エイリアン (映画) 撮影

エイリアン (映画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/03 19:45 UTC 版)

撮影

撮影は1978年の7月5日から10月21日のおよそ3か月半に渡って行われた[18]。オバノンの薦めで『悪魔のいけにえ』(1974年)を見たスコットはこの作品を目安としてデザイナーに指示を与えた。また、もっとも感銘を受けたホラーとして『エクソシスト』(1973年)を挙げ、何度も見直し研究を重ねた[25]。ほか、『2001年宇宙の旅』にも影響を受けている。

スタジオはイギリス、ロンドンの郊外にあるシェパートン・スタジオが使用された。ハリウッドに比べ費用が安く済むこと、イギリスには優れた美術スタッフや、製作に必要なプラモデルメーカーがいることなどが理由であった[21]。撮影のためにスタジオ内のA、B、C、D、Hの5つのサウンド・ステージが使用され、ノストロモ号のセットはCに、遺棄船のセットはHに造られた。Hは当時ヨーロッパ最大級のサウンド・ステージであり、60m × 100mもの広さがあった[45]

スコット側からは、『デュエリスト/決闘者』に引き続きパウエルが共同プロデューサーとして、撮影にデレク・バンリント、プロダクション・デザイナーにマイケル・シーモアなどRSAに縁のある人物が参加した。

そのほか、編集にはテリー・ローリングス、『スター・ウォーズ』で美術監督を務めたレスリー・ディレイ、セットを製作したロジャー・クリスチャン、衣裳を担当したジョン・モロ、『キングコング』の造形に携わったカルロ・ランバルディ、特殊効果担当として『スペース1999』に参加していたブライアン・ジョンソンニック・アルダーが加わった。またオバノンはコッブに加えて『デューン』で製作を共にしたフォスとギーガーらデザイナーを企画に呼び集めた。

撮影は徹底した秘密主義の下で行われ、いたるところに「見学者立ち入り禁止」の立て札、張り紙が掲示された[46]。予算圧縮のためフォックス上層部からの圧力に晒され続けたスコットは不安定な精神状態が続き、時には八つ当たりでセットを破壊してしまったこともあった[47]。また、多くのスタッフが当時の製作現場が緊張に満ちて不愉快だったと証言している[48]。後年スコットは「あの時の自分は余裕がなかった。撮影現場に緊張感をもたらした原因の一つは、自分の突き放した態度にもあっただろう」と当時を振り返っている[49]


  1. ^ かつて日本の空港などでも、「外国人」の意味で「Alien」という表記が見られたが、次第に「Foreigner」表記に改められていった。
  2. ^ ソフト等に表示されたあらすじでは「2087年」と誤記されていることが多い。
  3. ^ 原語でのリプリーの肩書は「Warrant officer」であり、これを訳すと「准士官(准尉)」もしくは「兵曹長」(海兵隊では四等准尉)に相当する軍の階級である。ラストシーンの最終報告では、自らの肩書を「3rd Navigator」と称している。また、航海士としての姿が見られるのは本作のみである。
  4. ^ ディレクターズ・カット版では次のカットで悲鳴を聞いたリプリーとパーカーが駆けつけるものの、劇場公開版ではすぐに集合シーンに切り替わり、パーカーが皆にエイリアンの急成長とブレットの死を報告している。
  5. ^ 直径、周囲、距離のいずれなのかは不明。ソフトの日本語吹替では「周囲」となっている。しかし、明らかに小惑星よりはるかに大きい惑星(衛星)サイズであり、設定が矛盾している。
  6. ^ ただし脱出艇が2隻あるとなると、終盤でリプリーが自爆を解除しようとするシーンや、危険を承知でナルキッソスに戻るシーンが矛盾する(また、仮にナルキッソス一つしかないとしても、全乗組員が脱出艇に乗れないという別の矛盾も発生する)。
  7. ^ 船級の設定は『2』冒頭の査問会シーンでも登場している。
  8. ^ 後発の設定であり、劇中には具体的な年代を明記したシーンはない。なおブルーレイ版パッケージ裏の表記では2087年となっている。
  9. ^ スコットが2年前に監督した『デュエリスト/決闘者』もコンラッドの作品が原作である。
  10. ^ ウェイランとなったのは『2』から。
  11. ^ この構想は、1990年ポール・バーホーベン監督の『トータル・リコール』として結実した。
  12. ^ オバノンは本作でデス・スター設計図とヤヴィンの戦いのカウントダウン映像のCG製作に携わっている。
  13. ^ 唐沢俊一による書籍の記述を元に表紙の写真が山口百恵であるという説が広まったが間違いであることを杉村喜光が指摘している[38]
  14. ^ ランバートが履いているのは白のパンツにブーツだが、ジーンズとスニーカーになっている。
  15. ^ ファーストは後にティム・バートン監督『バットマン』(1989年)でアカデミー美術賞を受賞する。
  16. ^ 公開時のポスターや予告編に登場するエッグはこの当初のデザインを使用している。
  17. ^ チェストバスターが飛び出してきた際にランバートが悲鳴を上げるシーンは、驚いて転倒する直前のものである。
  18. ^ ウィーバーも、ナルキッソス内で冷凍休眠を行うために服を脱ぐシーンは、下着姿ではなく全裸で撮影する予定があったことをアクターズ・スタジオのインタビューで語っている。
  19. ^ 日本語字幕では原語の「Frontier」に「銀河系」という単語をあてているが、「国境」「辺境地帯」とする方が正しい。
  1. ^ a b Alien”. Box Office Mojo. Amazon.com. 2012年6月5日閲覧。
  2. ^ 『キネマ旬報ベスト・テン85回全史 1924-2011』(キネマ旬報社、2012年)380頁
  3. ^ ギーガーの公式ページタイトルより。Welcome to the art of swiss surrealist HR Giger”. Tom Ahlgrim & H.R. Giger. 2013年4月7日閲覧。
  4. ^ The 100 best sci-fi movies - Time Out London
  5. ^ a b Blu-ray Disc版『エイリアンvsプレデター2』の特典「ウェイランド・ユタニ社データベース」より。
  6. ^ a b c ネイサン(2012)、p.55
  7. ^ スキャンロン(2012)、p.24
  8. ^ a b サモン(2001)、p.134
  9. ^ ネイサン(2012)、p.16
  10. ^ ネイサン(2012)、pp.16-19
  11. ^ ネイサン(2012)、p.19
  12. ^ a b c d e f スキャンロン(2012)、p.7
  13. ^ a b ネイサン(2012)、p.101
  14. ^ ネイサン(2012)、p.20
  15. ^ ネイサン(2012)、pp.21-22
  16. ^ サモン(2001)、p.121
  17. ^ a b ネイサン(2012)、p.24
  18. ^ a b c d e f ネイサン(2012)、p.172
  19. ^ a b ネイサン(2012)、p.29
  20. ^ ネイサン(2012)、p.26
  21. ^ a b ネイサン(2012)、p.25
  22. ^ a b c d e ネイサン(2012)、p.65
  23. ^ ギーガー(2004)、p.10
  24. ^ a b ネイサン(2012)、p.86
  25. ^ a b ネイサン(2012)、p.35
  26. ^ サモン(2001)、pp.115-118
  27. ^ サモン(2001)、pp.118-120
  28. ^ ネイサン(2012)、p.126
  29. ^ a b サモン(2001)、p.125
  30. ^ サモン(2001)、p.135
  31. ^ a b c ネイサン(2012)、pp.68-69
  32. ^ ネイサン(2012)、p.122
  33. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v Blu-ray Disc版『エイリアン』の特典「音声解説(完全版)」より。
  34. ^ a b ネイサン(2012)、pp.122-125
  35. ^ ネイサン(2012)、p.135
  36. ^ a b ネイサン(2012)、p.127
  37. ^ a b ネイサン(2012)、p.75
  38. ^ 杉村喜光による2020年6月5日午前9:38のツイート2020年6月5日閲覧。
  39. ^ ネイサン(2012)、p.71
  40. ^ ネイサン(2012)、p.131
  41. ^ a b c d e f g h i j k Blu-ray Disc版『エイリアン』の特典「音声解説 リドリー・スコット監督」より。
  42. ^ ネイサン(2012)、p.45
  43. ^ ネイサン(2012)、p.68
  44. ^ ネイサン(2012)、p.70
  45. ^ a b c ギーガー(2004)、p.14
  46. ^ ネイサン(2012)、p.38
  47. ^ a b c d e ネイサン(2012)、p.57
  48. ^ サモン(2001)、p.138
  49. ^ サモン(2001)、p.139
  50. ^ ネイサン(2012)、pp.22-23
  51. ^ スキャンロン(2012)、p.86
  52. ^ ネイサン(2012)、pp.38-39
  53. ^ サモン(2001)、pp.128-129
  54. ^ ネイサン(2012)、p.84
  55. ^ a b ネイサン(2012)、p.90
  56. ^ a b c ギーガー(2004)、p.34
  57. ^ ネイサン(2012)、p.86
  58. ^ ネイサン(2012)、pp.85-86
  59. ^ a b ギーガー(2004)、p.16
  60. ^ ネイサン(2012)、p.43
  61. ^ a b ネイサン(2012)、pp.48-49
  62. ^ ネイサン(2012)、p.52
  63. ^ スキャンロン(2012)、p.36
  64. ^ a b ネイサン(2012)、p.61
  65. ^ ネイサン(2012)、p.50
  66. ^ サモン(2001)、p.65
  67. ^ スキャンロン(2012)、p.10
  68. ^ スキャンロン(2012)、p.12
  69. ^ ギーガー(2004)、p.20
  70. ^ a b スキャンロン(2012)、p.65
  71. ^ スキャンロン(2012)、p.60
  72. ^ ネイサン(2012)、pp.90-91
  73. ^ a b スキャンロン(2012)、p.85
  74. ^ ネイサン(2012)、p.89
  75. ^ ギーガー(2004)、p.32
  76. ^ ギーガー(2004)、p.40
  77. ^ ネイサン(2012)、p.82
  78. ^ ネイサン(2012)、pp.95-98
  79. ^ ネイサン(2012)、p98
  80. ^ ギーガー(2004)、pp.8-10
  81. ^ スキャンロン(2012)、p.102
  82. ^ ネイサン(2012)、p.81
  83. ^ ギーガー(2004)、p.46
  84. ^ ネイサン(2012)、p.103
  85. ^ スキャンロン(2012)、p.93
  86. ^ ネイサン(2012)、p.106
  87. ^ a b ギーガー(2004)、p.54
  88. ^ ギーガー(2004)、pp.56-57
  89. ^ スキャンロン(2012)、p.94
  90. ^ ネイサン(2012)、pp.88-89
  91. ^ a b ネイサン(2012)、p.108
  92. ^ ネイサン(2012)、p.13
  93. ^ ギーガー(2004)、p.56
  94. ^ ネイサン(2012)、p.109
  95. ^ a b c ネイサン(2012)、p.111
  96. ^ a b スキャンロン(2012)、p.88
  97. ^ a b c ギーガー(2004)、p.58
  98. ^ a b サモン(2001)、p.130
  99. ^ 「エイリアン・アンソロジー」オフィシャルサイト スペシャル・インタビュー”. 2012年11月23日閲覧。
  100. ^ ネイサン(2012)、pp.111-115
  101. ^ ギーガー(2004)、p.70
  102. ^ ギーガー(2004)、p.66
  103. ^ サモン(2001)、p.130-131
  104. ^ ネイサン(2012)、pp.115-116
  105. ^ a b ギーガー(2004)、p.68
  106. ^ a b ネイサン(2012)、p.104
  107. ^ a b サモン(2001)、p.137
  108. ^ サモン(2001)、p.140
  109. ^ サモン(2001)、p.131
  110. ^ サモン(2001)、p.132
  111. ^ a b c d ネイサン(2012)、p.139
  112. ^ ネイサン(2012)、p.138
  113. ^ 石塚倫子 (2002, p. 31)
  114. ^ 石塚倫子 (2002, p. 26)
  115. ^ ハロルド・シェクター『体内の蛇 フォークロアと大衆芸術』(吉岡千恵子共訳、リブロポート、1992年)
  116. ^ a b c 映画秘宝EX(2012)、p.71
  117. ^ "か弱い存在と位置づけられていた女性が,(中略)アクションの担い手へと立場を変えたのである" 塚本まゆみ (2003, pp. 103–104)
  118. ^ 石塚倫子 (2002, pp. 31–32)
  119. ^ 難波江和英/内田樹 『現代思想のパフォーマンス』 松柏社、2000年、96-103頁。ISBN 4-88198-932-4。内田樹『女は何を欲望するか?』角川書店、2008年 ISBN 978-404710090-9、『映画の構造分析』晶文社、2003年 ISBN 978-4794965752 も参照
  120. ^ ネイサン(2012)、p.136
  121. ^ ‘Alien’ Series From Noah Hawley in the Works at FX, Ridley Scott in Talks to Executive Produce”. Variety. 2020年12月13日閲覧。
  122. ^ a b c 『エイリアン』ドラマ版の主人公決定 ─ 『ドント・ウォーリー・ダーリン』シドニー・チャンドラーが抜擢”. THE RIVER (2023年5月2日). 2023年5月16日閲覧。





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「エイリアン (映画)」の関連用語

エイリアン (映画)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



エイリアン (映画)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのエイリアン (映画) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS