シリアルATA
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/20 22:43 UTC 版)
概要
半二重1.5Gb/s・3 Gb/s・6 Gb/sの転送速度を持つ3つの規格があり、いずれも互換性がある。異なる規格を接続した場合、低い性能に合わせて機能する。ただし、内蔵機器用、外部機器用、小型機器用でコネクタが異なりこれらは物理的に接続できない。
上記規格は一般にそれぞれ「シリアルATA 1・2・3」(Serial ATA I/II/III) とも呼ばれるがこれは公式な規格名称ではない。規格番号と性能は必ずしも一致しないこと[4]から通称ではなく「SATA 6Gb/s」のような表記が求められている[5]。規格仕様自体を特定したいときは「Serial ATA Revision 3.0」のように表記する。
経緯
旧規格のATA(パラレルATA)はデータを複数の信号線に分割して転送するため、クロックスキュー(伝送経路間に起きる信号のずれ)が発生する。分割されたデータを再結合するには全ての経路でデータの到着を待つ必要がある。この待ち時間が転送速度向上の制限となっていた。SATAはこれを解決するため信号を分割せず一つの経路で転送する規格として誕生した。
シリアルATA ワーキンググループが2000年2月に発足。2000年11月にSerial ATA Revision 1.0が発表された。2007年頃(第三世代、後のSerial ATA Revision 3.0)までの大まかな開発予定も示された。なお最初はUltra SATA/1500の名で規格が発表された[6]。
シリアルATA 2 ワーキンググループ(Serial ATA II Working Group)の発足は2002年2月。「シリアルATA 2」(Serial ATA II) という間違った通称はこの組織名に由来する。本来は組織名であって規格を指す言葉ではなかった[5]。後にSerial ATA International Organization (SATA-IO) へと改名。
また当初シリアルATA 2とは、NCQという特定の機能や転送速度3 Gb/sを表すという誤解があった[4]。実際には機能と速度が別々の規格であり特定部分のみを採用した製品も可能である[4]。2005年、このような誤解を避けるためこれらを単一規格にまとめたSerial ATA Revision 2.5が発表された[4]。
パラレルATAとの違い
- 信号経路のシリアル化
- ホットスワップ[注釈 1]への対応[4]
- 通信速度の向上。UDMA6の133.3 MB/sから150 MB/sに
- ケーブル長が最大45.7 cmから1 mに延長[4]。外付け用の規格eSATAでは2 m
- 信号伝送の電圧が5 Vから0.5 Vに低減 (LVDS技術を採用)。消費電力と信号干渉の低減、ケーブル長の延長を実現
- 80芯40ピンコネクターのフラットケーブルを7ピンのケーブルへ簡略化。配線の取り回しやコンピュータ内部のエアフローを改善[4]
- コネクタ部も変更。これにより両者の互換性は絶たれた (パラレルATAのマザーボードにシリアルATAのデバイスは接続できずその逆も不可)
- マスタースレーブ接続の廃止。1本のケーブルに1台のデバイスを接続するようになった
- USB同様にホストコントローラのレジスタインタフェースは規格範囲外になった (ホストコントローラのAHCI規格はシリアルATAと独立)
- パラレルATAでも明示的な規定はなかったが「タスクファイル」を実際のレジスタと見做す実装がほとんどであった
- リンクレイヤはパラレルATA同等の機能。パラレルATAのレジスタインタフェースをエミュレートするホストコントローラを容易に実装可能
- インテルのICH(I/O コントローラー・ハブ)が実例
- 電源及び信号コネクタの物理寸法と配置が規格化。デバイスメーカを問わず共通のバックプレーンに直接着脱できる
Advanced Host Controller Interface
Advanced Host Controller Interface (AHCI) は、Serial ATA Revision 2.0 と密接な関連があるがホストコントローラーの独立した規格でありシリアルATA規格には含まれない。
シリアルATA対応のホストコントローラーの内、動作モードに"AHCI"やIDEエミュレーションモード("IDE"や"PATA"などと表記)を持つものがある。これら動作モードではオペレーティングシステムやデバイスドライバを正しく設定する必要がある[注釈 2]。
プロトコル
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リビジョン
Serial ATA Revision 1.0 (1.5 Gbit/s, 150 MB/s, Serial ATA-150)
Serial ATA Revision 1.0a
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2003年1月7日にリリース
Serial ATA Revision 2.0 (3 Gbit/s, 300 MB/s, Serial ATA-300)
Serial ATA Revision 1.0aを基に拡張したもの。Serial ATA Revision 1.0a策定後から2004年頃までにとりまとめられた技術的な拡張全体を指す。
- 物理転送速度 - 半二重3 Gb/s
- 実効転送速度 - 半二重2.4 Gb/s (300 MB/s)
- インターフェイス名 - Second generation
- NCQ (Native Command Queuing) やマルチポート等の概念を入れる
- 15ピン電源端子にアクティブLEDやスピンアップ制御機能をオプション扱いで盛り込む
- インタフェース仕様の統一の為、AHCIが規格化された。ATAエミュレートが不要な為性能も向上する。
Serial ATA Revision 2.5
2005年8月23日付 SATA-IO、シリアルATAのRevision 2.5仕様を策定
- SATA 1.0aとSATA 2.0の拡張仕様を統合
Serial ATA Revision 2.6
2007年3月5日付 SATA-IO、シリアルATAのRevision 2.6仕様を策定
- 小型フォームファクタ用スリムドライブ向けのスリムケーブルとコネクタ[4]
- 1.8インチHDD向けのMicro SATAコネクタ[4]
- Mini SATAの内蔵/外付けマルチレーンケーブルとコネクタ[4]
- 複雑なワークロード環境のデータに対するネイティブコマンドキューイング (NCQ) の優先度の強化[4]
- NCQのアンロードの強化[4]
Serial ATA Revision 3.0 (6 Gbit/s, 600 MB/s, Serial ATA-600)
2008年8月18日付 SATA-IO 発表、2009年5月27日策定完了[8][9]。米マーベル社からSerial ATA Revision 3.0コントローラチップが出荷されており、マザーボードやインタフェースカードに搭載、販売されている。パソコン向けチップセットにおけるサポート(機能の内蔵)は、AMDが890GXのサウスブリッジのSB850へSerial ATA Revision 3.0コントローラを実装し、インテルはSandy Bridgeに対応するチップセット6x世代から実装した。
- 物理転送速度 - 半二重6 Gb/s (750 MB/s)
- 実効転送速度 - 半二重4.8 Gb/s (600 MB/s)
- インターフェイス名 - Third generation
- 電力管理能力の向上
- アイソクロナス転送(帯域保証)によるNCQ (Native Command Queuing) ストリーミングコマンドの追加(オーディオや動画等の広帯域データ転送向け)
- NCQコマンドのホストコントローラ処理や管理強化によるパフォーマンスの最適化
- 1.8インチドライブ向け小型LIF (Low Insertion Force) コネクタのサポート
- ノートPC用7mmスリム光学ドライブ向けコネクタのサポート
- INCITS ATA8-ACS 規格適合(HDDとSSDの識別が可能となる)
- 低コスト・低消費電力の方向性を継続
Serial ATA Revision 3.1
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Serial ATA Revision 3.2
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- SATA Expressに(2GB/s[10])対応
- M.2に対応
- SSHDに対応
Serial ATA Revision 3.3
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Serial ATA Revision 3.4
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Serial ATA Revision 3.5[11]
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注釈
- ^ a b 実際にホットスワップを使用するにはストレージ、ケーブル、コネクター、ホストバスアダプタ(SATAコントローラー、チップセット)、BIOS、デバイスドライバ、OSの全てが対応している事が必須である。
- ^ コントローラーがマザーボードに内蔵の場合BIOS画面で設定する
- ^ ケーブル上では1byte(8bit)のデータが10bitに符号化されるため、実際の転送速度は1.5 Gb/s x (8bit / 10bit) = 1.2 Gb/s = 150 MB/sとなる。以降の規格も計算方法は同じ。
- ^ 8b/10bエンコード前の生のビットレート
- ^ a b ポートマルチプライヤを使用した場合は1チャンネル(ポート)に15台の機器を接続することができる(ただし2006年11月現在で6台以上をサポートした製品は存在していない)。
- ^ パッシブアダプターでは1 m
- ^ SAS Expanderを用いる事により1チャンネル(ポート)に65000台超の機器を接続することができる。
- ^ 特別なケーブルを用いた場合。通常のケーブルで数珠つなぎ(ディジーチェーン)する場合は72 mまで。
- ^ a b ハブを用いた場合
- ^ a b “FireWire Developer Note: FireWire Concepts”. Apple Developer Connection. 2009年7月13日閲覧。
- ^ 16 cables can be daisy chained up to 72 m
- ^ USB hubs can be daisy chained up to 25 m
- ^ ホストバスアダプタによって増やされる
- ^ スイッチングにより16,777,216個
- ^ point to pointの場合
- ^ switched fabricの場合
- ^ 2012年製品化の銅線では最大10 W
出典
- ^ デジタル大辞泉. “SATA”. コトバンク. 2018年9月29日閲覧。
- ^ a b IT用語がわかる辞典. “SATA”. コトバンク. 2018年9月29日閲覧。
- ^ https://en.wiktionary.org/wiki/SATA
- ^ a b c d e f g h i j k l 大原雄介 (2009年6月30日). “Serial ATA 3.0編その2”. 大原雄介の最新インターフェイス動向. Impress Watch. 2013年7月3日閲覧。
- ^ a b Serial ATA International Organization. “SATA Naming Guidelines”. 2013年7月3日閲覧。
- ^ “News:ATAの転送速度が1.5Gbpsに──Ultra SATA/1500の仕様が決定”. ITmedia (2000年11月24日). 2013年7月3日閲覧。
- ^ “SATA-PATA変換アダプタを介してATAPIデバイスが動かないワケ”. 伊勢雅英のIT見聞録. PC Watch. 2009年2月11日閲覧。
- ^ “The Path from 3Gb/s to SATA 6Gb/s: How to Migrate Current Designs to the SATA Revision 3.0 Specification” (pdf) (2009年). 2009年12月2日閲覧。
- ^ “Serial ATA 3.0編その1”. PC Watch 2012年8月14日閲覧。
- ^ “SATA 3.2 規格公開。転送速度 2GB/秒に高速化、SATA Express やM.2フォームファクタ対応など - Engadget 日本版”. Engadget JP. 2021年10月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月9日閲覧。
- ^ Gourav (2020年7月17日). “SATA Revision 3.5 specification published” (英語). Latest Mobiles / Latest Smartphone Launches | New Mobiles | Technology News. 2021年10月9日閲覧。
- ^ “Can I install a laptop 2.5" SATA drive on a desktop without any adapters?”. superuser.com (2009年). 2013年12月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年12月4日閲覧。
- ^ “Get ready for mini-SATA”. The Tech Report (2009年9月21日). 2009年9月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年1月26日閲覧。
- ^ “Serial ATA (SATA) pinout diagram”. pinoutsguide.com (2013年12月16日). 2014年2月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年4月2日閲覧。
- ^ “Hardware issues”. 2009年12月2日閲覧。
- ^ “どう違う?「SATA Express」と「M.2」の違いについて”. 2019年2月22日閲覧。
- ^ a b c d e f g h Technologies That Use 8b/10b Encoding[出典無効]
- ^ “eSATAp Application”. Delock.de. 2010年1月26日閲覧。
- ^ a b Frenzel, Louis E. (2008年9月25日). “USB 3.0 Protocol Analyzer Jumpstarts 4.8-Gbit/s I/O Projects”. Electronic Design. 2009年7月3日閲覧。
- ^ Minich, Makia (2007年6月19日). “Infiniband Based Cable Comparison” (PDF). 2008年2月11日閲覧。
- ^ Feldman, Michael (2007年7月17日). “Optical Cables Light Up InfiniBand”. HPCwire (Tabor Publications & Events): p. 1 2014年1月14日閲覧。
- 1 シリアルATAとは
- 2 シリアルATAの概要
- 3 ケーブル、コネクタ、ポート
- 4 他の接続規格との比較
- 5 脚注
- シリアルATAのページへのリンク