マダニ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/09 03:22 UTC 版)
対処
予防策
草木の多い場所になるべく入らない、入る場合は長袖の上衣や長ズボンを着用し、草に直接座らない、虫除けスプレーを使用する[15]、帰宅後すぐ着替え入浴するなどが望ましい[16]。
吸血されたときの対処
ヒト
マダニ科は口器を皮膚に刺し込んだ際にセメント様物質を唾液腺から放出する。このセメント様物質は半日程度で硬化するため、これ以降1 - 2週間程度は体から離れない。そこで無理にマダニを引き抜こうとすると、消化管内容の逆流により感染リスクの上昇を招いたり、体内にマダニの頭部が残ったりしてしまう可能性が高い。1 - 2週を経過した後は、セメント溶解物質を唾液から出し、これによって皮膚から離れる。
ヒメダニ科はセメント様物質を放出しないため、容易に取り除くことが出来る。
感染症罹患の恐れがあるため、マダニ咬症の場合は医療機関を受診すべきである。切開してマダニを除去するのが一番確実であるが、ダニ摘除専用の機器も存在している。民間療法ではマダニ虫体にワセリンを塗り[17]、約30分後に虫体を取り除く[18]、アルコール、酢や殺虫剤をつけたり、火を近づけたりするとマダニが嫌がって勝手に抜けることがあり、それが成功した例も報告されているが、無理に自己摘除しようとするとダニ媒介感染症の感染リスクが上昇するので推奨されない[19]。除去後、セフェム系やペニシリン系、テトラサイクリン系などの抗生物質を投与する[18]。
動物
少数の場合はピンセットなどを用いて除去するが、局所の炎症や膿瘍を誘発する可能性がある。体表に多数の寄生が見られる場合は殺ダニ剤を直接適用して殺虫・除去を行う[1]。
防除
ダニの防除法としては殺ダニ剤が用いられる。世界各地で有機リン系、ピレスロイド系、アミジン系、ニコチン系、マクロライド系の抗生物質や成長阻害剤などが用いられる。また、これらの合剤が用いられることもある。しかしながら、アメリカ合衆国、南米、オーストラリアなどの畜産国では殺ダニ剤抵抗性のマダニが出現し問題化している。最近ではマダニの中腸に由来する糖タンパク質の組み換え体をワクチンとして用いる方法がオーストラリアや中南米で実用化されている[1]。
- ^ a b c d e 今井壯一、板垣匡、藤崎幸藏 編 編『最新家畜寄生虫病学』板垣博、大石勇 監修、朝倉書店、2007年。ISBN 978-4254460278。
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- ^ “21人が死亡…日本全国に広がる“殺人ダニ”に注意”. テレビ朝日 (2014年2月25日). 2018年8月18日閲覧。
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- ^ 川端寛樹. “ライム病とは”. 国立感染症研究所. 2018年8月18日閲覧。
- ^ a b c d e マルホ皮膚科セミナー 千貫祐子 牛肉アレルギーの意外な実態 島根大学医学部 皮膚科 講師(ラジオ日経 2014年9月11日放送)2017年12月5日閲覧
固有名詞の分類
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