ジャイナ教 食生活

ジャイナ教

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/11 00:25 UTC 版)

食生活

食生活はジャイナ教の生物の分類学上、できる限り下等なものを摂取すべきであり、豆類葉菜類と茎野菜を中心とした食事となることが多い。殺生を徹底的に忌むことから、魚介類球根類(五葷[注釈 1]などは口にしない。敬虔な信徒は、蜂蜜鰹節煮干し出汁ブイヨンゼラチン・肉エキス・バターラード・ヘット(牛脂)・魚油馬油やそれらを使用した調理器具も忌むことがある。また誤って虫を殺めぬよう、火を使用する調理を避け、調理と食事は日の出ている時間内に済ませる。ジャイナ教徒に食事を振る舞う際は、相手の食べられないものをなるべく個別に確認し、料理に含まれる食材と含まれない食材を説明するのが望ましい[3]

白衣派と裸行派

12年に1度、聖地シュラバナ・ベラゴラ山のジャイナ教寺院で、牛乳や香辛料などがゴマテーシュワラ像に 次々とかけられていく祭り。

マハーヴィーラ在世時、マガダのセーニヤ(seṇiya、仏典中に見られるビンビサーラ)王やその王子クーニヤ(Kūṇiyaアジャータシャトル)などの帰依・保護を受けて、すでに強固な教団を形成していたと思われるが、彼の没後はその高弟(ガナダラ、「教団の統率者」)たちのなかで生き残ったスダルマン(sudharman、初代教団長)などにより順次受け継がれ、マウリヤ朝時代にはチャンドラグプタ王や宰相カウティリヤなどの庇護を得て教団はいっそうの拡大をみた。それ以降のジャイナ教教団史をみる上では、白衣(びゃくえ)派(シュヴェーターンバラ、śvetāmbara)と裸行派(or空衣派:くうえは、ディガンバラ、digambara)が分裂しながらも存続している。

両派の分裂は1世紀頃に起こったと伝えられる[4]。相違点は、白衣派が僧尼の着衣を認めるのに対し、裸行派はそれを無所有の教えに反するとして裸行の厳守を説く。また、裸行派は裸行のできない女性の解脱を認めない。白衣派は行乞に際して鉢の携帯を認めるが、裸行派ではこれも認めない。

概して白衣派は進歩的なグループ、裸行派は保守的なグループであるといえる。ただし、両派の相違は実践上の問題が主で、教理上の大きな隔たりはみられない。

中世、イスラム教徒のインド侵入は仏教のみならずジャイナ教にも打撃を与えたが、それを契機として、ジナ尊像の礼拝を否定するローンカー(lonkā)派が新たに誕生するなど、伝統はとだえることはなかった。現在は白衣派・裸形派とも多くの分派が派生している。そのなかで最大の勢力は白衣派の尊像崇拝派(ムールティプージャカ)であり、さらに多くのガッチャと呼ばれる分派に分かれている。

ジャイナ教の現況

聖地シャトルンジャヤ山を巡礼に登るジャイナ教徒

現在、白衣派の多くみられるのはグジャラートラージャスターン両州、ムンバイ(ボンベイ)などである。寺院で尊像を礼拝するデーフラーバーシー派(dehrāvāsī)とこれを行わないスターナクヴァーシー派(sthānakvāsī)の2派がある。

裸行派はほとんど南インドに集中するが、マディヤ・プラデーシュ州にも多少みられる。テーラーパンティ(terāpanthi)とヴィスパンティ(vispanthi)の2派があるが、生活儀礼の上でわずかな相違がみられるのみである。

ジャイナ教徒は2001年のインド国勢調査(Census 2001)によれば450万人ほどを数え、これは全人口の0.5%にも満たないが、インド社会において事実上の一カーストを形成している。ただし、ここでいうカーストとは職業的内婚集団と説明される「ジャーティ」の意味合いである。インド社会でのジャイナ教徒の結束はきわめて固く婚姻も多くがジャイナ教間だけでおこなわれることがそれを裏付けているといえる。


注釈

  1. ^ 球根類は植物の殺生に繋がり、土中から掘り起こす時に虫を殺傷するおそれがあるとされる。
  2. ^ 戒律に則ると、消去法で商業に就かざるを得ないという見解が近いという。

出典

  1. ^ 厳格な人は微生物や虫にも配慮する。不殺生貫く「ジャイナ教」フードが今注目される理由”. 南龍太 メディアジーン (2019年12月19日). 2023年6月18日閲覧。
  2. ^ 木村靖二岸本美緒小松久男『詳説世界史 改訂版』山川出版社、2017年、56頁。ISBN 978-4-634-70034-5 
  3. ^ ジャイナ教とは” (PDF). 国土交通省. 2023年7月1日閲覧。
  4. ^ 『南アジア史』(新版世界各国史7)p60 辛島昇編 山川出版社 2004年3月30日1版1刷発行
  5. ^ Gemmy 149 号 「小売店様向け宝石の知識「宝石大国・インド4」」”. 早川武俊. 2023年6月28日閲覧。






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