ルゲラー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/22 13:40 UTC 版)
ルゲラー | |
---|---|
チョコレートのルゲラー | |
種類 | 菓子パン、ペストリー |
地域 | イスラエル、ヨーロッパ中央部のユダヤ人 |
主な材料 |
生地: 小麦粉、砂糖、サワークリームまたはクリームチーズ 中身: お好みでレーズン、シナモン、チョコレート、マジパン、けしの実、くるみ、ドライフルーツや缶詰の果物を組み合わせ、材料によってはあらかじめ砂糖で甘く煮ておく。 |
![](https://weblio.hs.llnwd.net/e7/redirect?dictCode=WKPJA&url=https%3A%2F%2Fupload.wikimedia.org%2Fwikipedia%2Fcommons%2Fthumb%2Fe%2Fe9%2FRugelach.jpg%2F250px-Rugelach.jpg)
![](https://weblio.hs.llnwd.net/e7/redirect?dictCode=WKPJA&url=https%3A%2F%2Fupload.wikimedia.org%2Fwikipedia%2Fcommons%2Fthumb%2F8%2F86%2FBlackberry_Rugelach.jpg%2F250px-Blackberry_Rugelach.jpg)
ルゲラーとクロワッサン
伝統的なルゲラーの作り方は、パン生地を三日月形に伸ばして中身を包む[5][6]。一部の資料によるとルゲラーとフランスのクロワッサンの起源は同じで、1683年、第二次ウィーン包囲でオスマン帝国に勝ったことと関係がある[7]と考えられる。とはいえ、これはあくまでも都市伝説であり、ルゲラーとその元とされるキプフェルはどちらも近世初期までさかのぼることができ、クロワッサンが今の形になった時期は19世紀以降(ヴィエノワズリー を参照) 。 このことからクロワッサンはこのうちのどちらかから発展したと言われることが多い。
代わりにシュトルーデルまたは ナッツロールの作り方をしても、中身を包んで巻いた生地を焼く前に切り分ける点が特徴的[8]。
語源
名前の由来は東ヨーロッパのユダヤ系イディッシュ語。Rugelach は複数形で、単数形 Rugel が意味する「ひねり」が、複数形で「小さくてひねったもの」を示し、このお菓子の名前になった[注釈 1]。クロワッサンなど三日月形のペストリーは、イディッシュ語で Rugelach (曲がり角・曲がったもの)と呼び、イディッシュ語と互いに影響しあうポーランド語は rogale と呼ぶ。ポーランド語の呼び名には「動物の角や楽器のホルン」という意味がこめられ、このペストリーの三日月形を角やホルンに見立てているのだ[9]。ポーランド語の rogale はイディッシュ語の rogale と発音がほぼ同じなうえ、意味もそれほどかけ離れていない。
rugelach のおいしさから、語源は rugel (王族) かもしれないという説もあるものの[10]、「王族」はイディッシュ語で keniglich (קעניגליךּ) から派生しており、ルゲラーと王族を結びつける説には無理がある[9]。
現代 ヘブライ語と古来のヘブライ語を比べると、このペストリーを現代ヘブライ語でroglìt (רוֹגְלִית) と呼び、聖書時代の後の古いヘブライ語から「最後のブドウの木」という意味を受け継いでいるのだが、ヘブライ語を話す人々は rugelach (רוגלך) を使い続けている[11]。おそらくイディッシュ語の ruglach がはじめにあり、あとからそれをヘブライ語に取り入れたとき rugelach という新語が生まれた。そのため、つづりと意味が似ていることもあり、 rugelach が定着したと考えることができる。
生地で具を包むペストリーや焼き菓子という意味でルゲラーを別のペストリーと混同することがある。たとえば「キッフェルン」(ドイツ)「キフリ」(en:Kifli・ユーゴスラビア、ハンガリー)「キフラ」(セルビア、ブルガリア、ボスニア、マケドニア)と呼ぶことがある[12]。またイタリアでの呼び名は「クロスチュッリ」[13]。(英語版 Kifliも参照。)
原材料
小麦粉とバターを合わせたルゲラーの生地にサワークリームやクリームチーズを練りこむ作り方のほかに、乳製品をいっさい使わないレシピもあり[14]、食事のタブーが多いユダヤ教徒も、乳製品を使わないルゲラーであれば肉製品の食事といっしょに食べてもさしつかえがない上(食のタブー参照)、タブーにふれないため食後すぐに食べても許される。アメリカで生まれたクリームチーズドーナッツは登場してから未だ歴史が浅く[15]、その点、ルゲラーなどサワークリームを用いた生地づくりはかなり昔から続く[16][17]。
中身の素材はバラエティーが多く、レーズン、シナモン、チョコレート、ジャム、マジパン、くるみ、けしの実やナッツ、ドライフルーツ、缶詰フルーツを生地で巻きこむ。レーズンやドライフルーツはあらかじめ水かぬるま湯でもどしたり、ナッツや果物を砂糖で甘く煮たりするレシピが好まれる[17]。家庭で手作りするレシピを記録した書籍もある[18]。
ルゲラーによく似たシュネッケンは東ヨーロッパのユダヤ人 (ポーランド、ロシア、ウクライナ) のペストリー。一般的にクリームチーズの生地を筒状に巻いてからスライスして焼くため、円盤状で渦巻き模様がある(シナモンロール参照)。ルゲラーはひとつずつ三角形の生地を巻いて三日月形にととのえる。近年、生地で具を包む料理法を応用して、鶏肉と動物性脂肪 (シュマルツ)、あるいはサーモンとブルサンチーズを使った料理が登場した [19]。
![](https://weblio.hs.llnwd.net/e7/redirect?dictCode=WKPJA&url=https%3A%2F%2Fupload.wikimedia.org%2Fwikipedia%2Fcommons%2Fthumb%2F2%2F21%2FIsraeli_pastries.jpg%2F250px-Israeli_pastries.jpg)
注釈
- ^ イディッシュ語にゆかりのある Rugelach は語幹 rog (ראָג) に語尾 ach (ך) がつくと複数形、rog に語尾 el (ל) がつくと単数形になる。また、単数形 Rugel の語尾はきわめて短い。ほかの例を見ると shtetlekh (שטעטלעך 小都市の複数形) の単数形 shtetl (שטעטל 小都市) も同じ。日本語で「村」が「町」になるように、shtetl は規模によって shtot (英語版) (שטאָט 大都市) になる[9]。
出典
- ^ 家庭で作ったもの。生地は小麦粉、サワークリームで作り、赤砂糖で甘く煮たくるみとレーズンを包んである。
- ^ 「ルゲラー」をあらわすその他のスペルは 複数形が rugelakh、rugulach、rugalach、ruggalach、rogelach。単数形は rugalah、rugulah、rugala、roogala。
- ^ カタカナ表記にもしばしば表記揺れが見られる。イスラエル大使館のクックパッドにおいては「ルガラー」と表記され、他方同大使館のYouTubeチャンネルでは「ルーガレフ」と表記されている。
- ^ ディアスポラのユダヤ人のうち、おもに東ヨーロッパなどに定住した人々やその子孫の呼称。
- ^ Nathan, Joan (2004年). “Joan Nathan's Jewish Holiday Cookbook”. Schocken. pp. 284. 2017年3月5日閲覧。
- ^ Fertig, Judith M (2003年). “All-American Desserts: 400 Star-Spangled, Razzle-Dazzle recipes for America's best loved desserts”. Harvard Common Press. pp. 135. 2017年3月5日閲覧。
- ^ ギル・マークス (1996年). “The World of Jewish Cooking”. Simon and Schuster. pp. 326. 2017年3月5日閲覧。
- ^ OverDrive, Inc.: “The baker's manual : 150 master formulas for baking”. Wiley. pp. 223 (2003年). 2017年3月5日閲覧。
- ^ a b c Harkavy, Alexander (1898年). “A Dictionary of the Yiddish Language”. Hebrew Pub. Co. pp. 312. 2017年3月5日閲覧。
- ^ 書籍の題名は「Jewish Mothers Tell their Stories」Young-Tulin, Lois (2000). Chapter 5: Mandelbrot, Rugelach and a Family Quilt. Hayworth Press. pp. 45。
- ^ Klein, Ernest David (1987年). “A Comprehensive Etymological Dictionary of the Hebrew Language” (Hebrew). McMillan. pp. 609. 2017年3月5日閲覧。
- ^ Olver, Lynne (2015年1月9日). “フードダイムライン”. Food Timeline. 2017年3月5日閲覧。
- ^ Dembinska, Maria (1999). Food and Drink in Medieval Poland: Rediscovering a Cuisine of the Past. University of Pennsylvania Press
- ^ Aish HaTorah Women's Organization (1987年). “The Taste of Shabbos : the complete Sabbath cookbook”. Feldheim Publishers. pp. 118. 2017年3月5日閲覧。
- ^ Kancigor, Judy Bart (2007年). “Cooking Jewish”. Workman. pp. 474. 2017年3月5日閲覧。
- ^ Grunes, Barbara (2007年). “The Best Bake Sale Ever Cookbook”. Chronicle Books. pp. 68. 2017年3月5日閲覧。
- ^ a b “Totally Cookies Cookbook”. Celestial Arts Publishing. pp. 74 (1995年). 2017年3月5日閲覧。"Ida's Rugelach"
- ^ Lang, George (1982). The Cuisine of Hungary. New York: Atheneum このハンガリー料理の本はフルーツを使ったペストリー (Gyumolcskosarkak) ほか、クルミパイ (Dios szelet) や スイート・ブルズアイ (Edes okorszem) など国によるバラエティーを載せている。
- ^ Eisenberg, Joyce; Scolnic, Ellen (2016). The Whole Spiel: Funny essays about digital nudniks, seder selfies and chicken soup memories. Incompra Press. pp. 126
- ルゲラーのページへのリンク