医療 医療の効果の統計的把握、医療への反省・批判・提案

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医療

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/03 17:54 UTC 版)

医療の効果の統計的把握、医療への反省・批判・提案

「癒しのart(わざ)」であった伝統的な西洋医学には、(20世紀に)テクノロジーが持ち込まれ、「機械医療」へと変容した[20]。 人々の「科学医療」「機械医療」に対する素朴な崇拝・信仰の状態は、1960年代まで続いた[21][22]

ところが、以下に示されるように、1960年代以降には医療の効果を否定する資料が整い[要出典]、医療が健康被害を与えていることが明らかになった。(下記に詳述)。

1971年、アメリカ公衆衛生学会会長で、ハーバード大学教授のカースは、衛生統計を分析し、次のように指摘した[21]

"現代医学の感染症予防措置や治療が、人々の平均寿命に寄与した" などと思うのは全く根拠が無い医学的な措置・治療ではなく、むしろ環境栄養の改善のほうが大きな役割を果たしたのである

また、自身が医師であるロバート・メンデルソンは1970年代、同時点での根拠にもとづき、医療が害悪を及ぼしていることの証拠となるデータ[要出典]を次のように挙げた[23]

  • 1973年にイスラエルで医師のストライキが決行された時には、診察する患者の数を1日あたり6万5000人だったところを7000人に減らした。そしてストは1ヶ月続いた。エルサレム埋葬協会によると、医師のストライキの期間中、人々の死亡率が半減したという。イスラエルでこれほど死亡率が減少したのは、1950年代に医者がストライキをした時以来である[24]
  • 1976年、コロンビアの首都ボゴタで、医師たちが52日間のストライキを行い、救急医療以外はいっさいの治療を行わなかったところ、ストライキの期間中、死亡率が35%低下した[25]という。コロンビアの国営葬儀協会は「事実は事実である」とコメントした[24]
  • 同じ1976年、アメリカ合衆国のロサンゼルスでも医者らがストライキを行った。この時は、短期的に死亡率が18%低下した。ストライキの期間中、手術の件数は60%減少していた[26]。そして、医師のストライキが終わり、彼らが医療活動を始めると、短期的な死亡率がストライキ以前と同じ水準に悪化した[25]

[27]

クエンティン・ヤングは、医者らが医療という名目のもとで組織的に大量の人間破壊(大量殺人)を行っていることを指摘して、それを医療による大量殺戮と呼んだ[24]

なお、ロバート・メンデルソンは、医師自身の手によるデータ・統計類は信頼できない、とも指摘した[要出典][23]。というのは、医師というものは自分にとって都合が悪いデータは偽りの分類をしたり偽りの報告をすることで隠蔽・改ざんする習性があるからだという[23]

ロバート・メンデルソン(en:Robert_S._Mendelsohn)は「医師のやっていることのかなりの部分が、人を死に至らしめる行為なのである[24]。」と警告した[23]。ただし、ロバート・メンデルソンは救急医療の価値については認めており、「医者はその医療行為の9割は行うのを止めて、救急医療だけに取り組めば、人々の健康状態は間違いなく改善されるはずだ」と評価した[24]

1977年、アメリカの社会評論家イヴァン・イリイチは「現代の医学は健康改善にまったく役立っていないばかりか、むしろ病人をつくり出すことに手を貸しており、人々をひたすら医療に依存させるだけである」と警告した[28]。 「医原病」との概念を提唱した[28][注釈 4]


医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの編集のフランツ・インゲルフィンガーは、予後が悪化するケースが存在すると1970年代に指摘した。

  • 医療によって、疾患の予後に影響がなかった(=効果がなかった)ケース  80%
  • 医療によって、疾患の予後が好転または治癒したケース 11%
  • 医療によって、疾患の予後が悪化したケース 9%

[注釈 5]

一流医学誌のデータでこれが判明した。[要出典]

イヴァン・イリイチらによる、医療の実態の指摘と、その改善を提唱する社会医学者と公衆衛生専門家による努力は、1984年の世界保健機関による医療の再設定の提唱に結実した。[要出典]

医療の再設定

医療の再設定とは、健康づくりのためのオタワ憲章にて提唱された、医師の教育と訓練の転換についての提言である[29]

1974年にカナダ保健省から公開されたラロンド・レポートは、健康に影響を及ぼす要因として、生物学、環境、生活様式そして医療へのアクセスという4つの医療領域を提案し[30]、医療へのアクセスの重要性について、具体的な評価を下した。これらの医療領域と健康への影響は、アメリカ合衆国保健教育福祉省のヘルシー・ピープル (1979年) やイギリス保健社会保障省のブラック・レポート (1980年) おいても追認された[31][32]

1984年、世界保健機関健康づくり国際会議を開催し、健康に影響を及ぼす要因を健康の前提条件として整理すると、5つの活動領域の1つとして医療の再設定を掲げ、保健部門に携わる人々に「疾病の治療」の枠組みを越えた「健康づくり」へ向かうよう呼びかけた。

医療の再設定の流れは、マイケル・マーモットリチャード・ウィルキンソンらによる健康の社会的決定要因 (1998年) の整理により健康社会を結びつける現実的かつ政策的な概念[要出典]として成熟し、各国の政策に取り込まれるようになってきている[要出典]


注釈

  1. ^ 医療人類学では「folk medicine 民俗医療」 という用語が用いられている。医療人類学の文献例が参照可。
  2. ^ 診断 / 治療 / リハビリテーション / 予防 、また看護活動(看護過程) / 調剤及び服薬指導(OTC薬販売における登録販売者の指導や助言)/ 栄養指導 などなどといった要素に分けるほか(医療行為の項を参照)。
  3. ^ 学歴が高い人、収入の多い人、知識人層など。
  4. ^ イワン・イリイチは著書で「そういった事態に直接の責任を持つ医療従事者の免許制度を廃止せよ」とも述べた。
  5. ^ 新谷の文献に基づく記載。新谷は予後を、病気の「経過」あるいは「その後の状態」のことと述べている(新谷富士雄『ヒトはなぜ病気になるのか』PHP研究所、190頁)

出典

  1. ^ a b 『研究社 新和英中辞典』「医療」
  2. ^ 『PDQ®がん用語辞書 英語版』「医療」
  3. ^ 『ライフサイエンス辞書』「医療」
  4. ^ 病院のあり方報告書 第7章医療の質(公益社団法人全日本病院協会)
  5. ^ 厚生労働省ウェブサイト ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 健康・医療 > 医療保険 > 医療と介護の一体的な改革, 2021年9月22日閲覧
  6. ^ アーサー クラインマン 著、大橋英寿, 作道信介, 遠山宜哉 , 川村邦光 訳『臨床人類学―文化のなかの病者と治療者』弘文堂、1992年(原著1980年)。 
  7. ^ 黒田浩一『現代医療の社会学: 日本の現状と課題』、1995年、p.203。
  8. ^ 池田光穂 著「世界医療システム」、進藤雄三、黒田浩一郎 編『医療社会学を学ぶ人のために』世界思想社、1999年。 
  9. ^ 『医療入門 よりよいコラボレーションのために』第二章
  10. ^ a b 鈴木信孝「補完代替医療の展望」『全日本鍼灸学会雑誌』第56巻第5号、全日本鍼灸学会、2006年、693-702頁、doi:10.3777/jjsam.56.693 
  11. ^ a b c d e アンドルー・ワイル『ワイル博士の健康相談 (1) 自然治癒力』pp.139-141
  12. ^ 『国際「統合医療」元年―第1回国際統合医療専門家会議公式記録集』日本医療企画、2004年
  13. ^ 大貫 恵美子『日本人の病気観―象徴人類学的考察』岩波書店、1985年。 
  14. ^ a b 米山公啓『医学は科学ではない』
  15. ^ 定方昭夫 著、黒岩卓夫 編『宗教学と医療』弘文堂、1991年。 
  16. ^ a b c d e f g h i j スティーヴン・ロック「原書の序」『内なる治癒力』創元社、1990年。 
  17. ^ ハーバード大学のアイゼンバーグ博士の調査
  18. ^ a b 帯津 良一『お医者さんがすすめる代替療法―病院ガイドつき アトピー、糖尿病、ガン…治らないといわれたら読む本』学習研究社 2006 ISBN 4054030769
  19. ^ 厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』 eJIM「統合医療」情報発信サイト [1]
  20. ^ 日野原重明『現代医学と宗教』岩波書店
  21. ^ a b 新谷富士雄『ヒトはなぜ病気になるのか』PHP研究所、190頁。
  22. ^ *手島 恵「連載 ものの見方・考え方と看護実践(2) 新しい世界観とは何か?」1998年 [2]
  23. ^ a b c d (ロバート・メンデルソン 1999)
  24. ^ a b c d e ロバート・メンデルソン 1999.
  25. ^ a b ロバート・メンデルソン 1999, p. 186.
  26. ^ カリフォルニア大学ロサンゼルス校の医療行政研究者ミルトン・レーマー(en:Milton I. Roemer)教授の17の主要病院の調査による
  27. ^ 関連データ: 今中孝信「賢い患者になるためのABC」明城文化フォーラム21・講演会、2004年 [3]
  28. ^ a b イヴァン・イリイチ『脱病院化社会 医療の限界』
  29. ^ 健康づくりのためのオタワ憲章PDF形式(世界保健機関)
  30. ^ カナダ人の健康についての新たなる展望 Archived 2006年12月14日, at WebCite(カナダ保健省)
  31. ^ ヘルシー・ピープル (1979) 全文(米国国立医学図書館)
  32. ^ ブラック・レポート(Socialist Health Association)
  33. ^ World Health Organization. Definition of Terms. Retrieved 26 August 2014.
  34. ^ Johns Hopkins Medicine. Patient Care: Tertiary Care Definition. Accessed 27 June 2011.
  35. ^ 厚生労働省 令和3年版厚生労働白書 資料編, 2021年9月22日閲覧
  36. ^ 厚生労働省ウェブサイト 医療従事者等の範囲, 2021年9月22日閲覧
  37. ^ OECD 2013.
  38. ^ World Health Organization. "Regional Overview of Social Health Insurance in South-East Asia.' Retrieved December 02, 2014.


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