Tmの値
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/08 15:22 UTC 版)
融解温度という。螺旋分子溶液を徐々に加熱すると、そのポリヌクレオチドに特異的な一定の温度範囲内で、その溶液の性質が急変する。温度の増加に伴う種種の性質の変化は螺旋構造の崩壊の進行に比例する。加熱前の螺旋分子の温度と、変性完了の瞬間の温度の、中間の温度が融解温度なのである。熱変性には旋光度や粘度の減少、沈降定数の増大などを伴うが、この遷移の経過の検出に最も広く用いられる変化は吸光度の増加である。そこで、吸光度の観測実験を例に取り上げ、Tmの具体的な説明をする。 種種の螺旋分子の溶液を加熱したときの吸光度の変化を観察すると、明らかに狭い温度範囲で吸光度の増加が起こり、ある温度から再び吸光度は一定になる、という特徴が見られる。上昇が止まった吸光度は二次構造の完全な崩壊を意味するので、遷移の途中での螺旋部分の割合(θ)と、非螺旋部分の割合(1-θ)は次の式で求められる。 θ = D ∞ − D t D ∞ − D 0 {\displaystyle \theta ={\frac {D_{\infty }-D_{t}}{D_{\infty }-D_{0}}}} ここでD∞, Dt, D0は、完全に変性した分子の吸光度、ある中間温度でのポリヌクレオチド溶液の吸光度、低温でのポリヌクレオチドの吸光度である。上で「変性完了の瞬間の温度の、中間の温度が融解温度」と述べたが、この式から表現すると、融解温度とは「螺旋部分の割合と非螺旋部分の割合が等しくなる(θ = 1 - θ = 0.5)温度」である。 Tmの値は、一定の外部条件化では一定であり、ためにその構造のみで規定される螺旋分子の安定性を指標することができる。
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