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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/12 08:10 UTC 版)

歴史

旧石器時代(250万年前から紀元前1万年)

原始的な礫器

初期の人類による道具の使用は、部分的には発見の歴史であり、部分的には進化の歴史である。初期の人類は、既に二足歩行していた猿人一種から進化したものであり[18]、現代の人間に比べると脳の容量は3分の1だった[19]。初期の人類の長い歴史上、道具の使用にはほとんど変化がなかったが、約5万年前に行動の複雑化と道具の使用が組み合わさり、現代的な意味での言語が生まれたと考古学者の多くが考えている[20]

石器

前期旧石器時代のハンドアックス

約20万年前のホモ・サピエンスの誕生以前から、人類の祖先は石器などの道具を使っていた[21]。最も古い製法の石器オルドワン石器と呼ばれ、約230万年前に遡ると言われている[22]。そのような石器の痕跡で最も古いものはエチオピア大地溝帯で見つかったもので、約250万年前に遡る[23]。このような石器を使用していた時代を旧石器時代と呼び、農耕が始まる12,000年前までの長い期間を指している。

石器の製法は、燧石などの剥げ落ちやすい性質のある硬い石の「石核」を石鎚で打って作った。これにより剥片にも石核にも鋭い縁ができ、主に礫器または削器といった形の道具として使用した。当時の人類は狩猟採集生活を送っており、獲物を屠殺したり、木を切ったり、木の実を割ったり、動物の毛皮を剥いだり、骨や木といったもっと柔らかい素材から道具を作るといった用途に適した石器が作られた[24]

最初期の石器は非常に素朴なもので、自然に割れた石と大差なかった。約165万年前ごろから石器を特定の形にするようになり、握斧などが生まれた。約30万年前に始まった中期旧石器時代には、典型的な形状の石核から様々な形状の石器を作る技法が確立し(en)、一つの石核から複数の石刃を短時間のうちに製造できるようになった。約4万年前に始まった後期旧石器時代には、押圧剥離という技法が生まれ、木や骨やシカの角を押し当てて微細な石片を形成するようになった[25]

様々な用途がある単純なエネルギー源としてのの発見と利用は、人類のテクノロジーの発展にとってターニングポイントであった[26]。いつ発見したのかは定かではない。「人類のゆりかご」で動物の骨を焼いた痕跡が見つかっていることから、100万年前より古くから火を日常的に使うようになっていたと言われている[27]。学界では、ホモ・エレクトスが50万年前から40万年前に火を制御できるようになったというのが定説である[28][29]。燃料には木やを使い、食料に熱を通すことで消化をよくし、栄養価を高め、食べられるものの種類も増えた[30]

被服と住居

その他の旧石器時代のテクノロジーの進歩としては、被服住居がある。どちらも正確な年代は不明だが、人間性の進化にとっては重要である。旧石器時代の進展と共に、住居も徐々に進化していった。38万年前ごろから、人類は一時的な木製の小屋を建てるようになった[31][32]。被服としては、獲物の動物から剥いだ毛皮を使うことで、より寒冷な地域にも進出が可能になった。人類は20万年前ごろからアフリカ以外の地域への移住を開始し、ユーラシア大陸などに広まっていった[33]

新石器時代から古代(紀元前1万年から紀元300年)

腕輪、斧、ノミ、研磨用具などの新石器時代の遺物

人類のテクノロジーは、新石器時代と呼ばれる時代から急激に進化し始めた。刃の部分を磨いた石斧の発明により、森林を大規模に切り拓くことができるようになり、農場を作ることができるようになった。農耕により、より多数の人口を養えるようになり、定住生活が広まっていった。定住していなかったころには子供を運ぶ必要があることから、子供を連続で産むことができなかったが、定住することで子供を同時に育てることが可能になった。さらに、子供は狩猟採集生活をしていたころよりも幼いころから労働が可能となり、収穫高の増加に寄与した[34][35]

人口の増加と労働力の増加により、仕事の専門化が始まった[36]。メソポタミアのウルクのような都市が発生したきっかけや、シュメールのような文明が生まれたきっかけは定かではない。しかし、社会階層が増え、仕事が分化していき、隣接する文化との交易や戦争が起き、治水などの問題に対処するために団結が必要になったなど、様々な要因があると言われている[37]

金属器

テクノロジーの進展により、ふいごが生まれ、天然金属(自然界に純度の高い状態で存在する金属)の精錬鍛造が可能となった[38]。最初に使われたのはである。銅器はそれまでの石や製の道具よりも優れていることは明らかで、銅は新石器時代の当初(紀元前8000年ごろ)から使われ始めた[39]自然銅は自然界には少ないが、銅鉱石は多く存在し、その一部は木やで起こした火で熱することで容易に金属を取り出すことができる。そのようにして金属をあつかっているうちに、青銅真鍮などの合金を発見することになった(紀元前4000年ごろ)。などの鉄合金が使われるようになるのは紀元前1400年ごろからである。

エネルギーと輸送手段

帆船 ドーニー大三角帆は古代から用いられていた帆の形。

同じ頃、人類は新たな形態のエネルギーの利用法を学びつつあった。の力はまず舟の帆で利用され始めた。記録に残っている世界初の帆船は、紀元前3200年ごろのエジプトのものである[要出典]。先史時代からエジプト人は毎年洪水を起こす「ナイル川の力」を利用しており、灌漑水路を築いて溢れた水を盆地に導くことで灌漑用水を確保する方法を学んでいった。同様にメソポタミアのシュメール人もチグリス川とユーフラテス川について同様の利用方法を学んでいった。しかし、水力風力をさらに有効利用するには、もう1つの発明が必要だった。

車輪は紀元前4000年ごろの発明と言われている。
世界最初の飛行機(ライトフライヤー)

考古学者によれば、車輪の発明は紀元前4000年ごろとされている。車輪はおそらく、メソポタミアで発明されたと言われている。時期は紀元前5500年から3000年まで様々な説があるが、紀元前4000年ごろとする専門家が多い。車輪を使った荷車が描かれた人工物として最も古いものは紀元前3000年ごろのものである。しかし、そのような絵が描かれる千年前から、車輪を使った輸送手段が存在していただろうと言われている。また、同時代にろくろとして車輪を使っていた証拠も残っている。なお、元々のろくろは車輪を使ったものではなく、地面に突き立てた棒の上に真ん中に窪みか穴のある平らな板を載せただけのものだった。近年、スロベニアリュブリャナの湿地で世界最古の木製の車輪が発見された[40]

車輪の発明は、輸送、戦争、陶工(最初の車輪の用途と言われている)といった様々な活動に革命をもたらした。車輪を使った荷車は重い物を運ぶのに使われ、ろくろは陶器の大量生産を可能にした。さらに、車輪は風車水車といった新たなエネルギー変換手段を生み出し、人力以外の動力の応用という革命をもたらした。

13世紀に作られた機械式時計en:Zytglogge(スイス、ベルン)。

紀元300年以降

道具には、単純な機械(てこねじ滑車など)と、より複雑な機械(時計エンジン発電機電動機コンピュータ宇宙ステーションなど)の両方を含む。道具が複雑になると、それをサポートするのに必要な知識も複雑になる。現代の複雑な機械には、継続的に増大し洗練されていく技術マニュアル群が必要であり、設計者、製作者、保守者、利用者には専用の訓練が必要とされることが多い。さらに、そのような道具は非常に複雑であるため、技術的知識に基づくより小さな道具、プロセス、(それ自体が複雑な道具である)プラクティスの包括的基盤がそのような道具をサポートする形で存在している。それは例えば、工学であり、医療であり、計算機科学である。複雑な製造建設の技法と組織は、そのような道具の構築に必要となる。産業全体が、より複雑な道具を次々に開発しサポートしていくために発展してきた。

テクノロジーと社会は強く相互に依存している。この相乗的関係は人類の黎明期に単純な道具を発明したときに始まり、今日も続いていると言われている。テクノロジーは歴史上、社会の様々な面、すなわち経済、価値観、倫理観、学界、集団、環境、政府などに影響し、影響されてきた。


注釈

  1. ^ 狩猟採集社会の人類の小集団は、男は全員で狩猟に参加し(待ち伏せ役、追い立て役などに分かれ)得た獲物は、直接仕留めた人のものではなく、追い立て役の人にも待ち伏せ役の人にも平等に権利があり、そのメンバー全員で獲物の肉を平等に分けるというルールを持っていた、と(現代でも秘境にほそぼそと残り狩猟採集社会を保っている部族の研究などによって)人類学は明らかにしている。そして狩りの道具の制作も、全員が行った。そのかわり、どの作業も素人的で、素朴な道具しか作れなかった、と考古学や人類学は明らかにしている。
  2. ^ Stephen Monsma などにいたっては、この技術崇拝の考え方を、より高次の道徳的拠り所としての宗教の放棄に結び付けているのだという[41]

出典

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