エイリアン (映画)
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配役
キャスティングの選考はアメリカで行われ、スコットとキャロルが面接した。通常このようなSF映画にはB級俳優を配するのが普通であったが、スコットは個性的な役者を集めることで一段高い演出を目指した[30]。SF映画に出ることを懐疑的に思った俳優を引き止めるようなことはせず、ウィリアム・ハート、ジョン・ハード、サム・エリオット、デビッド・ワーナー、ロディ・マクドウォール、ブライアン・デネヒーは出演を見合わせた。シャセットの意向で、多国籍的な雰囲気を出すため配役のうち2人(ハートとホルム)はイギリス人となった[31]。
- リプリー
- 彼女の役の選考は難航した。キャスティングディレクターのマリー・ゴールドバーグは候補として二人を挙げていた。一人目がメリル・ストリープである。しかし彼女は婚約者のジョン・カザールを亡くしたばかりであり、キャロルは出演依頼を断念した。
- もう一人の候補がシガニー・ウィーバーである。彼女は『アニー・ホール』やイスラエルのドラマ『Madman』に端役で出演した程度で、当時ほぼ無名であった。シェイクスピアを目標にブロードウェイで活動し、マイク・ニコルズやウディ・アレンとの仕事を望んでいた彼女にとって、SF映画への出演は興味をそそられる物ではなかった。彼女は面接当日に建物を間違え、遅刻するという失敗も犯している[32]。脚本を読んだ彼女の感想は一言「地味な感じ」であり、その素っ気無い態度に「役が欲しくないのか」とスタッフを不思議がらせたほどであった[33]。
- シェパートン・スタジオで行われたスクリーンテストはおおむね満足のいくものであったが、不安だったラッドはフォックス社内から秘書や管理職など5 - 6人ほどの女性を呼び集めて映像を批評させた。彼女たちはジェーン・フォンダやフェイ・ダナウェイの名を挙げてウィーバーの演技を賞賛し、手ごたえを感じたラッドは彼女をリプリー役に抜擢した[34][33]。ギャラは3万ドルであった[34]。
- ダラス
- トム・スケリットはダラス役として読み合わせが行われており、出演もスムーズに決定した[31]。
- 当初の案ではリプリーと恋人同士であったが、「怪物がうろついている状況でラブロマンスを展開するなどありえない」と考えたスコットにより変更された[35]。
- ケイン
- 役には当初からジョン・ハートが考えられていたが、別の映画に出演したため、ジョン・フィンチが抜擢された。しかし、フィンチは糖尿病を患っており、撮影初日に体調を崩したため降板した[31]。
- 一方、ハートは撮影先である南アフリカ共和国に入国を拒否され、映画そのものが中止となっていた。これは当局が反アパルトヘイト活動をしていたハードとハートの名を取り違えたのが原因とされている[33]。スコットより説得を受けたハートは予定通りケイン役を演じることになった。
- 後にハートは『スペースボール』に同じ役でカメオ出演し、宇宙のファーストフード店で、食事中に体内に寄生していたエイリアンに腹を食い破られた男という設定でセルフパロディを演じている。この時は「またか」と嘆いている上に、「Himself(本人)」とクレジットされた。
- アッシュ
- イアン・ホルムはシャセットの意向によって加えられたイギリス人の一人となった。ホルムは初めての映画撮影に緊張するウィーバーを気遣い、毎週ケント州にある自分の農場に招待した[36]。
- リプリーを襲って破壊された後の台詞は当初「エイリアンとコミュニケーションを試みたことがあるのか」という内容で、エイリアンを一方的に危険視することに疑問を投げかけるものであったが、特殊効果に不満を持ったスコットの意向で撮り直され、台詞もエイリアンの性質を賞賛する内容に変更された[33]。アッシュの壊れた体から見える部品や体液は、パスタ、ガラス玉、点滴用のチューブ、偽のキャビア、牛乳、コンデンスミルクなどが使われている。元々広告で食材を扱う経験があったスコットならではの材料であった[37]。
- アッシュが意識が朦朧としているリプリーを窒息させようと丸めた雑誌を口に押し込むシーンは、アンドロイドであるがゆえに性器を持たないことや、レイプの代替行為であることの暗示となっている[37][33]。なお彼が丸めた雑誌は『平凡パンチ』で、表紙の写真は木之内みどりである[注 13]。ノストロモ号が日系企業の所有物だからだということが後に監督によって語られている。
- パーカー
- ヤフェット・コットーは非常に情熱的で、アイディアがあると監督に率直に意見をぶつけた。エイリアンに殺されるシーンは彼にとっては特に不服であり、自分の役は最後まで生き残るべきだと監督に抗議するほどだった[39]。一方、役者同士のコミュニケーションでは、ウィーバーに対して感情的に接し精神的な圧迫を加えていた。これは後半でリプリーがエイリアン対策を主導するシーンを際立たせるためで、スコットの指示によるものであった[40][41]。
- ランバート
- ヴェロニカ・カートライトは当初リプリー役でオーディションを受けたが、ランバートを演じることになった。
- 冒頭の目覚めのシーンでは女性陣は乳首にテーピングを施しただけであった。このシーンは全裸で撮る予定だったが、カートライトによれば、少なくとも5か国での上映ができなくなることから劇中の形になった[42][33]。
- ランバートに用意されていた死亡シーンは「エイリアンをエアロックに追い込む最中、事故による減圧で死ぬ」といったものであったが、一部が撮影されただけで採用されなかった[43]。またランバートの最期のシーンにおいて、足の間をエイリアンの尾が上がっていくカットで写っているのは彼女ではなくブレットであり、身につけている服が違う[33][注 14]。これはブレットがエイリアンに殺されるシーンでカットされた部分を流用したため。
- ジョーンズ
- 撮影には合計4匹の同じ品種の猫を用いた。抱き上げるたびにウィーバーは目の充血に悩まされ、一時は降板すら覚悟した。この原因は汗として使われたグリセリンと猫の毛が混合し、アレルギー反応が起きたためであった[44]。
- ブレットが襲われる直前にエイリアンを見て警戒するシーンは、板の後ろにシェパードを隠しておき、タイミングを見計らって板を取り払い猫に見せることで演技をさせていた[41]。
- リプリーがジョーンズを探すシーンで、スコットは「(仲間が脱出の準備に奔走しているのに)あのような危機的状況で猫を探すのか」という批判を覚悟していたが、予想に反しそういった声はほとんどなかったという[41]。
- 「エイリアンがいる船内を自由に歩きまわる」、「ケージに入れられる際に鳴き声を上げる」、「エイリアンの目の前に放置される」など、エイリアンに寄生されているのではないかという疑念を抱かせる描写があったが、結果的には伏線として使われることはなかった[41]。
- ディレクターズ・カット版では、入ったケージをエイリアンに蹴飛ばされている。
- ^ かつて日本の空港などでも、「外国人」の意味で「Alien」という表記が見られたが、次第に「Foreigner」表記に改められていった。
- ^ ソフト等に表示されたあらすじでは「2087年」と誤記されていることが多い。
- ^ 原語でのリプリーの肩書は「Warrant officer」であり、これを訳すと「准士官(准尉)」もしくは「兵曹長」(海兵隊では四等准尉)に相当する軍の階級である。ラストシーンの最終報告では、自らの肩書を「3rd Navigator」と称している。また、航海士としての姿が見られるのは本作のみである。
- ^ ディレクターズ・カット版では次のカットで悲鳴を聞いたリプリーとパーカーが駆けつけるものの、劇場公開版ではすぐに集合シーンに切り替わり、パーカーが皆にエイリアンの急成長とブレットの死を報告している。
- ^ 直径、周囲、距離のいずれなのかは不明。ソフトの日本語吹替では「周囲」となっている。しかし、明らかに小惑星よりはるかに大きい惑星(衛星)サイズであり、設定が矛盾している。
- ^ ただし脱出艇が2隻あるとなると、終盤でリプリーが自爆を解除しようとするシーンや、危険を承知でナルキッソスに戻るシーンが矛盾する(また、仮にナルキッソス一つしかないとしても、全乗組員が脱出艇に乗れないという別の矛盾も発生する)。
- ^ 船級の設定は『2』冒頭の査問会シーンでも登場している。
- ^ 後発の設定であり、劇中には具体的な年代を明記したシーンはない。なおブルーレイ版パッケージ裏の表記では2087年となっている。
- ^ スコットが2年前に監督した『デュエリスト/決闘者』もコンラッドの作品が原作である。
- ^ ウェイランドとなったのは『2』から。
- ^ この構想は、1990年にポール・バーホーベン監督の『トータル・リコール』として結実した。
- ^ オバノンは本作でデス・スター設計図とヤヴィンの戦いのカウントダウン映像のCG製作に携わっている。
- ^ 唐沢俊一による書籍の記述を元に表紙の写真が山口百恵であるという説が広まったが間違いであることを杉村喜光が指摘している[38]。
- ^ ランバートが履いているのは白のパンツにブーツだが、ジーンズとスニーカーになっている。
- ^ ファーストは後にティム・バートン監督『バットマン』(1989年)でアカデミー美術賞を受賞する。
- ^ 公開時のポスターや予告編に登場するエッグはこの当初のデザインを使用している。
- ^ チェストバスターが飛び出してきた際にランバートが悲鳴を上げるシーンは、驚いて転倒する直前のものである。
- ^ ウィーバーも、ナルキッソス内で冷凍休眠を行うために服を脱ぐシーンは、下着姿ではなく全裸で撮影する予定があったことをアクターズ・スタジオのインタビューで語っている。
- ^ 日本語字幕では原語の「Frontier」に「銀河系」という単語をあてているが、「国境」「辺境地帯」とする方が正しい。
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- ^ 石塚倫子 (2002, p. 26)
- ^ ハロルド・シェクター『体内の蛇 フォークロアと大衆芸術』(吉岡千恵子共訳、リブロポート、1992年)
- ^ a b c 映画秘宝EX(2012)、p.71
- ^ "か弱い存在と位置づけられていた女性が,(中略)アクションの担い手へと立場を変えたのである" 塚本まゆみ (2003, pp. 103–104)
- ^ 石塚倫子 (2002, pp. 31–32)
- ^ 難波江和英/内田樹 『現代思想のパフォーマンス』 松柏社、2000年、96-103頁。ISBN 4-88198-932-4。内田樹『女は何を欲望するか?』角川書店、2008年 ISBN 978-404710090-9、『映画の構造分析』晶文社、2003年 ISBN 978-4794965752 も参照
- ^ ネイサン(2012)、p.136
- ^ “‘Alien’ Series From Noah Hawley in the Works at FX, Ridley Scott in Talks to Executive Produce”. Variety. 2020年12月13日閲覧。
- ^ a b c “『エイリアン』ドラマ版の主人公決定 ─ 『ドント・ウォーリー・ダーリン』シドニー・チャンドラーが抜擢”. THE RIVER (2023年5月2日). 2023年5月16日閲覧。
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