ZM-87とは? わかりやすく解説

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ZM-87

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/21 07:59 UTC 版)

ZM-87 携行型レーザー妨害機(ZM-97 けいこうがたレーザーぼうがいき)は、1990年代中国北方工業公司で製造された携行可能な軍用レーザー発振装置である。敵兵器の光学センサーまたは戦闘要員の視覚に対する損傷あるいは妨害を目的として設計された [1]国連議定書による規制に基づき2000年までに製造を終了している[2]

解説

開発目的

ZM-87の主な用途は中国北方工業公司(Norinco)のファクトシートの記述によれば[1][2]

  • 敵戦闘員(特に、射撃または監視の目的で光学装置を使用している観測要員)の視覚に対する損傷、あるいは眩惑によって戦闘能力・観測能力を奪う
  • 敵兵器が搭載する光学装置(レーザー距離計ビデオカメラミサイルシーカー[3]など)を損傷、あるいは無効化させる

の2つである。

開発から公表まで

ZM-87の開発は1980年代後半に開始された。アメリカ陸軍の情報筋によれば1994年11月に中国北方工業公司によって最初に展示されている[1]

1995年5月、フィリピンで開催された東南アジア兵器フェアーに「ZM-87 Portable Laser Disturber」として出品され、存在が広く明らかになった[1][2]。その後、同月にアブダビで開かれたIDEX(国際防衛展示会・会議)でも注目を集めた[1]アメリカ国防総省内では、ZM-87が「第三世界ならずもの国家」の手に渡る事を危惧する意見もあったという[1]

規制と製造終了

レーザー兵器への法規制については、『回復不能な失明は殺傷よりも不必要な苦痛をおよぼす』という見地による国際的な議論が1980年代から続けられていた。1995年当時、失明の危険がある軍事用レーザー装置としてはZM-87以外にアメリカ軍M16自動小銃に装着する形のレーザーシステム(Laser Counter Measures System, LCMS)が量産化を承認する段階にあった。ZM-87とLCMSの具体的な存在が、規制化に拍車をかける形となった。[2]

1995年10月、特定通常兵器使用禁止制限条約の附属議定書IV(1998年発効)が採択され「永久に失明をもたらすように特に設計されたレーザー兵器の使用及び移譲」が禁止された[4] 。中国はこの議定書を締約し、規制に抵触するZM-87の製造を2000年12月までに終了させた。中国北方工業公司は対人レーザーを市場から回収したとされる[2]

仕様

外観は重機関銃の形に似ている。照準器を備えた長さ84センチメートルのビームエミッターが三脚に据えられ、外付けの電源部がケーブルによって接続される。

中国北方工業公司のファクトシートに基づく仕様[1][3]は以下の通り。

  • レーザーパルス:パルス間隔 5ヘルツ、2つの波長で同時に送出可能
  • ピーク出力:15メガワット
  • 有効射程
    • (人間の目を損傷可能) 2~3キロメートル以内、7倍の拡大鏡を使用している場合には5キロメートル以内
    • (光による一時的眩惑) 10キロメートル以内
  • バッテリー:1個につき10,000パルス以上の送出が可能
  • 連続使用時間:常温で5分間
  • 重量:約33キログラム(本体)

関連事件

関連項目

参考文献

  1. ^ a b c d e f g BLINDING LASER WEAPONS THE NEED TO BAN A CRUEL AND INHUMANE WEAPON” (PDF). ヒューマン・ライツ・ウォッチ (1995年9月). 2016年3月13日閲覧。
  2. ^ a b c d e 岩本誠吾「盲目化レーザー兵器議定書に対する国際法的評価」『産大法学』第38巻第2号、京都産業大学法学会、2004年9月、264-244頁、CRID 1050001338018577024hdl:10965/518ISSN 028637822024年8月21日閲覧 
  3. ^ a b Bayram Mert Deveci (2007年9月). “Directed-Energy Weapons: Invisible and Invincible?” (PDF). Naval Postgraduate School). p. 85. 2016年3月13日閲覧。 ZM-87の写真が掲載されている。
  4. ^ 特定通常兵器使用禁止制限条約”. 外務省 (2007年10月). 2016年3月15日閲覧。
  5. ^ Report: N. Korea fired laser at troops”. UPI通信社 (2003年5月13日). 2016年3月14日閲覧。 なお文献記事の配信元サイトにおけるカテゴリーは「奇妙なニュース(ODD NEWS)」となっている。

外部リンク



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