半減期
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 23:27 UTC 版)
脚注
注釈
- ^ 素粒子物理学においては、半減期ではなく平均寿命を用いることが一般的である。平均寿命は自然対数の底の逆数、すなわち約0.368...にまで減少する時間のことであり、半減期の倍に相当する。
- ^ 原子番号が同じで質量数の異なる元素を同位体(isotope、アイソトープ)という。さらに、放射線を放出して原子核が放射性崩壊する性質(放射能)をもつ同位元素は放射性同位体(radioisotope、ラジオアイソトープ)と呼ばれる。
- ^ 崩壊する量は放射性物質の量に比例する。例えば10万ベクレルの放射性物質があった場合には、半減期が経過すれば5万ベクレル減少するが、100 Bqの放射性物質であれば、半減期が経過しても50 Bqしか減らない。 半減期が経過するごとに、初期量の1/2, 1/4, 1/8, ...と指数関数的に放射性物質が減少していく。ただし、半減期は統計的な量であり、個々の原子の崩壊を予測することはできない。原子数がゼロに近づけば、大数の法則が成立せず確率ゆらぎも大きくなるため半減期による計算の精度も落ちる(上の図のシミュレーションも参考)。ただ、実用上放射性物質がほとんどなくなるまでの時間は、検出下限値に減少する時間として、計算が可能である。
- ^ 中性子、中間子などの素粒子も、放射性核種と同じように一定の半減期でより安定な素粒子に変わっていく。
- ^ 放射性崩壊は指数過程によって記述されるため無記憶過程であり、崩壊していく速度は物質の出入りがゼロであれば一定である。
- ^ これは理論的には、原子核の結合エネルギーが数千万eVと原子の結合エネルギーに比して極めて大きいため、原子核外部の物理現象では内部変化が起こらないためである[1]。
- ^ 例えばラザフォードはラジウムに対して、 などの古典物理学的実験を行ったが、ラジウムの半減期は一切変化しなかった[2]。ただし、これは崩壊の速度を変化させることが原理的に絶対不可能という意味ではない。これらの作用が原子核の放射性崩壊に影響を及ぼしていないという結論が重要である[3]。
- ^ この一つ一つの崩壊する時間間隔の確率は指数分布に従い、単位時間あたりの崩壊はポアソン分布になる。これはガイガーカウンターなどを用いて放射線を計測すると、単位時間あたり計測値がポアソン分布になり、放射線を計測すると音が鳴る機種であれば、その音の間隔が指数分布となる所以である。また指数分布の無記憶性により、ガイガーカウンターである期間放射線を計測しなくても、それから時間tが経過するまでに計数する期待値は変わらない。このように確率現象である放射性物質の崩壊であっても、十分大きな量の放射性同位体や素粒子などが崩壊する際に、いわゆる大数の法則として定式化されたものが半減期である。
- ^ 半減期 t1/2 は t1/2 = ln(2)/λ で計算することができるが、同様に n 分の 1 になる期間 t1/n は
- t1/n = ln(n)/λ
- t1/10 = ln(10)/λ
なお、t1/10 半減期から算出できる。半減期 t1/2 は ln(2) であることから ln(10) = a×ln(2) となる係数 a は- a = ln(10)/ln(2) ≒ 2.3/0.693 ≒ 3.3
- ^
- 半減期と残留放射能計算早見表
- 半減期 t1/2 をもつ放射性同位体は半減期が経過するごとにその放射能は半分となる。例えば、半減期の3倍の時間が経過すれば放射能は 23分の1(8分の1)となる。
- 次の表は半減期の1 – 5倍(整数値)が経過した時点での残留放射能を求めるための簡易表である。
- 例えば初期値が10000 Bqで、半減期の5倍経過したときの放射能は
- 3.125/100 × 10000 Bq = 312.5 Bq
- と計算できる。すなわち、5t1/2 だけ経過すれば 10000 Bq は 312.5 Bq まで減少することがわかる。
経過した時間(半減期の倍数) 残っている割合 百分率での表示 0 1/1 100 % 1 1/2 50 % 2 1/4 25 % 3 1/8 12.5 % 4 1/16 6.25 % 5 1/32 3.125 % ... ... ... n 2−n 100/(2n)% - ^ ここで生物学的半減期が物理的半減期に比べて十分長い場合(ヨウ素131の場合物理的半減期8日に対して生物学的半減期が138日であるため、このケースになる)、体内で壊変によって壊れるほうが多いのでほとんど排出されずに体内で崩壊し、被曝の影響が大きくなる。一方で、逆に生物学的半減期に対して物理的半減期が長い場合(これは生物学的半減期が70日程度のセシウムのケースである)、体内で壊変するよりも体外に排出される割合のほうが多くなる。あくまでこれは1度限り摂取した場合であって、継続的に摂取した場合は、1日あたりの摂取量が同じであるとすれば摂取量と排出量が平衡に達する程度までは濃縮する危険性がある。
この度合いは生物学的半減期が長いほど影響が大きい。このことから生物学的半減期が長い核種は短い核種よりも1日あたりの排出量が少ないため、ほとんど体外に排出されずに体内にたまっていき、したがって前者とくらべ多く濃縮されるため、なるべく摂取を避ける事が望ましい。また排出を促す薬には、生物学的半減期を短くする効果があると解釈できる。 - ^ (導出)
両辺に eλt を掛ければ
であるが、合成微分律により
となる。これを積分すれば
となる。N について解いて
ここで初期条件 t = 0 を考えれば、明らかに N = 0 であるから、初期値問題について解けば積分定数 C は
と定まる。つまり
である。
- ^
- 具体例
であり、1日あたり100 Bq摂取したとすれば
で時刻tの体内濃度が得られる。ここで 0 < λ < 1 であるから、
である。これは体内濃度に上限がある事を示しており、セシウムの場合で計算すれば
であり、1日あたり摂取量 Q の100倍に濃縮する。例えば100 Bq摂取し続ければ10000 Bq、500 Bqで50000 Bq体内に濃縮するわけである。
出典
- ^ 『物理学ー力学から物性論までー』ランダウ、アヒエゼール、リフシッツ 共著 / 小野周、豊田博慈 訳、岩波書店、1969年、108頁。ISBN 4-00-005911-4。
- ^ K・ホフマン『オットー・ハーン―科学者の義務と責任とは―』シュプリンガー・ジャパン、2006年、32-33頁。ISBN 4-431-71217-8。
- ^ E・シュポルスキー『原子物理学III』玉木英彦ほか 訳、東京図書株式会社〈物理学選書〉、1974年6月(原著1958年)、180,181頁。ISBN 978-4-489-01103-0。
- ^ 熊谷寛夫「加速器,融合反応 (核物理学への招待(第5回))」『日本物理学会誌』第14巻第9号、日本物理学会、1959年、528-540頁、doi:10.11316/butsuri1946.14.9.528、CRID 1390288070897093376。
- ^ 福田覚 『放射線技師のための物理学三訂版』 東洋書店、1991年、170頁。ISBN 4-88595-309-X
- ^ 永江知文・永宮正治 『原子核物理学』 裳華房、2000年、43から44頁の例題4.1を参考。ISBN 4-7853-2094-X。
- ^ 草間朋子、甲斐倫明、伴信彦『放射線健康科学』杏林書院、1995年、[要ページ番号]頁。
- ^ 真田順平 『原子核・放射線の基礎』 共立出版〈共立全書163〉、1966年、29 - 30頁。ISBN 4-320-00163-X
- ^ Graham Woam著、堤正義訳 『ケンブリッジ物理公式ハンドブック』、共立出版、2007年、101頁。ISBN 978-4-320-03452-5
- ^ 真田順平 『原子核・放射線の基礎』 共立出版〈共立全書163〉、1966年、30頁。ISBN 4-320-00163-X
- ^ 岩波理化学辞典第五版、1998年、ISBN 4-00-080090-6、項目「崩壊定数」より。
- ^ 物理学事典. 講談社. (2009). p. 86. ISBN 978-4-06-257642-0
半減期と同じ種類の言葉
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