オンド・マルトノ 歴史

オンド・マルトノ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/13 16:19 UTC 版)

歴史

以下の分類はTechnique de l'onde électronique ジャンヌ・ロリオ著に基づくものである[2]

最初オンド・ミュジカル Ondes musicales (音楽電波)と言う名前で発表されたが、後に多くの同様の仕組みの電子楽器が現れたため、発明者の名を取ってオンド・マルトノと呼ばれるようになった。

一般にオンド・マルトノと呼ばれる楽器の形が整ったのは第5世代からで、オンド・マルトノのために書かれたほとんどの作品は第5世代以降の形において初めて演奏可能である。

第1世代(1918年)

第1世代はテレミン(テルミン)を真似てほぼ全く同じ原理のものが作られた。これはもちろんモーリス・マルトノのオリジナルではなく単にテレミンの複製に過ぎないので、オンド・マルトノとは見なされない。詳しくはテレミンの項を参照。

第一次世界大戦において通信技師を務め、三極真空管の発する振動原理に対し興味を持っていたマルトノが、テレミンの構造を伝え聞いて作った楽器である。

第2世代(1928年)

第1世代がテレミンとほぼ同型で、つまりテレミンと同様に空間上の手の位置で音程を変えていたのに対し、第2世代は紐の張力により音程を調節することになった。これがリボンの原型にあたる。まだ鍵盤はなく、楽器本体はただの箱型である。楽器に対しては距離をとり、一歩ほど引いた位置に立って紐を構えた。これはテレミンの演奏における姿勢を踏襲している。そして楽器本体から離れたところにばねの張力によるスイッチを置き、左手で音量を調節した。これがトゥッシュの原型になる。

この世代をもって初めてオンド・マルトノが発明されたことになる。

この楽器を用いて、1928年秋にパリのオペラ座で披露演奏会が行われた。

第3世代(1931年)

第3世代は楽器前面の木枠に鍵盤を模した絵が書かれたが、これは模造品であり、鍵盤としての機能は果たさない。

第4世代(1932年)

第4世代は鍵盤が演奏可能に改良されたが、リボンは相変わらず離れた位置から引っ張って操作するので、鍵盤とリボンを同時に切り替えて演奏することはいまだに全く実用的ではなかった。

伊福部昭の著書「管絃楽法」のオンド・マルトノの項目では、楽器構造の説明に dummy keyboard と書かれているが、この記述はこの第4世代楽器によるものと思われる。また同じ本ではリボン奏法に関して

実際の演奏にあつては、このRingの左右移動は右手の担当する処であるが、Martenotにあつては、此の奏法の他に、単にWW1に連る紐を前後に引くもの、叉、鍵盤に手を触れることに依つても発音し得る様に作られたもの等がある。此の様に右手には三種の操作法がある。

と書かれているが(下線部編集者加筆)、この前後に引く紐は第2世代から第4世代まで用いられた。なお下記の第5世代からはこの紐(リボン)を前後に引く奏法は採用されず、現在の操作法はリボンを平行に操る奏法と鍵盤奏法の2種類である。

第5世代(1935年)

これ以降が現行の楽器である。現在我々が目にするオンド・マルトノの主たる外見は、この第5世代で決定された。構造に関しては次章を参照。

オンド・マルトノのために書かれたオリジナル曲は、第2世代のお披露目演奏会に用いられた曲など一部を除いて、ほとんど全てがこの世代以降のモデルを対象としている。

また、樹脂製の細長い板を曲げて、電波を思わせる特徴的なデザインの譜面台も、この第5世代から採用されている。

第6世代(1950年)

後述のメタリック・スピーカーとパルム・スピーカーが初めて標準で付属した。

第7世代(1974年)

発音原理として真空管の代わりに集積回路が採用された。

操作盤がより視覚的に音色を把握できるように改良された。また音色にピンクノイズが追加された。

リボンがリボン製からワイヤー製に変更された(しかし奏法に関しては引き続きリボンと呼ぶ)。

第8世代(1980年代)

アトリエ・モーリス・マルトノが開発した最終モデル。

倍音に基づく三和音を同時演奏可能。これはオルガンのストップの構造を模している。

これ以降アトリエ・モーリス・マルトノでは公式な後継機種を発表していない。しかし別の会社が「オンデア」と呼ばれるさらに発展した後継機種を開発している。下記詳述。


  1. ^ Technique de l'onde électronique, Jeanne Loriod, ed. Alphone Leduc, préface p. VII
  2. ^ Jeanne Loriod préface p. VII-VIII
  3. ^ Jeanne Loriod p. 7-8
  4. ^ Jeanne Loriod p. 62-63
  5. ^ Jeanne Loriod préface p. XVI-XVII
  6. ^ Jeanne Loriod p. 96
  7. ^ 2009年11月13日 (金)教育テレビ 特集『N響アワー"大河の調べ とわに"』 ゲストにあの子も登場!”. NHK-FMブログ. 2015年3月27日閲覧。
  8. ^ アニメーション「びんちょうタン」サウンドトラック”. オンド・マルトノ友の会 BLOG. 2015年3月27日閲覧。
  9. ^ l'Ondéa La renaissance des Ondes Martenot!”. cslevine.com. 2015年3月27日閲覧。
  10. ^ new_ondes_martenot
  11. ^ ondesmusicales






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