下田僚 下田僚の概要

下田僚

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/04 00:21 UTC 版)

来歴

新潟県長岡市出身。母方の血続きに「北越雪譜」や「秋山記行」などで知られる江戸時代後期の文人、鈴木牧之がいる。伯父下田一郎は大日本帝国海軍軍人海軍兵学校第66期・第三二一海軍航空隊月光夜間戦闘機隊飛行隊長・戦死[2][3] で、阿川弘之著「山本五十六」(新潮社)や豊田穣著「ミッドウェー戦記」(文芸春秋)、淵田美津雄奥宮正武著「機動部隊奮戦す」(グーテンベルク21)等にもその名が登場する空戦の士であった。下田は新潟県立長岡高等学校に学んだ[4] が、同校の前身である旧制県立長岡中学校は山本五十六(海軍兵学校第32期)と伯父一郎の母校でもある[5]。1年次には、かつての伯父一郎と同じく柔道部に所属し、稽古の際に伯父の遺品である柔道衣を着用することを誇りとしていた[6]

長岡高校を卒業後、入学した国際基督教大学(ICU)では、文化とパーソナリティ研究で知られる星野命の下でロールシャッハ・テストの研究を行っている[7]。大学時代の同期生に元国連大使吉川元偉がいる(吉川とはICU入学前AFS年間留学プログラム第15期の同期生[8][9];入学後は共に柔道部に所属)。その後、同大学大学院に進学し、引き続き星野の下でロールシャッハ研究に携わる[10] のと並行して、盲聾啞重複障害児の行動形成の研究で知られる梅津八三から心理学の理論的枠組みを、また日本にロジャーズ理論を導入したひとりである都留春夫からクライエント中心療法のアプローチを学んだ[11]。この3人の心理学者との出逢いは下田の心理臨床家としてのアイデンティティ形成に深い影響を及ぼすこととなる。大学院時代の同期生には、国立特別支援教育総合研究所(旧国立特殊教育総合研究所)において梅津八三の研究を継承し発展させた中澤惠江[12](学校法人横浜訓盲学院元院長・全国盲ろう教育研究会初代会長)がいる。

ICU大学院教育学研究科博士前期課程修了後、法務省心理技官、開業心理臨床家等を経て、中央大学文学部大学院文学研究科教授(2019年3月末まで在任)[13]臨床心理士[14]専攻臨床心理学犯罪非行心理学。人間の変化・成長の契機としての心理カウンセリング心理療法等臨床心理面接の治療構造を研究の対象としている[1][15]。心理臨床のオリエンテーションは折衷的乃至は統合的。ロジャーズのクライエント中心・人間中心アプローチをメタ理論に、アイヴィのマイクロカウンセリングをメタ技法に据えている[16][17] が、認知行動的アプローチ、短期療法(ブリーフセラピー)アプローチ、さらには深層心理学トランスパーソナル心理学的アプローチも含めた統合的かつ実践的なパラダイムを志向している[17][18]。その志向はまた、いわゆるエビデンスを偏重する心理学とは一線を画し、個体の揺らぎに対応して組み立てられカスタマイズされたアプローチを重視する下田の基本的視座[19][20] を示すものである。なお、下田の折衷的乃至統合的な心理臨床アプローチについて、「一見するとリスキー」ともいえる「荒技」であるが、こうしたアプローチが下田の「真骨頂」であり、下田「だからこその荒技である」と捉える向きも見受けられる[21]。「一見するとリスキー」な「荒技」が、実際は如何に心理学的な理論・方法論・説明モデルに基礎づけられていて、どのようにカスタマイズされたうえで臨床場面において適用され駆使されているかを下田自身は事例を通してつぶさに論じている[17][22]

これまで中央大学の他、放送大学明星大学(大学院)、新潟薬科大学新潟工業短期大学などにおいても教鞭を執る[23]。また、専門領域に関連する社会貢献活動としては、Professional Juvenile Probation Officer of Texas Juvenile Probation Commission[24](Honorary certification;1985年-)、新潟市民病院倫理委員会委員(1996年-2005年)、社会福祉法人新潟いのちの電話評議員(1999年-2005年)、新潟市民病院地域医療支援委員会委員(2003年-2005年)などがある[25]

著書

単著
  • うつ―「心の風邪」の実像と処方箋― 新生出版 2008年, ISBN 978-4-86128-895-1
  • 実践カウンセリングの理論と方法―心の癒しと成長の希求に応える― ふきのとう書房 2005年, ISBN 4-434-07038-X
共著
分担執筆

  1. ^ a b 「臨床心理学的援助の有効性を追い求めて」 - 下田僚/中央大学文学部教授 ChuoOnline. YOMIURI ONLINE
  2. ^ 日本軍人名鑑(海軍)
  3. ^ 編成 - 帝國海軍への鎭魂頌 -
  4. ^ researchmap 下田 僚 - 学歴
  5. ^ 海軍兵学校出身者名簿(完)
  6. ^ researchmap 下田 僚 ‐ その他
  7. ^ researchmap 下田 僚 - 学歴
  8. ^ researchmap 下田 僚 - 学歴
  9. ^ AFS15期
  10. ^ researchmap 下田 僚 - 学歴
  11. ^ 下田 僚(2005)実践カウンセリングの理論と方法―心の癒しと成長の希求に応える― ふきのとう書房, ISBN 4-434-07038-X。同書の「緒言」(6頁)を参照。
  12. ^ researchmap 中澤惠江
  13. ^ researchmap 下田 僚 - マイポータル
  14. ^ researchmap 下田 僚 - その他
  15. ^ 下田 僚(2019)臨床心理面接の治療構造の探究―教育学論集への投稿を振り返る― 教育学論集 第61集(ISSN 0286-9373)。同論文中の「2.臨床心理面接の治療構造への関心」(8-10頁)を参照。
  16. ^ 下田 僚(2005)実践カウンセリングの理論と方法―心の癒しと成長の希求に応える― ふきのとう書房(ISBN 4-434-07038-X)。同書の「緒言」(6頁)を参照。
  17. ^ a b c 下田僚(2006), 「スピリチュアル・エマージェンスとしてのクンダリニーの覚醒をみた事例 : トラソスパーソナル心理学からの知見を援用したカウンセリソグ」『日本精神衛生学会誌』 21巻 2号 2006年 p.54-61, ISSN 0912-6945, doi:10.11383/kokoronokenkou1986.21.2_54
  18. ^ 下田 僚(2005)実践カウンセリングの理論と方法―心の癒しと成長の希求に応える― ふきのとう書房(ISBN 4-434-07038-X)。具体的なアプローチの実践については特に同書の「第Ⅱ部 カウンセリングの実際」(87-137頁)を参照。
  19. ^ 下田 僚(2011)学校臨床場面における認知行動療法―クライエントのニーズに応じた援助の組み立て― 教育学論集 第53集, ISSN 0286-9373。同論文中の「はじめに」(73-75頁)を参照。
  20. ^ 下田 僚(2012)臨床心理面接における料金の意味(2)―クライエント中心療法の視点― 教育学論集 第54集(ISSN 0286-9373)。同論文中の「おわりに」(44-46頁)を参照。
  21. ^ 富田拓郎(2019)下田僚先生へのお礼状 教育学論集 第61集, ISSN 0286-9373
  22. ^ 下田 僚(2011)学校臨床場面における認知行動療法―クライエントのニーズに応じた援助の組み立て― 教育学論集 第53集(ISSN 0286-9373
  23. ^ researchmap 下田 僚 - 経歴
  24. ^ Texas Juvenile Probation Commission
  25. ^ researchmap 下田 僚 - 社会貢献活動
  26. ^ a b 共著論文については 外部リンク:researchmap 下田 僚 - マイポータル を参照。
  27. ^ a b 新潟県教育月報


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