アキアカネ 種の保全状況評価

アキアカネ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/13 02:00 UTC 版)

種の保全状況評価

1990年代後半から日本各地でアキアカネの個体数が激減している[14]。その原因はイネ苗といっしょに水田に持ち込まれる農薬の箱処理剤とみられている[14][15]1993年からイミダクロプリド、1996年からフィプロニルが箱処理剤として全国的に出荷されている。フィプロニルはアキアカネの幼虫の致死率を高めることが実験的に確認されていて、北陸地方におけるフィプロニルの出荷量変化とアキアカネやノシメトンボの個体数減少との間に相関があることも確認されている[14]

日本の以下の都道府県で、レッドリストの指定を受けている[16]

人間との関係

民俗

乾燥させた成虫は民間薬として用いられ、解熱剤強壮剤として効果があるとされる。その一方で捕まえると罰が当たるとする言い伝えもあり、東北地方ではに打たれるとして「かみなりとんぼ」と呼び、東海地方では目が赤くなったり腹が痛くなったりする、あるいは瘧(おこり)、即ちマラリアの発熱発作を起こすとする伝承がある。この伝承が秋に大群で出現するアキアカネに何らかの霊性を認めたためであったのか、それとも害虫を食べるトンボをむやみに殺生することを戒めたものであるのかは明らかではない。

生物季節観測

気象庁においては、サクラ開花満開の観測のように、成熟して赤くなったアキアカネ成虫の初見日の生物季節観測を行っている。 2011年には、過去の観測において成熟前の成虫を見た日のデータが混在している可能性があることが分かったため、成熟後の観測とは判断できない一部の観測データを正常値から疑問がある値に変更した。変更した観測データは統計から削除され、平年値など大幅に変更となっている。

水稲育苗箱施用殺虫剤の影響

育苗箱施用殺虫剤として使用されるフィプロニル及びイミダクロプリド(英語版)は、幼虫の生存率を低下させ羽化の際の異常率を高めるとの報告が有る[17]

脚注


注釈

  1. ^ 朝鮮半島タイプのアキアカネは胸部の黒条が細く、タイリクアカネに似ていて、DNA解析で同定できる。
  2. ^ 飼育下では、1ヶ月程度で卵孵化することもある。
  3. ^ アキアカネとタイリクアキアカネはミトコンドリアDNAでは区別できない。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 尾園 (2012)、388頁
  2. ^ 井上 (1999)、62頁
  3. ^ 井上 (1999)、96頁
  4. ^ 井上 (1999)、144頁
  5. ^ 尾園 (2012)、356頁
  6. ^ 井上 (1999)、63頁
  7. ^ 井上 (1999)、108頁
  8. ^ a b c 尾園 (2012)、492頁
  9. ^ 井上 (1999)、118頁
  10. ^ a b 尾園 (2012)、374頁
  11. ^ a b c 尾園 (2012)、389頁
  12. ^ 新井(2004)、カラー8頁
  13. ^ 尾園 (2012)、32頁
  14. ^ a b c 尾園 (2012)、70頁
  15. ^ 上田哲行. “イネの苗箱処理剤が赤トンボを減らしていた”. 農山漁村文化協会. 2013年7月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月13日閲覧。
  16. ^ 日本のレッドデータ検索システム「アキアカネ」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2013年10月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月13日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
  17. ^ 神宮字寛, 上田哲行, 五箇公一, 日鷹一雅, 松良俊明「フィプロニルとイミダクロプリドを成分とする育苗箱施用殺虫剤がアキアカネの幼虫と羽化に及ぼす影響」『農業農村工学会論文集』第77巻第1号、農業農村工学会、2009年、35-41頁、doi:10.11408/jsidre.77.35 


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