オンド・マルトノ 演奏家

オンド・マルトノ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/13 16:19 UTC 版)

演奏家

オンド・マルトノの奏者のことをオンディスト ondisteと呼ぶ。

代表的な演奏家

  • ジネット・マルトノ:マルトノの妹。
  • ジャンヌ・ロリオ:トゥーランガリラ交響曲のスペシャリストとして知られる。姉はピアニストでメシアン夫人であったイヴォンヌ・ロリオ。これまでの同交響曲の録音の多くは、ロリオ姉妹がソリストをつとめたものであった。
  • トリスタン・ミュライユ:作曲家としても有名。
  • 日本では本荘玲子原田節(ハラダタカシ)、大井浩明、長谷綾子、市橋若菜、久保智美などが知られている。

パリ音楽院では1947年よりオンド・マルトノ科が開設され、現在も若い演奏家たちを育てている。

日本との関係

オンド・マルトノ発明者のモーリス・マルトノは1931年2月に来日し(下記参考文献 Jean Laurendeau "Maurice Martenot, luthier de l'électronique" による)、この楽器を初めて日本に紹介した。神戸で楽器運搬の際、駅長に念を押して壊れ物扱いでの運搬を頼んだところ、運搬先で開梱したら調弦が全く狂わず正確に届いたことに感心したと、マルトノは日記に書き記している。また宮中にも招かれ、皇族や貴族の御前で演奏したほか、皇女の一人が強く興味を示してオンド・マルトノを試演したとも書かれている。

このとき日本へ持っていった楽器は、第3世代かもしくは開発途中で公表されていなかった第4世代のいずれかと思われる。日本国内の文献によると、当時の日本の新聞では「音波ピアノ」と紹介されており、何らかの形で鍵盤に似た構造が備え付けられていたと想像できる。

戦後では、小澤征爾1962年7月4日にメシアンのトゥランガリーラ交響曲を日本初演した演奏会が、日本の聴衆にこの楽器の大きな印象を与えた最初の機会の一つである。詳しくは小澤征爾の項を参照。

同じくこの楽器にとって重要レパートリーであるはずのジョリヴェのオンド・マルトノ協奏曲は、それよりずっと遅れて1997年原田節独奏、大野和士指揮東京フィルハーモニー交響楽団によって日本初演された。

現在日本にはオンド・マルトノ友の会というオンド・マルトノに関する組織がある。日本人の演奏家も多い。

後継楽器

現在オンド・マルトノは生産技術が途絶えており、モーリス・マルトノ時代と同じ複製品を作成することはきわめて困難となっている。代わっていくつかの機能を備えた新しい楽器が開発されつづけている。

オンデア

オンデアは、オンド・マルトノを製作したアトリエ・モーリス・マルトノ(現アトリエ・ジャン=ルイ・マルトノ)とは別の会社が製作している。オンド・マルトノは商標登録されているため、新しい呼び名としてオンデアが用いられている[9]

オンド・マルトノとの相違点

  • リボンと呼ばずバーグ Bague (指輪)と呼ぶ。略号もBと記されている。
  • トゥッシュ、鍵盤、リボン(バーグ)のガイド溝が木製・木目調。(黒鍵は黒く塗られている)
  • 鍵盤とリボン(バーグ)のガイド溝の間が広い。
  • 指輪が樹脂製で、弾力を利用して挟む形になっている。ただしこの指輪は将来発展の余地があるとされる。
  • 鍵盤を振動させることによるヴィブラートの幅を、機械的および電子的に調節できる。機械的な変化は鍵盤の振動幅の感覚が実際に減り、電子的な変化は鍵盤の振動の感覚は同じだが効果が大きくかかる。振幅は最大で1オクターブまで拡張できる。
  • 基本的な音色がオンド・マルトノとは大きく異なる。DSPに特徴的な固い音色を基本とする。ただしフィルターによってある程度音色の固さを柔らげる事は可能で、これによってオンド・マルトノに近い音が出る。このフィルターはローパス(オンド・マルトノ風になる)、ニュートラル(フィルター無し)、ハイパスに分かれており、レバーで段階的に調節可能。
  • D1スピーカーの外見は大きく異なる。反響盤が斜めについており、これによりコンサート会場では広い幅に渡って音が飛ぶことを意図して設計されている。
  • トリル用ボタンが拡張されており、段階的にオクターブ超の振幅を伴う跳躍が可能。これはオンド・マルトノ第6世代以前のトリルボタンを模しているものの、その機能は独自である。
  • オクターブ切り替えボタンが鍵盤の下だけでなく操作盤にもついている。これを組み合わせることによって2オクターブ上げることも可能。トリル用ボタンと組み合わせれば3オクターブまで上昇する。ただし実際に出る最高音はB9までで、C10ないしC#10を出そうとすると無音になる。
  • クリック音出力機能のスイッチが鍵盤の左脇ではなく操作盤についている。
  • 各スピーカー出力別の音量レバーがついている。
  • 操作盤の蓋のねじを開けることにより、以下の調節が可能。
    • 各音色のスイッチ別にネジによるチップ単位での音色調節
    • トゥッシュの押し込み具合の柔らかさ
  • 背面に同軸ケーブル出力を備える。これに外部機器を組み合わせることによりMIDI出力が可能。
  • ヘッドフォンおよび外部スピーカー直接出力を備える。DIN-4Pプラグが必要だがヘッドフォン用にジャック・メスの変換ケーブルがオプションで付く。

オンド・ミュジカル・バイ・ディアスタイン

ジャン・ルプ・ディアスタインは、1988年のマルトノの死による操業停止後23年ぶりにオンド・マルトノを蘇らせた。第7世代マルトノを参照はしているが、様々なアップデートがなされている[10]

アナログ・コントローラー・フレンチ・コネクション

イギリス アナログシステム社が開発した、オンド・マルトノを模して作られたアナログ・コントローラー。アナログシンセサイザーに接続して使う。これは音程と音量の数値をアナログ電圧で出力できるという利点があるが、鍵盤がオンド・マルトノの教育用機種と同様の4オクターブしかなく、またその鍵盤によるヴィブラートができず、トゥッシュの押し込み具合やリボンの感覚もオンド・マルトノ実機とは異なるなど、代替機として使用する際の問題も抱えている。しかし、現在入手できる楽器でオンド・マルトノ的な表現をする際には、現在のシンセサイザーが採用するMIDIでは広範囲にわたる音程のスムースな変化は実現不可能なため、選択肢のひとつとして貴重な存在である。

オンドモ

日本の製作者が4オクターブタイプの開発に成功[11]している。詳しくはondomo.netを参照のこと。


  1. ^ Technique de l'onde électronique, Jeanne Loriod, ed. Alphone Leduc, préface p. VII
  2. ^ Jeanne Loriod préface p. VII-VIII
  3. ^ Jeanne Loriod p. 7-8
  4. ^ Jeanne Loriod p. 62-63
  5. ^ Jeanne Loriod préface p. XVI-XVII
  6. ^ Jeanne Loriod p. 96
  7. ^ 2009年11月13日 (金)教育テレビ 特集『N響アワー"大河の調べ とわに"』 ゲストにあの子も登場!”. NHK-FMブログ. 2015年3月27日閲覧。
  8. ^ アニメーション「びんちょうタン」サウンドトラック”. オンド・マルトノ友の会 BLOG. 2015年3月27日閲覧。
  9. ^ l'Ondéa La renaissance des Ondes Martenot!”. cslevine.com. 2015年3月27日閲覧。
  10. ^ new_ondes_martenot
  11. ^ ondesmusicales






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