三枝成彰 作風

三枝成彰

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/20 05:58 UTC 版)

作風

商業音楽は一貫して作り続けていたが、いわゆる純芸術作品は、1980年代頃までは十二音技法に代表されるような「前衛」の先鋒であった。1989年頃を境に調性のある美しい旋律を持った作品を多く生み出すようになる。

三枝は、人の心に届かない実験音楽を作り続けることにある種の葛藤を抱えながらも、音楽界全体が既存のパラダイムを否定することだけにとらわれていたために、調性のある美しい音楽が発表できなかったと振り返る。だからこそ、これからは人間の心情に訴える第二次の「ロマン派」の時代である(新ロマン主義)と確信し、甘美な旋律をもつオペラを数多く作曲している。

三枝の音楽活動の特徴として挙げられるのが、彼の音楽活動が作曲とプロデュース活動の両輪によって成り立っているという点である。三枝は実験音楽を主としていた若い頃から、自作・他作問わずセルフプロデュースによるコンサートなどを積極的に行ってきた。

作風こそ変化したものの、オペラの仕事は積極的に活動しており、コンサートの資金集めから台本の発注、出演者や演出のキャスティングなど、初演に至るまで必要な事柄に全て自身が関与している。

代表的なオペラは、新しい解釈の忠臣蔵として話題を呼んだ「忠臣蔵」、プッチーニの作で知られる『蝶々夫人』の遺児・ベンジャミン・ピンカートン・Jr.の母との死別後の生涯を太平洋戦争長崎原爆を交えて描いた「Jr.バタフライ」(上演台本・島田雅彦)など。

合唱曲では、1981年文化庁芸術祭優秀賞受賞作品「川よとわに美しく」や2003年NHK全国学校音楽コンクール高校の部課題曲「あしたはどこから」などが代表的である。

テレビ音楽は「大河ドラマ」の音楽を2回担当したほか、アニメや映画なども多数作曲。また各界の著名人を集めた六本木男声合唱団を組織、えひめ丸事故への鎮魂歌を作曲、同合唱団で演奏するなど、作曲活動の域は広い。

著作も多数あり、1990年代後半にはワイドショーコメンテーターや民間の選挙啓発団体「選挙に行こう勢!」共同代表なども務めた。

1984年NHKの新大型時代劇『宮本武蔵』でのオープニングテーマは吹奏楽曲にアレンジされ、『Overture "FIVE RINGS"』として1985年の第33回全日本吹奏楽コンクール課題曲の一つとして採用されている。


  1. ^ 神戸新聞2021年5月13日付夕刊「随想」欄
  2. ^ Die Internationale Stiftung Mozarteum”. ロサンゼルス・タイムズ. タイムズ・ミラー・カンパニー(1884–2000)/Nant Capital(2018–) (1990年12月11日). 2020年12月31日閲覧。
  3. ^ Ernest F. Imhoff(アーネスト F. イムホフ) (1990年12月31日). “'Magic Flute' precedes Mozart anniversary”. ボルチモア・サン. タイムズ・ミラー・カンパニー(1986–2000)/トリビューン・パブリッシング(2014–). 2020年12月31日閲覧。
  4. ^ ライター:馬波レイ/カメラマン:増田雄介 (2019年12月28日). “作曲家・三枝成彰氏が語る,「逆襲のシャア」「動乱」を作曲していた80年代当時の記憶(コンサート:サエグサシゲアキ1980s)”. 4Gamer.net. Aetas株式会社. 2020年12月31日閲覧。
  5. ^ “ゆかりの人たちが見た「なるもんじゃない」首相の8カ月”. asahi.com (朝日新聞社). (2010年6月3日). オリジナルの2010年6月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100604233631/http://www.asahi.com/politics/update/0603/TKY201006030003.html 2010年10月7日10:41閲覧。 
  6. ^ 【代表選挙集会】各界から来賓挨拶 政権交代で真の民主主義国家へと激励」”. 民主党公式サイト (2008年9月21日). 2009年9月1日00:57閲覧。
  7. ^ “正直者がバカ見る社会を変える ベーシックインカムの導入”. 日刊ゲンダイDIGITA (日刊ゲンダイ). (2019年2月16日). https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/247592/2 2019年3月8日閲覧。 
  8. ^ 「のど自慢」な人々製作委員会編『「のど自慢」な人々』文藝春秋、1998年、81頁。ISBN 416-3543007 
  9. ^ 平成29年秋の叙勲 旭日小綬章等受章者(東京都)” (PDF). 内閣府. p. 1 (2017年11月3日). 2023年3月28日閲覧。
  10. ^ 令和2年度 文化功労者”. 文部科学省 (2020年11月3日). 2020年11月9日閲覧。
  11. ^ 日刊ゲンダイDIGITA (日刊ゲンダイ). (2020年9月21日). https://www.nikkan-gendai.com/articles/columns/3124/386+2020年9月21日閲覧。 






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