死水
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/17 05:54 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動死水(しすい、英: dead water)とは、流れの中の物体後方に形成される、静止状態の流体領域のことである[文献 1]。死水域(しすいいき)ともいい、河川や配管において発生する。
実際の流れにおいて、にぶい(流線形でない)形状の物体の後方(伴流領域)は、大小の渦が存在し、時間・空間的にきわめて複雑な流れである。しかし近似として、伴流領域は時間平均を取れば流速が遅くほとんど動かない領域とみなすことができる。この意味で死水は近似モデルである。
死水の外側の領域は非粘性流体であり、かつ渦なし流れと仮定する[脚注 1]と、流体領域のほとんど至るところで渦なし流れとなる。しかし死水領域を考えることで、完全流体の渦なし流れを扱いながらダランベールのパラドックスを回避することができる。
1869年にグスタフ・キルヒホフによって、非粘性流体の仮定をしたままでダランベールのパラドックスを回避し流体抗力を求めるために導入された[文献 2]。
脚注
- ^ 非粘性、かつ物体の上流側の無限遠で一様流であれば、ラグランジュの渦定理より渦なしである。
参考文献
- ^ 今井功 『流体力学(前編)』 裳華房、1997年。ISBN 4-7853-2314-0。
- ^ 鈴木和夫 『流体力学と流体抵抗の理論』 成山堂書店、2006年、60頁。 ISBN 4-425-71361-3。
死水 (航海用語)
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航海用語における死水(しすい、しにみず、英語: dead water)とは、海氷のできる海や河口などで、密度の高い海水の上に、密度の低い淡水または汽水の層が混合することなく存在する現象である[1]。「曳き幽霊」「底幽霊」などともいう[1][2]。
水線の下の直接推力(プロペラなど)を動力とする船(特に小型船)は、そのような条件で航行しようとすると、操縦が困難になったり、ほとんど停止状態まで減速したりすることがある。これは、船のプロペラからのエネルギーの多くが、2つの層の境界の波(内部波)の生成で消費されてしまう(造波抵抗)ためである[1]。
ノルウェーの北極圏探検家フリチョフ・ナンセンは、1893年8月にタイミル半島近くのノルデンショルド群島付近の北極海をフラム号で航行中に死水に遭遇し、その時のことを次のように書いている。
死水に巻き込まれたとき、フラム号は何か不思議な力に阻まれているように見え、常に舵が効かなかった。穏やかな天候で、荷物が軽い状態では、フラム号は6 - 7ノットの速度を出すことができた。死水では1.5ノットも出せなかった。私たちは航路をループしたり、時々右回りに旋回したりなど、回避するためにあらゆる手段を試みたが、ほとんど意味はなかった[3]。
脚注
- ^ a b c “操船者から見た幽水現象について”. 海上保安庁. 2020年7月17日閲覧。
- ^ “死水(しすい)とは”. weblio辞書. 2020年7月17日閲覧。
- ^ Walker, J.M.; "Farthest North, Dead Water and the Ekman Spiral," Weather, 46:158, 1991
関連項目
外部リンク
- Short movie demonstrating the phenomenon with a model
- Description of Dead Water
- Explanation of dead water
- New Scientist article
- 'dead water' Encyclopædia Britannica Online. 3 December 2009
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