デュロキセチン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/05 14:16 UTC 版)
使用上の注意
本剤の意識消失発作の発症頻度は0.27%と低い。日本における発売後8ヵ月間で多剤投与中の追加投与で2例の意識消失発作を起こしたという報告がある[8]。1例目は手足を動かしていたことから痙攣発作である可能性が高く、2例目も発作時の脈拍、血圧が正常であったために痙攣発作である可能性が高い[8]。また、2例ともにデュロキセチンの投与の中止によって、発作は起こらなくなった。
一般的に抗うつ薬は発作の閾値を下げうるので[9]、抗うつ薬の多剤投与を行っている患者には特に注意を要す。
尿貯留の副作用のため、アメリカ食品医薬品局 (FDA) は、尿疾患には禁止している[10]。
禁忌
- 本剤に対し過敏症の既往歴がある患者
- モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤の投与中あるいは投与中止後2週間以内の患者 相互作用を参照。
- 高度の肝機能障害、腎機能障害がある患者
慎重投与
主なもののみ記述する[11]
- 前立腺肥大症等排尿困難のある患者
- 高血圧または心疾患のある患者
- 緑内障または眼内圧亢進のある患者
これらはノルアドレナリンの再取り込み阻害作用により、相対的に交感神経が優位になる偽抗コリン作用により引き起こされるが、デュロキセチンはムスカリン性アセチルコリン受容体に対する親和性はほとんどなく、直接的な抗コリン作用より軽度である。
薬物動態
デュロキセチンは主にCYP1A2とCYP2D6で代謝され、各酸化的代謝にはCYP1A2が中程度に親和性を示し、特に5-hydroxy体と4-hydroxy体の酸化的代謝にはCYP2D6が強く親和性を示す。主要代謝物の活性価は低く、臨床では問題にならず、抗うつ作用を発現させるのはデュロキセチンの未変化体であることが示唆される。
デュロキセチンは中程度にCYP2D6を阻害するが、CYP2D6を誘導する薬物は知られていない。また、CYP1A2の阻害能は最小限であり、誘導をすることもないとされる。
このことから、シトクロムP450に関与しないミルナシプランには劣るが[12]、デュロキセチンの薬物相互作用は比較的少ないとされる。しかし、デュロキセチンは軽いCYP2D6阻害薬であり、強力なCYP2D6阻害薬のパロキセチンや高用量(100mg〜)でCYP2D6を阻害するセルトラリン、強力なCYP1A2阻害薬のフルボキサミンとの併用で最大血中濃度とAUCの上昇が見られたため、それらの阻害薬との併用には注意すべきである。
併用禁忌
モノアミンの代謝が阻害されることにより、脳内のモノアミン濃度が高まった上でのモノアミン再取り込み阻害により、昏睡や全身痙攣などの症状が現れるおそれがある。
併用注意
主なもののみ記述する。
- ブチロフェノン系抗精神病薬のピモジド(オーラップ)
併用により、ピモジドの酸化的代謝が阻害されて血中薬物濃度とAUCが上昇した結果、心電図でQT延長をきたす可能性がある。
副作用
重大な副作用
- ^ 東原良恵, 今一義, 長田太郎, 渡辺純夫, 北條麻理子, 永原章仁, 廣田喬司, 里村恵美, 赤澤陽一, 野村収, 上山浩也, 稲見義宏「消化器症状を主訴に発症した仮面うつ病の1例」『消化器心身医学』第21巻第1号、消化器心身医学研究会、2014年、20-22頁、doi:10.11415/jpdd.21.20、ISSN 1340-8844、NAID 130004686981、20222-02-08閲覧。
- ^ “機能性ディスペプシア外来 - 機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)とは - 原眞一”. 2021年12月8日閲覧。
- ^ “医療用薬10製品に新効能などの追加承認”. ミクス (2015年5月27日). 2015年5月28日閲覧。
- ^ “変形性関節症に伴う疼痛に対する適応追加の追加の承認取得について”. 2016年12月19日閲覧。
- ^ “Comparative affinity of duloxetine and venlafaxine for serotonin and norepinephrine transporters in vitro and in vivo, human serotonin receptor subtypes, and other neuronal receptors”. Neuropsychopharmacology 25 (6): 871–80. (December 2001). doi:10.1016/S0893-133X(01)00298-6. PMID 11750180.
- ^ Li, Jie Jack (2015). Top Drugs: Their History, Pharmacology, and Syntheses. Oxford University Press. ISBN 978-0-19-936258-5
- ^ Stephen M. Stahl、仙波純一、松浦雅人、中山和彦、宮田久嗣(訳)、2010、『精神薬理学エセンシャルズ -神経科学的基礎と応用-』3、 ISBN 978-4895926409 pp. p. 570
- ^ a b 「多剤併用中の難治性うつ病患者にduloxetineを追加投与して意識消失発作がみられた2症例」『臨床精神薬理』第14巻第1号、2011年1月、pp. 103-106、ISSN 1343-3474。(要購読契約)
- ^ Pisani F, Oteri G, Costa C, Di Raimondo G, Di Perri R (2002). “Effects of psychotropic drugs on seizure threshold.”. Drug Saf. 25 (2): pp. 91-110. PMID 11888352 .
- ^ デイヴィッド・ヒーリー 著、田島治監訳、中里京子 訳『ファルマゲドン』みすず書房、2015年、88頁。ISBN 978-4-622-07907-1。 Pharmageddon, 2012.
- ^ デュロキセチンカプセル20mg「DSEP」/デュロキセチンカプセル30mg「DSEP」 添付文書
- ^ 川崎博己, 山本隆一, 占部正信, 貫周子, 田崎博俊, 高崎浩一朗「新規抗うつ薬Milnacipran hydrochloride(TN-912)の脳波および循環器に対する作用」『日本薬理学雑誌』第98巻第5号、日本薬理学会、1991年、345-355頁、doi:10.1254/fpj.98.5_345、ISSN 0015-5691、NAID 130000758808。
- 1 デュロキセチンとは
- 2 デュロキセチンの概要
- 3 使用上の注意
- 4 出典
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