オンド・マルトノ オンド・マルトノを用いる音楽作品

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オンド・マルトノ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/13 16:19 UTC 版)

オンド・マルトノを用いる音楽作品

メシアン「トゥランガリーラ交響曲」

この楽器が主役として出てくる代表的な曲として、まずオリヴィエ・メシアンの「トゥランガリーラ交響曲」が挙げられる。オンド・マルトノを用いる曲としては最も演奏頻度の高い曲であり、またピアノと並んでソロ楽器として扱われるため聴衆に与える楽器の印象は強い。

この曲では、完全なボタン配分での音色指定に加え、その音色が持つ特徴を楽器名などに喩えて書き添えている。第2楽章や第4楽章では特に、同じフレーズを繰り返す箇所でも微妙に音色指定を変えている。また特に第3楽章において、グリッサンド表現に弦楽器を含む、あるいはそれと交替させるオーケストレーションも効果的に用いられている。

第5楽章および第10楽章の終盤には、オンド・マルトノのパートにピアニッシモから始まってフォルテッシモに至る長い伸音でのクレッシェンドがあるが、この音の立ち上がりを柔らかくし、なおかつヴィブラートは鍵盤よりもリボンの方が効果的にかかるため、特にグリッサンドやポルタメントを伴わないにもかかわらずリボン奏法の指定がある。

前述のトレモロ奏法は、第8楽章(「愛の展開」という副題が付いており、楽章全体が全曲の展開部と位置づけられている)において、「花の主題」が再現される際にクラリネットの音色補佐として用いられているが、第1楽章の提示部および第4楽章での同再現部にはクラリネットしか出てこないため、ここでのオンド・マルトノを伴う音色的展開は効果的である。

これらオーケストラの楽器の音色と混ぜる従来の管弦楽法的な使い方のほか、低音部でのグリッサンドなど、効果音として打楽器のようにオーケストラを補助する音色としても用いられる。

メシアンの曲としては他にも、初期の組曲「美しき水の祭典」(6台のオンド・マルトノのための)(後にいくつかの楽章が「世の終わりのための四重奏曲」に転用された。詳しくはメシアンの項を参照)、「神の現存の三つの小典礼」、歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」などでもオンド・マルトノを用いている。

ジョリヴェ「オンド・マルトノ協奏曲」

アンドレ・ジョリヴェの「オンド・マルトノ協奏曲」は、メシアンのトゥランガリーラ交響曲と並んでこの楽器の初期である1940年代にオンド・マルトノの可能性を探求した曲として重要である。しかしトゥランガリーラ交響曲に比べ、演奏頻度は低い。

この曲ではオンド・マルトノは精霊を表すものと作曲者によって定義されており、実質の存在であるその他の楽器によるオーケストラと対極をなす存在である。つまり、この曲においてオンド・マルトノは、従来のあらゆる楽器を超える存在であることを念頭に書かれている。その考えは詩的なアイデアだけにとどまらず、楽譜のあらゆる場所で読み取れる。

例えば冒頭のオンド・マルトノのソロは、低音域のF2から始まってC7に至るまでの長くゆっくりのメロディを、一息でしかも全オクターヴにおいて均等な音質で演奏している。このような楽器はそれまで弦楽器も管楽器も存在せず、ピアノも減衰音である以上アーティキュレーションは異なる。オルガンが唯一の例外だが、オンド・マルトノはそれよりずっと繊細なアーティキュレーションやヴィブラートを伴って演奏できる。第1楽章のカデンツァでは、単音しか発し得ないオンド・マルトノに、トレモロによる擬似和音の効果を求めている。しかもその和音は複数の声部に分けてポリフォニックに書かれており、バッハ以来一つの楽器でポリフォニーを求める伝統の、音楽的な表現の豊かさも忘れていない。(この冒頭とカデンツァの二つの譜例は、伊福部昭の著書「管絃楽法」にも記載されている。)第1楽章終盤には、オンド・マルトノがリボン奏法でオクターヴを昇るのに合わせてハープのグリッサンドも重ねられており、管弦楽法としてとても効果的に響く。

第2楽章では変拍子スケルツォに乗せて、楽器の様々な可能性が試みられる。音色の極端な変化、鍵盤奏法とリボン奏法の瞬間的な交替、超高速グリッサンド、スタッカートなどアーティキュレーションの変化と、それらの各音色にあわせてシロフォンピッコロ、あるいはサクソフォンとの交替によるオーケストレーションの可能性が試されている。クライマックスでは6オクターヴもの異国的な音階を鍵盤上で駆け上がるが、これはジョリヴェの前作である「リノスの歌」のフルートによる5オクターヴの上昇を踏襲している。第3楽章ではリボン奏法とパルム・スピーカーの効果を中心とした、緩徐楽章でのカンタービレであり、第1・第2楽章のヴィルトゥオージティに対して、オンド・マルトノの音色そのものを聴き込む曲となっている(この急・急・緩という楽章構成〔つまり、緩徐楽章が最後に来る〕は、協奏曲としては異例である)。

その他の作曲家

アルテュール・オネゲル作曲の劇的オラトリオ「火刑台上のジャンヌ・ダルク」でもオンド・マルトノが効果的に使われている。

マルセル・ランドフスキも「オンド・マルトノ協奏曲」を作曲しており、オンド・マルトノ奏者にとって欠かせないレパートリーである。

トリスタン・ミュライユの「空間の流れ」(オンド・マルトノとオーケストラのための)では、オンド・マルトノをシンセサイザーに接続し、オンド・マルトノが本来持ち得ない合成音色を要求している。これによって微分音を含む和音の同時演奏が可能になり、ミュライユの音楽書法であるスペクトル楽派が重視する合成された高次倍音の響きが得られる。同じくミュライユの作品『Tigre de verre ガラスの虎』は、ジャンヌ・ロリオの指導書に譜例が掲載されている[6]

西村朗の「アストラル協奏曲・光の鏡」(オンド・マルトノとオーケストラのための)は、打楽器奏者が水を張ったワイングラスの淵をぬれた指でこすって演奏し、オンド・マルトノとよく似た音を出す事によってこの二つの音色を混ぜ合わせている。このワイングラスの演奏原理はグラスハーモニカと同様だが、グラスハーモニカの楽器そのものは求められていない。これはグラスハーモニカを長期演奏すると神経障害が発生するという俗説が広く知られプロのグラスハーモニカ奏者が世界的にほとんど存在しないのと、この曲で求められるワイングラスの響きが数音に限られていることによる。

その他、下記のジャンヌ・ロリオによるオンド・マルトノの奏法解説書には、第2巻末に約300曲、第3巻は全巻にわたってその倍以上、ソロ曲あるいは室内楽から管弦楽やオペラに至るまで、オンド・マルトノを用いる様々なレパートリーが紹介されている。

映画、テレビなどの音楽

映画音楽での使用例としては、次の作品が挙げられる。

また、テレビ番組の音楽としては以下が例として挙げられる。

上記いずれもテーマ音楽作曲は池辺晋一郎
上記いずれもテーマ音楽作曲はバリー・グレイ。

アニメ、ゲームの例は以下のとおり。

上記いずれも原田節が演奏を担当している。

  1. ^ Technique de l'onde électronique, Jeanne Loriod, ed. Alphone Leduc, préface p. VII
  2. ^ Jeanne Loriod préface p. VII-VIII
  3. ^ Jeanne Loriod p. 7-8
  4. ^ Jeanne Loriod p. 62-63
  5. ^ Jeanne Loriod préface p. XVI-XVII
  6. ^ Jeanne Loriod p. 96
  7. ^ 2009年11月13日 (金)教育テレビ 特集『N響アワー"大河の調べ とわに"』 ゲストにあの子も登場!”. NHK-FMブログ. 2015年3月27日閲覧。
  8. ^ アニメーション「びんちょうタン」サウンドトラック”. オンド・マルトノ友の会 BLOG. 2015年3月27日閲覧。
  9. ^ l'Ondéa La renaissance des Ondes Martenot!”. cslevine.com. 2015年3月27日閲覧。
  10. ^ new_ondes_martenot
  11. ^ ondesmusicales


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