. ^ Relative strength of interaction varies with distance. See for instance Matt Strassler's essay, "The strength of the known forces".
  2. ^ a b The four forces: the strong interaction Duke University Astrophysics Dept website
  3. ^ on Binding energy: see Binding Energy, Mass Defect, Furry Elephant physics educational site, retr 2012-07-01
  4. ^ on Binding energy: see Chapter 4 Nuclear Processes, The Strong Force, M. Ragheb 1/27/2012, University of Illinois
  5. ^ Feynman, R.P. (1985). QED: The Strange Theory of Light and Matter. Princeton University Press. p. 136. ISBN 978-0-691-08388-9. "The idiot physicists, unable to come up with any wonderful Greek words anymore, call this type of polarization by the unfortunate name of 'color', which has nothing to do with color in the normal sense." 
  6. ^ Fritzsch, op. cite, p. 164. The author states that the force between differently colored quarks remains constant at any distance after they travel only a tiny distance from each other, and is equal to that need to raise one ton, which is 1000 kg × 9.8 m/s² = ~10,000 N.
  7. ^ “Quark-gluon plasma is the most primordial state of matter.”. About.com Education. オリジナルの2017年1月18日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170118030724/http://physics.about.com/od/physicsqtot/fl/Quark-Gluon-Plasma.htm 2017年1月16日閲覧。 
  8. ^ Fritzsch, H. (1983). Quarks: The Stuff of Matter. Basic Books. pp. 167–168. ISBN 978-0-465-06781-7. https://archive.org/details/quarksstuffofmat00frit 


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