オイラー法 オイラー法の概要

オイラー法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/14 02:53 UTC 版)

定義と公式の導出

常微分方程式とその初期値問題を次のように定める。

複素平面でzがピンク色の円板内部領域はオイラー法の絶対安定性領域である。

数値解析における収束性は、おおよそ刻み幅 h を十分に小さくすると、方法の局所誤差(の絶対値)も小さくなることを意味する。時間 tn での局所誤差を とする。数学的に、収束性は

を意味する。原則として、収束しない、また収束性を証明できない方法は絶対に使ってはいけない[要出典]。そのため、オイラー法の収束性を示す必要がある。

y(tn + h) のテイラー展開からオイラー法の公式を引いて両辺の絶対値を取ると

となる。解の滑らかさの仮設よりリプシッツ連続を用いて、不等式

を得る。ここでの のリプシッツ定数である。三角不等式より上記の両式を合わせて、

という漸化式になる。C は定数であり、h2 の係数の絶対値と考えても大差はない。 を使ってこの漸化式を解くと上界

がある(帰納法による証明も可能である)。ここで、Cmax も定数である。固定された時間 での局所誤差の上界はゆえに

(ここで不等式 を使った)。上記式から h0 の極限で局所誤差も 0 に収束する。すなわち、オイラー法は収束である。 そのうえ、ex のテイラー展開を用いて、 であることも明らかになる。したがって、オイラー法は1次方法となる。

収束性を示したことで、方法が使えるようになる。しかし、収束性が保証できるのは、h十分小さい場合、近似解が厳密解に収束することのみである。一体 h をどれだけ小さくすれば正しい近似解を得られるのかは一切伝えていない。例えば h10−12 以下にしないと近似解が厳密解に近付かない場合、最低限でも 1012 時間での解を計算しなければならないので効率が大きく下がる。そのため、もし h に関係なく近似解が思わぬ行動を取れないことを示せるなら、h を自由に設定できてそのような心配はいらなくなる。上述の条件が満たされる方法は、おおよそ数値的に安定(正しくいうとA-安定)である。厳密な定義や他の安定性(L-安定、零点安定他)については、硬い方程式を参照。

線形微分方程式をオイラー法により求める場合 を複素平面にとったとき図の円より外側の領域で数値解が不安定となる。

図の領域は線形安定領域と呼ばれる。[1] 例えば の場合では、時間の刻み幅ではとなる。

よってこの では安定領域より外側の領域のためオイラー法の数値解は不安定となる。


  1. ^ Butcher 2003, p. 70; Iserles 1996, p. 57
  2. ^ Iserles 2008, Section 1.3
  3. ^ Cleve Moler. “Ordinary Differential Equation Solvers ODE23 and ODE45”. 2016年12月16日閲覧。


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