ソユーズ 打ち上げロケット

ソユーズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/19 06:54 UTC 版)

打ち上げロケット

R-7ファミリー

ソユーズの打ち上げには、通常R-7ロシア語 Р-7)というミサイルを改良した11A511型ロケットが使われる。11A511とはロシア国防省内のGRAUによる名称であり、アメリカ議会図書館ではA-2と命名しており、この呼称のほうがよく知られる。ソユーズ宇宙船と合わせソユーズロケットとも呼ばれる。

R-7の改良型はスプートニク1号ユーリ・ガガーリンも乗ったボストークを打ち上げた実績を持っている。A-1(ボストーク、ルナロケット)やA-2を含むA型ロケットは、もともとはR型ミサイル、すなわち大陸間弾道ミサイルとして開発されたものであり、A-2から宇宙船を外せばそのまま核弾頭を搭載して北米に撃ち込むことができた。同様にアメリカでも、マーキュリー宇宙船を打ち上げたレッドストーン短距離弾道ミサイルだったことなどから、宇宙開発がどれだけ軍拡競争と密接な関係にあったかがうかがえる。

A-2も随所に改良点はあるものの、ケロシン液体酸素を燃料としたり、第2段ロケットの周りに4本の第1段ロケットを取り付けるクラスター構成など、基本的なシステムは初期のR-7から代々受け継がれている。

アメリカ側では第1段の4本のロケットは補助ロケットブースター(第0段)と見なしており、この場合中央の第2段ロケットが第1段となる。

ソユーズロケット (A-2) 一覧

ソユーズ宇宙船の打上げには、16号からTM-34まではソユーズUロケット、TMA-1からは改良型のソユーズFGロケットが使われている。一方、プログレス補給船の打上げには数機がソユーズFGロケットの試験を兼ねて打上げられたのを除き、ソユーズUロケットが使い続けられている。

エンジン。周囲が第1段、中央が第2段

アメリカや日本では、ブースターと1段ロケットと呼ばれているものは、ロシアでは1段ロケットと2段ロケットと呼ぶ。A-2では、第1段も第2段も、4基の燃焼室と、その周りにある姿勢制御のための補助エンジン(バーニアエンジン)からなる。2段はRD-108、1段はRD-107エンジンを使用。補助エンジンは第2段に四方に合計4基、第1段には外側に2基装備されている点がRD-107とRD-108エンジンの違いである。

メインエンジンのノズルは固定されているが、補助エンジンにはジンバル機構(ノズルの向きを傾ける機構)が備わっており、これを動かすことによってロケットの姿勢を制御する。4基の燃焼室からなるメインエンジンの燃料を送るポンプは1基だけで、ポンプの先の燃焼室とノズルが4基になっている。こうすることで燃焼室1基あたりの圧力を下げることが出来るため、圧力に対する耐久力の設計を低く抑えられる。

そして第2段の上にトラス部分を経て第3段ロケットが搭載され、さらにその上にソユーズ宇宙船やプログレス補給船が搭載される。トラス部分が存在するのは、切り離しに先立って第3段ロケットを点火してトラス部分に噴射することで第2段ロケットとの距離を確保して衝突を防ぐためであり、ソビエト連邦の多段式ロケットの多くに採用されている機構である。実際ソユーズ18号では切り離し機構の故障により切り離しに失敗したが、第3段ロケットの推力で切り離し機構を焼き切ることで切り離しに成功し地球に生還することができた。

ロケットの頂部には空気の流れを整えるためにフェアリング(カバー)と、最上部にはアポロ宇宙船などと同様のアボートタワーが取り付けられる。これらは第1段ロケット分離前後に大気圏上層部で外される。

これら全て合わせると、最大で直径10.3m、全長49.3m、重量310トンになる。

レール上を発射台に向かうソユーズTMA-3打ち上げ用のソユーズロケット
発射台上に設置されるソユーズ(バイコヌール、1975年7月15日)

A-2の打ち上げでユニークなのは、打ち上げまでロケットを保持していた支柱が、ロケットエンジンに点火されると同時に花びらのように開く方式である。このような方法になったのは、ロケットの軽量化が理由である。

第1段ロケット4本を外部に設置した中央の第2段ロケットは軽量化の結果、構造的に第1段ロケットの重量を支えることが出来なかったため、トラス構造の頑丈な支柱に第1段ロケットが吊り上げられた状態で発射される。この方式はチュルパン(Tyulpan、チューリップ)発射方式と呼ばれ、レニングラード金属鋳造工場 (LMZ) で設計された。ロケットのエンジンが点火され、第1段ロケットの推力が上がりそれ自体の重量を支えられるようになると(すなわち「エンジン出推力重量」となると)、第1段ロケットを支持する4つの支柱が離れ外側へ倒れこみ、ロケットは上昇を開始する。この光景はロシアのロケット発射に固有の風景である。西側のロケットではブースター重量を第1段が支持できるためこのような構造は見られない。

打ち上げから114秒後にアボートタワー、118秒後に第1段ロケットを切り離し、さらに加速。157秒後に大気圏上層部でフェアリングを分離し、さらに打ち上げから287秒で第2段を切り離し、第3段に点火。最終的に発射から528秒後、ソユーズ宇宙船が地球周回軌道に投入される。

※打ち上げロケット (A-2) についてはR-7 (ロケット)のページも参照のこと。


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