オカヒジキ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/08 23:45 UTC 版)
栽培
オカヒジキを野菜として栽培しているのは世界でも日本だけで[7]、しばしば市場にも出回っている[8]。日本以外の国ではオカヒジキを救荒的な野菜として利用した記録はあるものの、栽培化の例はない[7]。日本における栽培化の歴史は、江戸時代にさかのぼると考えられており、水運により最上川で内陸に持ち込まれて現在の山形県南陽市で始まったとされている[7]。長らくは山形県の特産野菜として栽培され、県内での生産と消費が主だったが、県外の大都市へ出荷されるようになると、他府県でも栽培が始められた[13]。
生産量は地域別では東北地方(青森県・宮城県・秋田県・山形県)が最大で、次いで関東・中部地方(群馬県・埼玉県・長野県・静岡県)、四国(高知県)と続く[12]。県別生産量は山形県(南陽市、山形市など)で60%以上を占める[12]。露地栽培、ハウス栽培、高冷地による雨よけ栽培によって一年中出荷が行われているが、山形県ではハウス栽培が多く全国シェアの47%を占め、長野県では夏の高温期に露地での生産量が多く全国シェアの30%に達する[12]。野菜としての良品を栽培する適地は、肥沃であまり乾燥しない砂壌土で、土壌酸度が pH 6.5 - 8.2 で生育良好となる[12]。
露地栽培
播種の1週間ほど前に、圃場に石灰をまいて栽培に適する土壌酸度 pH 6 - 8 に調整し、元肥を施して土壌をよく撹拌する[14]。ただし、オカヒジキは好窒素植物とされており、窒素の過剰施用は減収となり、幼苗期の多肥は生育を遅らせることが知られている[14]。種子は休眠期間があり、これを打破するため浸水した種子を4 - 5度の冷蔵庫で10日ほど低温処理すると、発芽率向上に有効である[14]。畑は畝を作り、種をまいたら浅く覆土する程度にする[14]。露地栽培における発芽所要日数は、気温などの条件にもよるが、おおよそ10 - 15日ほどである[15]。発芽後間もないオカヒジキは生長が遅く、他の雑草に負けやすいため、本葉2 - 3枚ぐらいになったときに除草を要する[15]。また育苗床で30 - 35日間は苗として育成した後、畝に株間45 cmに定植する方法もある[15]。
生長期は特に追肥を必要としないが、刈り取りで収穫し再生を行う場合は追肥を行う[15]。播種後1か月後ぐらいで本葉が6枚、草丈が10 - 15 cmに達したとき、やわらかい茎葉の部分を10 cmぐらい刈り取り切り収穫する[15]。1回目の刈り取り後、側枝から再生した茎葉が伸びてくるので、やわらかい茎葉を1 - 2回収穫する[15]。
病虫害は、高温多雨期に根際から枯死する立ち枯れ症状があらわれたり、あるいはべと病が発生することがある[15]。これらを予防するために、トンネル栽培かハウス栽培によって雨除けすると効果が大きい[15]。順調な生育をさせないとアブラムシが発生し、薬剤による防除が必要となる[15]。
ハウス栽培
ハウス栽培は、夏は高冷地の雨除け栽培、1 - 3月は促成栽培、3 - 4月は半促成栽培というように作型の分化が行われており、ほぼ一年中オカヒジキが市場に出回るようになっている[15]。ハウス栽培の主産地は山形県で、平地だけでなく高地の低温も利用している[15]。圃場の準備や除草、収穫については、露地栽培に準じて行われる[16]。露地と異なる要点は、温度管理と光中断を行って管理することである[16]。光中断とは、短日期の真夜中に1時間程度オカヒジキに光を当てるように育成することであり、ハウス内照度が10ルクス (lx) 以上になるように電灯器具を設置して行われる[15]。光中断によってオカヒジキの生育段階における花芽分化を遅らせ、茎葉の硬化を抑制する目的でもあることから、発芽直後から行うのが良いとされる[16]。またハウス栽培では、連作と高温多湿で立ち枯れ病が多発しやすくなる[16]。
雨よけ栽培では、夏から秋にかけて種をまき、栽培が短日期であることから光中断が必要である[15]。促成栽培は11月中旬 - 12月下旬に種をまき、加温と光中断を行って育成する[15]。半促成栽培は、2月中旬に種をまき、無加温で育成する[15]。促成栽培や半促成栽培におけるハウス内の温度管理は、夜間を7度前後、日中は25 - 30度を保つようにして、病害が多発しないように換気に留意する[16]。
注釈
出典
- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Salsola komarovii Iljin”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年4月17日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Salsola soda auct. non L.”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年4月17日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Kali komarovii (Iljin) Akhani et Roalson”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2022年4月17日閲覧。
- ^ a b c d e f 主婦の友社編 2011, p. 234.
- ^ a b c d e f g 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 15.
- ^ a b c d e 貝津好孝 1995, p. 206.
- ^ a b c d e f g h i j k l 農文協編 2004, p. 43.
- ^ a b c d e f g h i j 高橋秀男監修 学習研究社編 2003, p. 86.
- ^ a b c d e f g h 農文協編 2004, p. 44.
- ^ a b c d e f 金田初代 2010, p. 178.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 農文協編 2004, p. 45.
- ^ a b c d e f 農文協編 2004, p. 46.
- ^ 農文協編 2004, pp. 43, 46.
- ^ a b c d 農文協編 2004, p. 47.
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 農文協編 2004, p. 48.
- ^ a b c d e 農文協編 2004, p. 49.
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