アディンクラ アディンクラの概要

アディンクラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/04 17:05 UTC 版)

工程

伝統的には専ら男性の手で大きな布にウリ科植物製のスタンプを捺すことにより作られてきた[1]。スタンプの材質はトネリコツゲ[注 1]イチジク、ナシ[注 2]などといった堅い木である場合もある[5]。スタンプの紋様は同じ種類のものを反復し、規則的なパターンとなる様に印刷される。布地は通例や暗めのオリーブ色である[5]。なお、現在では女性がアディンクラを用いて服を製作する場合もある[1]

歴史

アカン族は16世紀頃より織物を製作する技術を有していたといわれる[1]。アディンクラの技術は19世紀まではアカン人の一派であるジャーマン族英語版(Gyaaman)が独占しており、その王家の者や宗教指導者が葬式など特定の儀式の際に着用していた[1]。現在でもアディンクラクロスは同じくガーナの伝統織物であるケンテと比べると喪服としての使用が好まれる傾向にある[1]。ところがこの技術はやがてアカン人の別の一派であるアシャンティ族英語版(Ashanti; アサンテ族 Asante とも)の手に渡ることとなり、アシャンティ族は自らの文化に即した紋様の種類を増やした上衣服のみならず陶器にも意匠をあしらうようにする等模様の用途を拡大した[1]。現在、伝統的な技術はクマシの北に位置するントンソ村英語版で継承されている[1]。現代では機械印刷によるものも存在する[1]

アディンクラ・シンボル

様々なアディンクラ・シンボル

アディンクラに印刷される紋様にはアカン語(チュイ語)のことわざやそれに類する寓意が込められている。アカン語はラテン文字が導入されるまで文字を持たない言語であったため、このような服の模様に見られるシンボルや語り部の活動が人々の行動規範等を伝える手段となっていた[1]。最もよく見られるアディンクラ・シンボルはジェ・ニャメ Gye Nyame(意味は「神以外」、含意は〈神が最も偉大であること〉)であり、ケープ・コースト大学英語版校章にも組み込まれている[1]。現代では校章の他、企業のロゴキーホルダーなど更に多種多様な使用法が見られる[1]

脚注

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参考文献

日本語:

  • ジョン・ギロウ、ブライアン・センテンス 著、丹野郁 日本語版監修『世界織物文化図鑑 生活を彩る素材と民族の知恵』東洋書林、2002年。ISBN 4-88721-521-5
  • 山田肖子「アディンクラのシンボル」 高根務、山田肖子 編著『ガーナを知るための47章』明石書店、2011年、130-132頁。ISBN 978-4-7503-3439-4

関連文献

英語:

  • Willis, W. Bruce (1998). The Adinkra Dictionary: A Visual Primer on the Language of Adinkra. Washington, DC: The Pyramid Complex 

注釈

  1. ^ ガーナに自生するツゲ科ツゲ属の植物は一応存在する[2]が、同じくガーナに自生するアカネ科高木のビランガ(Nauclea diderrichii; シノニム: Sarcocephalus diderrichii)が West African boxwood の名で呼ばれた例もある[3]
  2. ^ ガーナにバラ科ナシは自生していなかった[2]。African pearwood の名で呼ばれ、ガーナに自生する植物にはアカテツ科Manilkara obovata(シノニム: Mimusops lacera)というものがある[4]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k 山田 (2011).
  2. ^ a b POWO (2019). "Plants of the World Online. Facilitated by the Royal Botanic Gardens, Kew. Published on the Internet; http://www.plantsoftheworldonline.org/ Retrieved 7 March 2021
  3. ^ Watt, J. M.; Breyer-Brandwijk, Maria G. (1928). “The present position of our knowledge of South African medicinal and poisonous plants”. South African Journal of Science 25: 232. https://books.google.co.jp/books?id=2FUbAAAAMAAJ&q=African+boxwood&dq=African+boxwood&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwiI-OqW-57vAhVLVN4KHZqVAFsQ6AEwBnoECAEQAg.  NCID AA00845237
  4. ^ Irvine, F. R. (1961). Woody Plants of Ghana: With Special Reference to Their Uses. Oxford University Press. p. 592. NCID BA6718545X. https://books.google.co.jp/books?id=_ftUAAAAMAAJ&q=African+pearwood&dq=African+pearwood&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwj6mO6h7Z7vAhUB7WEKHTRnD6gQ6AEwBnoECAcQAg 
  5. ^ a b ギロウ&センテンス (2002:110).


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