コンクリート コンクリートの概要

コンクリート

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/31 01:25 UTC 版)

コンクリートを使った構造物高速道路阪神高速道路

概要

コンクリート製のモノレールの軌道(画面右手から奥へ伸びる。米国シアトル

砂利などをセメントで固めた物で建築土木工事材料として多く利用される。コンクリートは鋼材とともに現代の建築土木工事には不可欠な構造材料である[1]強度と価格の面や施工の安易さから、一般に最も広範に使用されている建築資材の一つであり、建築物道路ダム高架橋トンネル港湾設備と用途は幅広い。

コンクリートはセメント、骨材(粗骨材や細骨材)、水および若干の空気泡からなる[1]。コンクリートの場合は粗骨材(砂利や砕石)も細骨材(砂や砕砂)も用いられるのに対し[1]、セメントペーストに細骨材のを練混ぜたものはモルタルと呼び区別する[2]

コンクリートは圧縮力には耐えられるが引張力には弱いため、コンクリートを単体で使うより、コンクリートの中に鉄筋を入れた鉄筋コンクリートとして使われることが多い。コンクリートと同じ熱膨張率を持つ鉄筋を入れることで引張力を鉄筋が受け持ち、どちらの力にも十分な強度を持たせることができる。また、鉄筋コンクリートに鉄骨を埋め込んだ鉄骨鉄筋コンクリートや、鉄骨鉄筋コンクリートの鉄骨を鋼管に置き換えた鋼管コンクリート、あらかじめ圧縮力をかけておくことによって大きな引張力が作用しても軽減できるプレストレスト・コンクリート、生コンクリートに合成樹脂繊維を混ぜ込んで強度・延性を増した繊維補強コンクリートも用いられる。

名称

現在は英語単語のカタカナ表記である「コンクリート」という表記を用いるのが一般的である。広井勇の発案であるとされる「混凝土」(コン・クリー・ト)という音訳表記も以前は広く用いられ、このまま「コンクリート」と読まれた。この漢字表記は、中国語圏では現在でも最も一般的なコンクリートの名称として用いられている。

コンクリートは、広義の意味では砂利などをセメントなどの糊状のもので結合させたものを指す。そのためセメントで結合させたものをセメントコンクリートと呼び、アスファルトで結合させたものをアスファルトコンクリートと呼ぶ。建築資材として一般にコンクリートと呼ばれるものはセメントコンクリートの方である。(省略してコンクリCOCONとも読み書きされる)。

別名ベトン: béton: Beton: beton)。

凝固する以前の状態はフレッシュコンクリートと言われる(生コンクリートまたは省略して生コンとも)。

歴史

ヴェスビオス火山山麓にあった火山灰石灰砕石を混合したものが水中で硬化したことを発見したのがコンクリートの歴史の始まり。

歴史は古く、コンクリートに類似したものは古代エジプトにもあったが、ローマ人ヴェスビオス火山の山麓にあった火山灰「ポッツォリーナ」(Pozzolina)、石灰砕石を混合したものが水中で硬化し、強度を増すことを先住民のエトルリア人から習い[3]水道橋伽藍など建築物構造物構築物古代ローマ・コンクリートを多用した。ローマにある伽藍のドーム型枠すら使用されていた痕跡が確認されている。

ローマに現在も残るパンテオン鉄筋を使用していないコンクリート建築としては世界最大級のコンクリート製ドームのであり、ローマン・コンクリートがむき出しの状態である。現在とは異なり、当時のローマではコンクリート壁をレンガなどで覆っていた。ローマ帝国で使用されたローマン・コンクリートは、生石灰、「ポッツオーリの土」とも称される火山灰、軽石を骨材に使用していた。それまでの、レンガを使用した建築に対し、コンクリートは革命的な材料で、制限されない自由で斬新な設計が可能となり、アーチヴォールト、ドーム形状などに素早く硬化して剛体となり、それまでの石・レンガ建築で問題であった内部の圧縮・引張りを気にする必要が薄れ、建築史を大きく塗り替えた[4]

最近の評価では、ローマン・コンクリートは現代使用されるポルトランドセメントと比較しても圧縮に対する強度は200  kg/cm2と大して変わらないが、鉄筋を使用していない分、引っ張りに対する強度ははるかに低かった。ローマン・コンクリートの骨材には細かく砕いた煉瓦などの瓦礫を主に使っていた[4]

古代ローマ帝国遺跡のコンクリートを調査した東北大学教授の久田真は、火山灰を混ぜることで緻密になり、耐久性が増したと分析している。北海道立総合研究機構北方建築総合研究所の谷口円は、劣化の原因となる二酸化炭素塩分の染み込みを、火山灰が妨ぐことで耐用年数が長くなると推測している。ローマ帝国滅亡後の中世ヨーロッパでは大型建築物は石造となり、コンクリートが再び使われるようになったのは産業革命後である[5]

ローマのパンテオンの外観。現在も鉄筋などの補強のないものとしては、世界最大のコンクリート製ドームである[6]
ローマ近郊の墓で、ローマン・コンクリートがむき出しになっている様子。現代のコンクリート建築とは対照的に、ローマではコンクリート壁をレンガなどで覆っていた。

ローマ帝国でのローマン・コンクリート (Opus caementicium) は、生石灰、ポゾラン(「ポッツオーリの土」と呼ばれる火山灰)、骨材としての軽石から作られていた。ローマ建築に広く使われて建築史上の画期をなし、石やレンガに制限されない自由で斬新な設計の建築が可能となった[7]

古代ローマ人にとって、アーチヴォールトドームの形状を作ると内部の圧縮や引っ張りを考慮しなくてはならない石やレンガと違い、素早く固まって剛体になるコンクリートは画期的な素材だった。[8]

最近の評価によると、ローマン・コンクリートは現代のポルトランドセメントを使ったコンクリートと比較しても、圧縮に対する強さは引けを取らない(約200 kg/cm2[9]。しかし、鉄筋が入っていないため、引っ張りに対する強さは遥かに低く、したがって使い方も異なる。

現代のコンクリート構造はローマン・コンクリートのそれと2つの重要な点で異なる。第一に固まる前の現代のコンクリートは流動的で均質であり、型枠に流し込むことができる。ローマン・コンクリートでは骨材として瓦礫を使うことが多く、手で積み重ねるようにして形成する必要があった。第二に現代のコンクリートは鉄筋を入れることで引っ張りに対する強さが強化されているが、ローマン・コンクリートにはそれがなく、コンクリート自体の引っ張りへの強さだけに依存していた[10]

ローマ建築ではコンクリートが多用されたため、今日も多くの建築物が残っている。ローマのカラカラ浴場などは、コンクリートの耐用寿命の長さを示している。古代ローマ人はローマ帝国の各地に同様のコンクリート建築を建設した。ローマ水道やローマの多くは、コンクリートの構造を石で覆っており、同様の技法はコンクリート製ドームのあるパンテオンでも使われている。

コンクリートの製法は約13世紀の間失われていたが、1756年イギリスの技術者ジョン・スミートンが水硬性石灰(骨材は小石やレンガの破片)を使用したコンクリートを考案した。1824年ジョセフ・アスプディンポルトランドセメントを発明し、1840年代初めには実用化している。以上が通説だが、1670年ごろ建設されたミディ運河でコンクリートが使われていることが判明している[11]

近年、環境問題が重視されてきていることから、コンクリートの成分に再生素材を使うことが多くなっている。例えば石炭を燃焼する火力発電所がだすフライアッシュなどである(フライアッシュコンクリートは水和熱の発生の緩和(そのためマスコンクリートに多く用いられる)、アルカリ骨材反応の防止効果もある。またフライアッシュを混和材として用いることはワーカビリティ向上に繋がる)。これにより、採石量を減らすとともに産業廃棄物の埋め立て量も減るという効果がある。

古代ローマや古代エジプトでも、コンクリートの素材に様々な添加物が使用されていた。彼らは火山灰を添加すると水によって固まる性質が生じることを発見した。また、ローマ人はを混ぜると固まるときにひびが入りにくくなることや、を混ぜると凍結に強くなることを知っていた[12]

現代の研究者も、コンクリートになんらかの素材を添加することで、強度や電気伝導性を高めるなど、コンクリートの性質を改善する実験をおこなっている。

戦場においてテロリストの脅威に対抗する目的でコンクリートの障壁が利用される事があり、コンクリートは現代の戦場で最も効果的な兵器であるとする意見がある[13]

材料

コンクリートの材料は、

  • セメント
  • 骨材
  • 混和材料

であり、これらを施工のしばらく前に目標とする強度や耐久性、施工性などに応じて配合する。

コンクリートの強度は「水セメント比」で決まる。セメントに対する水の比率をある程度まで減ずることで、コンクリートの強度を高めることができる[注釈 1][14]。流動性を確保しながら強度を高めるために、化学混和剤を用いて水を減らすことで高い強度を得る高強度コンクリートも多用されている。

セメント

セメントは水と反応して硬化する鉱物質の粉末である[1]

骨材

コンクリートの骨格となる砂利、砂、砕石、砕砂などの材料を骨材という[1]

骨材には砂利や砂のような天然骨材と、砕石や砕砂など人工的に加工された骨材がある[1]

また、粒径による骨材の分類では、10mmふるいを全部通過し、5mmふるいを重量で85%以上通過する骨材を細骨材といい、砂や砕砂が細骨材にあたる[1]。また、5mmふるいを重量で85%以上とどまる骨材を粗骨材といい、砂利や砕石が粗骨材にあたる[1]

混和材料

コンクリートの品質の改善や特殊な性質を持たせるためにコンクリートの打ち込み前に混合する材料を混和材料という[1]。混和材料には少量添加する「混和剤」と使用量が比較的多くコンクリートの練上がり量に算入される「混和材」がある[1]


注釈

  1. ^ セメントに対する水の比率をある程度まで減ずる事ができるという意味は、コンクリート中でセメント水和物を得るだけの水があればコンクリートは十分に固まるという意味であり、それ以上の水は流動性に確保のために加えられている。水はコンクリートに流動性を与えるのには安価で良いが、時間と共に蒸発すると固化したセメントや骨材の間に間隙を作る事になるため、強度低下の要因となる。高強度のコンクリートを得るには、セメント水和物への反応に必要な量の水だけを加えるようにして、失われる流動性を補うためにセメント粒子を分散させる減水剤と呼ばれる混和剤や、蒸発せずに流動性がありそれ自身も化学反応によって固化する、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフュームなどを加えている。こういった混和剤の使用によって最大200N/mm2程度の高強度コンクリートが作られている。
  2. ^ 締固め作業での過剰な振動は、材料の分離を招いてコンクリートの均一性が損なわれるので、避けられなければならない。
  3. ^ コールドジョイントが起きないようにするために、打ち重ねの層は2-2.5時間以上の間をあけないように計画的な作業管理が求められ、それ以上の時間間隔があく場合には「管理された打継面」にする。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m 基礎講座シリーズ コンクリートの基礎講座”. 一般財団法人建材試験センター. 2020年8月15日閲覧。
  2. ^ 一般財団法人セメント協会
  3. ^ 身体防水について(はじめに)
  4. ^ a b コンクリートの歴史
  5. ^ “コンクリ、2000年の計 火山灰で耐久力アップ”. 日本経済新聞朝刊. (2017年3月19日). http://www.nikkei.com/article/DGKKZO14203070X10C17A3MY1000/ 
  6. ^ The Roman Pantheon: The Triumph of Concrete
  7. ^ Lancaster, Lynne (2005), Concrete Vaulted Construction in Imperial Rome. Innovations in Context, Cambridge University Press, ISBN 978-0-511-16068-4
  8. ^ D.S. Robertson: Greek and Roman Architecture, Cambridge, 1969, p. 233
  9. ^ Henry Cowan: The Masterbuilders, New York 1977, p. 56, ISBN 978-0-471-02740-9
  10. ^ Robert Mark, Paul Hutchinson: "On the Structure of the Roman Pantheon", Art Bulletin, Vol. 68, No. 1 (1986), p. 26, fn. 5
  11. ^ https://web.archive.org/web/20110221204004/http://www.allacademic.com/meta/p_mla_apa_research_citation/0/2/0/1/2/p20122_index.html
  12. ^ http://www.djc.com/special/concrete/10003364.htm
  13. ^ 現代の戦場で最も効果的な兵器は「コンクリート」”. GIGAZINE (2016年11月17日). 2017年2月13日閲覧。
  14. ^ a b c d e f 土木学会関西支部編、『コンクリートなんでも小事典』、講談社、2008年12月20日第1刷発行、ISBN 9784062576246


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