コンクリート 耐久性

コンクリート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/02 00:43 UTC 版)

耐久性

耐用年数

コンクリート構造物の供用年数は壁の厚さに比例しており、ヨーロッパ中世及び近世時代の城壁や太平洋戦争時の配筋も無い壁の厚さ2メートルを越える建築物は未だ現役である。しかし日本の旧建築基準で建築された壁厚0.31メートル程度の建造物は普通50-60年程度といわれており、高度経済成長期に大量に建設された構造物の維持・管理が21世紀の日本の大きな課題となる。

建設省が1998年にまとめた「建設省総合技術開発プロジェクト」の報告書によると、セメントに混入する水を50%以下まで減らし、鉄筋のかぶり厚を十分に取り、収縮や凍結を抑制する添加剤を加えることで、500年以上といった半永久的な耐久性を確保することが可能である。ただ、こうした施工を行うと工期が延びてコストも増大するため、そこまでの耐久性を想定して鉄筋コンクリート構造物を建設することは少ない。

変状種類

複合的要因による劣化事象

  1. 中性化
  2. 塩害
  3. アルカリ骨材反応アルカリシリカ反応・アルカリ炭酸塩反応・アルカリシリケート反応)
  4. 凍害
  5. 化学的腐食
  6. 疲労
  7. 風化老化
  8. 火災

劣化要因

コンクリートはメンテナンスフリーの材料と称される時代があったが、実際には様々な原因によって劣化を生じる。以下に主な劣化機構を挙げる。

  • 荷重の増大と設計
    1. 社会的ニーズに伴い、重量や頻度などの疲労荷重が増大した
    2. 地震波浪などの外力の解明が、かつては不十分であった
    3. 構造物設計時に過度に経済性を追求した
    4. 許容応力度の変化に象徴されるように、蓄積技術に変化が生じた
  • 建築環境の影響
    1. 凍結防止剤、海水などに含まれる塩化物によって、塩化物イオンが鉄筋コンクリート中の鋼材を腐食させる(塩害
    2. 二酸化炭素によって、コンクリートがアルカリから中性化し、鉄筋コンクリート中の鋼材の不動態被膜が失われる
    3. 温度湿度の変化によって伸縮し、コンクリートにひび割れが入る
    4. 酸性雨によって、セメント水和物の化学変化による軟化や破壊が起こる
    5. その他、社会変化
  • 材料の品質と選択
    1. アルカリ骨材反応によってある反応性物質が膨張し、コンクリートにひび割れを生じる
    2. セメントの品質
    3. 海産骨材の不適切な使用(洗浄の不十分な海砂を細骨材として用いるなど)により、塩化物イオンが大量にコンクリート中に含まれる
  • 人員(現場作業員)の質
    実際に施工する人員の工法にたいする無知、怠慢によるもの。

注釈

  1. ^ 質量・体積の大きいコンクリートで、ダムや橋桁などの大規模な構造物に用いられる。
  2. ^ セメントに対する水の比率をある程度まで減ずる事ができるという意味は、コンクリート中でセメント水和物を得るだけの水があればコンクリートは十分に固まるという意味であり、それ以上の水は流動性に確保のために加えられている。水はコンクリートに流動性を与えるのには安価で良いが、時間と共に蒸発すると固化したセメントや骨材の間に間隙を作る事になるため、強度低下の要因となる。高強度のコンクリートを得るには、セメント水和物への反応に必要な量の水だけを加えるようにして、失われる流動性を補うためにセメント粒子を分散させる減水剤と呼ばれる混和剤や、蒸発せずに流動性がありそれ自身も化学反応によって固化する、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフュームなどを加えている。こういった混和剤の使用によって最大200N/mm2程度の高強度コンクリートが作られている。
  3. ^ 締固め作業での過剰な振動は、材料の分離を招いてコンクリートの均一性が損なわれるので、避けられなければならない。
  4. ^ コールドジョイントが起きないようにするために、打ち重ねの層は2-2.5時間以上の間をあけないように計画的な作業管理が求められ、それ以上の時間間隔があく場合には「管理された打継面」にする。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 基礎講座シリーズ コンクリートの基礎講座”. 一般財団法人建材試験センター. 2020年8月15日閲覧。
  2. ^ 一般財団法人セメント協会
  3. ^ 身体防水について(はじめに)
  4. ^ a b コンクリートの歴史
  5. ^ “コンクリ、2000年の計 火山灰で耐久力アップ”. 日本経済新聞朝刊. (2017年3月19日). https://www.nikkei.com/article/DGKKZO14203070X10C17A3MY1000/ 
  6. ^ The Roman Pantheon: The Triumph of Concrete
  7. ^ Lancaster, Lynne (2005), Concrete Vaulted Construction in Imperial Rome. Innovations in Context, Cambridge University Press, ISBN 978-0-511-16068-4
  8. ^ D.S. Robertson: Greek and Roman Architecture, Cambridge, 1969, p. 233
  9. ^ Henry Cowan: The Masterbuilders, New York 1977, p. 56, ISBN 978-0-471-02740-9
  10. ^ Robert Mark, Paul Hutchinson: "On the Structure of the Roman Pantheon", Art Bulletin, Vol. 68, No. 1 (1986), p. 26, fn. 5
  11. ^ https://web.archive.org/web/20110221204004/http://www.allacademic.com/meta/p_mla_apa_research_citation/0/2/0/1/2/p20122_index.html
  12. ^ http://www.djc.com/special/concrete/10003364.htm
  13. ^ 現代の戦場で最も効果的な兵器は「コンクリート」”. GIGAZINE (2016年11月17日). 2017年2月13日閲覧。
  14. ^ 女性に継承、生死を分けた下穿きの有無『都新聞』昭和7年12月28日(『昭和ニュース事典第4巻 昭和6年-昭和7年』本編p57 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年)
  15. ^ a b c d e f 土木学会関西支部編、『コンクリートなんでも小事典』、講談社、2008年12月20日第1刷発行、ISBN 9784062576246






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品詞の分類

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