クラゲ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/10 00:08 UTC 版)
名称と対象
クラゲといわれる動物は刺胞動物門のヒドロ虫綱、十文字クラゲ綱、箱虫綱、鉢虫綱 にわたって存在する。広義には有櫛動物門(クシクラゲ)も含まれる。有櫛動物は、かつては腔腸動物として刺胞動物と一緒にまとめられていたが、刺胞を持たず雌雄同体である刺胞動物とは異なる水管系を持つなど全く体制が異なることから、20世紀初頭には別の門に分けられた。
刺胞動物、有櫛動物以外にも、クラゲの名前を持つ生物が複数の門にわたって存在する。軟体動物門のゾウクラゲは刺胞動物と同様、ゼラチン質で浮遊生活である。キクラゲ、ツチクラゲは菌類、イシクラゲは藻類である。
また、クラゲは刺胞動物における基本的体制の名としても使われる。対になる語はポリプである。これについてはクラゲ (体制)を参照。
基本的特徴
クラゲは、通常は浮遊生活をする刺胞動物である。体はゼラチン質で柔らかく、透明。体全体は、多くのものでは傘のような形をしている。多くの場合、傘の下面の中心部に口がある。ヒドロクラゲでは傘から柄が伸びてその先に口があるものや、口の周囲に触手が発達するものもある。鉢クラゲの旗口クラゲ類、根口クラゲ類では、口の縁が長く伸びて口腕となる。根口クラゲでは口腕が複雑化して口は口腕の先端部に小さな吸口として開口するだけで、中央の口は閉じてしまうものもある。肛門はない。多くの種類では傘の縁に触手がある。また、ヒドロクラゲ類では触手の付け根に眼点を持つものがあるほか、傘の縁に平衡胞を持つものもある。箱虫類、鉢クラゲ類では、傘の縁に感覚器があるが、平衡胞のみの場合と、眼点を有する場合がある。箱虫類では発達した眼を持つ。
十文字クラゲ綱のものは、構造的にはクラゲに近いので、クラゲと呼ばれるが、口の反対側に短い柄があって、これによって海藻などに付着して生活している。形態的に大きく異なるのが管クラゲ類で、多数の個体が群体を形成し、全体では傘の形には似てもにつかないものが多々ある。巨大になるものでは、長さが10mを越えるようなものも知られる。
基本的に雌雄異体である。多くのクラゲでは、卵から幼生(プラヌラ)が生まれると、幼生は基質上に定着してポリプというイソギンチャクのようなものになる。新しいクラゲは冬季になるとポリプが御椀を重ねたような「ストロビラ」になり出芽、エフィラ幼生となって泳ぎ出す。また変態、ストロビレーションなどによっても生じる。ポリプは無性生殖によって増殖するので、これを無性世代、クラゲを有性世代と見なし、世代交代をおこなうものという場合がある。カラカサクラゲやオキクラゲはプラヌラからポリプにならずそのままエフィラとなる。
ヒドロ虫綱のクラゲでは、ポリプ(ヒドロ虫)がよく発達し、走根 (stolon、ストロン)を伸ばし、 群体となるものがあり(走根の先端からポリプを作る出芽、走根が基盤に付着し条件が良ければポリプとなるポドシストにより増える[1])、その場合のクラゲは特に分化した生殖個虫から作られるものもある。全くポリプを形成しないクラゲもある。
生活
クラゲは一般にはプランクトンとして生活している。全く遊泳能力がないわけではなく、多くのクラゲは傘周囲に環状筋があって、傘を開いたり閉じたりすることで、口が開いているのと反対方向に進行することができる。しかし、常時泳ぎ続けているものは少なく、多くは時折泳いで水中を漂っている。水槽中で飼育する場合、水流を作ってやらないと、次第に水底に沈む。沈みかけると泳いで浮き上がってくるが、これを繰り返しながら、次第に弱ってしまい、死に至ることもある。
ヒドロ虫綱のカツオノエボシやギンカクラゲなどは気体を含んだ浮きを持っていて、水面から若干上に出て浮かんでいるが、これは例外的なものである。逆に、沈んで生活するものに、サカサクラゲがある。名前の通りに、傘面を下にして水底に沈んでいる。他に、先に述べたように十文字クラゲ綱は固着して生活している。他にも、固着ではないまでも、海藻の表面を這うように生活するクラゲなどもある。
触手などにある刺胞には、獲物に注入する毒をもっている。これを用いて動物性の餌を採る。一部に共生藻を持ち、藻類の光合成産物をエネルギー源として利用するものがある。
- 捕食者
クラゲの捕食者については、従来、クラゲは水分が多く栄養価が低いため捕食されることはまれと考えられていた[2]。しかし、2017年に米生態学会の学術誌に掲載された国際研究グループの南極での研究報告によるとクラゲはペンギンに頻繁に捕食されていることが分かった[2]。
ウミガメは、成長すると大抵は海藻を食べるが2-5歳までは雑食で何でも食べる。好物の草が食べられない場合はクラゲの足を食べることもある[3]。
カンテンダコは捕食後も、クラゲの足を防御用の武器とする様子が確認される[4]。
そのほか、マンボウ[5]
ユウレイクラゲは、ほかのクラゲを食べる[6]。
- ^ “コース: クラゲ”. repun-app.fish.hokudai.ac.jp. 北海道大学. 2024年3月16日閲覧。
- ^ a b “ペンギン、クラゲが好物=「捕食まれ」見方覆す-極地研”. 時事通信. (2017年11月13日). オリジナルの2017年11月13日時点におけるアーカイブ。 2017年11月13日閲覧。
- ^ 【動画】ウミガメの子、毒もつクラゲを食べる ナショナルジオグラフィック
- ^ 【動画】深海タコ、食べたクラゲの触手を武器に? ナショナルジオグラフィック
- ^ クラゲを食べるマンボウにオオサンショウウオまで!水中の不思議で貴重な映像 TBS
- ^ クラゲがクラゲを食べる! 海響館
- ^ 五味文彦 『中世の日本』 財団法人放送大学教育振興会 第2刷1999年(1刷98年) ISBN 4-595-55432-X p.63.
- ^ 戦後「食品3大発明」の“カニカマ”は人工クラゲの失敗から生まれた 日経ビジネス
- ^ Production method for artificial jellyfish
- ^ Kui You; Caihua Ma; Huiwang Gao; Fengqi Li; Meizhao Zhang; Yantao Qiu; Bo Wang (2007). “Research on the jellyfish (Rhopilema esculentum Kishinouye) and associated aquaculture techniques in China: current status”. Aquaculture International 15 (6): 479–488. doi:10.1007/s10499-007-9114-1.
- ^ Y-H. Peggy Hsieh; Fui-Ming Leong; Jack Rudloe (2001). “Jellyfish as food”. Hydrobiologia 451 (1–3): 11–17. doi:10.1023/A:1011875720415.
- ^ 大西淳子 (2015年8月11日). “海でクラゲに刺されると納豆アレルギーに!?海や山のレジャーがきっかけになる「遅発性アナフィラキシー」の怖さ【その2】”. 日経GOODY. 2022年2月23日閲覧。
- ^ a b フリーランス雑学ライダーズ編『あて字のおもしろ雑学』 p.52 1988年 永岡書店
- ^ “解釈は無限大!枕草子「中納言参りたまひて」の扇の骨は、結局なんの骨だった? | 和樂web 日本文化の入り口マガジン”. 和樂web 日本文化の入り口マガジン. 小学館. 2023年2月3日閲覧。
- ^ 第2版, 日本大百科全書(ニッポニカ),ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,精選版 日本国語大辞典,世界大百科事典. “猿の生肝(さるのいきぎも)とは? 意味や使い方”. コトバンク. DIGITALIO. 2023年2月3日閲覧。
- ^ 『古事記』鈴木種次郎編 三教書院、国立国会図書館デジタルコレクション
- ^ a b 館長 安部義孝 (2006年2月18日). “館長からのメッセージ 第25号「銃眼のエフィラ」”. アクアマリンふくしま. 2012年2月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月13日閲覧。
- ^ 2012年3月22日付ギネス社認定数(展示種類数世界一)
- ^ シリコンとネズミの心臓組織で作った人工クラゲ AFP通信
- ^ Artificial jellyfish built from rat cells nature
クラゲと同じ種類の言葉
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