Lunar_Lakeマイクロプロセッサとは? わかりやすく解説

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Lunar Lakeマイクロプロセッサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/18 14:48 UTC 版)

Lunar Lake
生産時期 2024年9月から
販売者 インテル
設計者 インテル
生産者 インテル
TSMC
プロセスルール TSMC N3B
TSMC N6
アーキテクチャ x86
マイクロアーキテクチャ Pコア
Lion Cove
LP Eコア
Skymont
命令セット Intel 64
コア数 8
(スレッド数:8)
前世代プロセッサ Meteor Lake
次世代プロセッサ Panther Lake
L1キャッシュ Pコア
コアあたり304KB
(命令64KB, データ48KB[注 1]+192KB[注 2]
LP Eコア
コアあたり96KB
(命令64KB, データ32KB)
L2キャッシュ Pコア
コアあたり2.5MB
LP Eコア
4コアあたり4MB
L3キャッシュ 最大12MB
GPU Intel Graphics
コプロセッサ NPU
ブランド名 Core Ultra 9
Core Ultra 7
Core Ultra 5
テンプレートを表示

Lunar Lake(ルナーレイク、またはルナレイク)とは、インテルによって開発されたモバイル向けマイクロプロセッサである。

2024年5月、Intelは台湾で開催されたComputexのプレゼンテーションでLunar Lakeアーキテクチャを発表した後[1]、2024年9月3日に正式発表され[2]Intel Core Ultraプロセッサ シリーズ2として製品化された。

概要

超低消費電力のモバイルSoC設計であるLunar Lakeは、マイクロアーキテクチャ・製造プロセス・パッケージングと全てが変更される全面改良であり、革新的なワットパフォーマンスを見込む野心的なプロセッサである[3][4][5][6]

15WのMeteor Lake-Uプロセッサの後継機にあたる。Lunar Lakeは電力効率の向上に重点を置いており、プレミアムな超薄型ノートパソコンやコンパクトなモバイル設計をターゲットにしている。Intelによれば、Lunar Lakeによって「x86ARMほど効率的ではないという神話を打ち破る」ことを目指したと述べている[7]。発売時に入手可能なLunar Lake CPUで実施されたテストの分析によると、フルロード時のマルチコア性能は特に優れてはおらず、ARMの競合製品に依然として優位性があるものの、日常使用時の効率は良好であったとされる[8]

特徴

プロセスルール

Lunar Lakeは、すべてのロジックダイがTSMCに外注され、完全に外部で製造されるIntel初のプロセッサ設計である。ゴールドマン・サックスの分析によると、Intelは2024年に56億ドル、2025年には97億ドルをTSMCへの外注費として支出するとされている[9]。 2024年3月、Intelの最高財務責任者は投資に関する電話会議で、同社は「社内製造に比べて外部製造の比率が少し高い」ことを認めた[10]。翌月、Intelはファウンドリ事業が2023年に70億ドルの営業損失を計上したことを明らかにした[11]

コンピュートタイル

コンピュートタイルはLunar Lakeで最大のタイルであり、Meteor Lakeのコンピュートタイル(CPUコアとキャッシュのみを収容)よりも機能が拡張されている。Lunar LakeのコンピュートタイルにはCPUコアとそのキャッシュ、GPU、NPUが収容されている。前世代のMeteor LakeはコンピュートタイルにIntel 4プロセスを使用していたが、Lunar LakeはTSMCのN3Bプロセスルールに移行している[12]。 N3BはTSMCの最初の世代3nmプロセスルールで、更新されたN3Eプロセスルールに比べて歩留まりが低いのが特徴である。Lunar Lakeのコンピュートタイルは当初、Intelの18Aプロセスルール上に構築される予定であったがが、18AがPanther LakeモバイルプロセッサとClearwater Forestサーバープロセッサで2025年まで公開できなかことから採用を断念した。Lunar Lakeは、Arrow Lakeデスクトップおよびモバイルプロセッサと同じLion Cove PコアおよびSkymont Eコアアーキテクチャを共有している。

ハイパースレッディング・テクノロジーの廃止

2000年代初頭、同時マルチスレッディング(SMT)(Intelではハイパースレッディング・テクノロジーと呼んでいる)は、ダイスペースを節約しつつマルチコアCPUに処理スレッドを追加する方法として、2002年にNorthwoodベースのPentium 4で初めてIntelデスクトッププロセッサに導入された。以降この手法によって、単一の物理CPUコアで2つのタスクを同時に実行できることから、IntelのCPUには採用されてきた。

その一方で、Alder Lakeアーキテクチャ以降導入されたBig.Litteleハイブリッドアーキテクチャーにおいては物理的なコアが増えたことによって同時マルチスレッディングの利用は逆に効率的ではないことから、Lunar LakeのLion Cove Pコアから削除された[13][14]。SMTの削除を補うため、Intelは並列実行ではなく、高いシングルスレッドパフォーマンスを実現するために、サイクルごとにより多くの命令を実行することを優先した[15]

NPU

Lunar Lakeのニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)は、クロック速度が向上したIntelの「NPU 4」アーキテクチャにアップデートされた。Intelによると、Lunar LakeはAIワークロードで合計120 TOPSの性能があり、そのうち48 TOPSはNPUだけで、さらに67 TOPSはGPUから、5 TOPSはCPUから得られるとしている。専用NPUが48TOPSあることから、MicrosoftのCopilot+ PC認定を受けるためのラップトップの要件(NPU性能で40 TOPS以上)を満たしている[16]

統合されたメモリ

ノートパソコンのマザーボード上にあるLunar Lake。左側がユニファイドメモリである。

Lunar Lakeは、16 GBまたは32 GBのLPDDR5X -8533 RAMをユニファイドメモリとして搭載している。これはCPUシリコンの横に統合LPDDRメモリをパッケージに統合したAppleのMシリーズと同様のアプローチである。ユニファイドメモリによりメモリが物理的にCPUに近くなるため、CPUはより低い電力でより高いメモリ帯域幅と低いレイテンシの恩恵を受けることができるようになった。ただし欠点として、ユーザーが交換したり、SO-DIMMを使用して32GBを超える大容量にアップグレードしたりできないことが挙げられる。また、ユニファイドメモリによりMeteor Lake-HプロセッサのTDPが15~28Wであるのに対し、Lunar LakeのTDP は2Wが追加された17~30Wである[17]。なお標準ではオンパッケージメモリのみ使用可能で、他のCPUのように外部に接続するメモリは使用不可。

GPU

GPUは第2世代のBattlemageグラフィックスアーキテクチャである Xe2-LPG を搭載している。Battlemageアーキテクチャは、ディスクリートArcデスクトップグラフィックカードに先駆けてLunar Lakeに導入された。8MBのL2キャッシュを共有する8個のX eINT8 2-LPGコアを搭載しており、 AI処理に最大67TOPSの演算能力を発揮する。ディスプレイエンジンにはHDMI 2.1、DisplayPort 2.1、そして新しいeDP 1.5接続の3つのディスプレイパイプが搭載されている。またH.266 VVCハードウェア固定機能デコードサポートも備えている[18]

プラットフォームコントローラータイル

小型のプラットフォームコントローラータイルは、Wi-Fi 7Thunderbolt 4、4つのPCIe 4.0レーン、4つのPCIe 5.0レーンを含むセキュリティ機能とI/O接続を提供する。Lunar Lakeのプラットフォームコントローラータイルは、Meteor LakeやArrow LakeのSoCタイルで使用されているものと同じTSMCのN6プロセスルールを使用している[19]。また、Lunar Lakeのプラットフォームコントローラータイルには、Meteor LakeやArrow LakeのSoCタイルにあるような2つの専用の低消費電力Eコアは搭載されていない。この変更は、コンピューティングタイルがIntel 4プロセスからTSMCのより高度なN3Bプロセスに移行したことによる電力効率の向上によるものとされている[20]

製品一覧

モバイル向け

Lunar Lake-V
Lunar Lake-V
ブランド 型番 CPU GPU TDP (W) 内蔵メモリ
コア数
(スレッド数)
クロック (GHz) キャッシュ
(MB)
型番 EU数 クロック
(MHz)
PBP MTP 規格 容量
(GB)
Pコア LP Eコア
Pコア LP Eコア 定格 ターボ 定格 ターボ L2 L3 定格 ターボ
Core
Ultra 9
288V 4 (4) 4 (4) 3.3 5.1 3.3 3.7 14 12 Arc 140V 128 2050 30 37 LPDDR5X-8533 32
Core
Ultra 7
268V 2.2 5.0 2.2 2000 17
266V 16
258V 4.8 1950 32
256V 16
Core
Ultra 5
238V 2.1 4.7 2.1 3.5 8 Arc 130V 112 1850 32
236V 16
228V 4.5 32
226V 16

脚注

注釈 

  1. ^ L0キャッシュ
  2. ^ L1キャッシュ

出典 

  1. ^ 株式会社インプレス (2024年6月5日). “Intel、Lunar LakeはSnapdragon X Eliteにあらゆる点で優位とアピール”. PC Watch. 2025年6月18日閲覧。
  2. ^ Intel、Core Ultra シリーズ2正式発表。Armより低消費電力で高性能”. 2024年12月1日閲覧。
  3. ^ トランジスタレベルで設計を変えたLunar LakeことCore Ultra Series 2”. 2024年11月19日閲覧。
  4. ^ 「Lunar Lake」Deep Diveレポート - 【Part 1】P-Core&E-CoreとPackageについて”. 2024年12月1日閲覧。
  5. ^ 「Lunar Lake」Deep Diveレポート - 【Part 2】Memory、GPU、NPUについて”. 2024年12月1日閲覧。
  6. ^ 「Lunar Lake」Deep Diveレポート - 【Part 3】Platform Controller Tileについて”. 2024年12月1日閲覧。
  7. ^ ‘Lunar Lake’ Explained: How Intel’s Moonshot Mobile CPUs Will Escalate the AI Wars” (英語). PCMag UK (2024年6月4日). 2025年6月18日閲覧。
  8. ^ Osthoff, Andreas (2024年9月24日). “Intel Lunar Lake CPU analysis - The Core Ultra 7 258V's multi-core performance is disappointing, but its everyday efficiency is good” (英語). Notebookcheck. 2025年6月18日閲覧。
  9. ^ published, Anton Shilov (2023年9月3日). “Intel To Spend $9.7 Billion On TSMC Outsourcing In 2025: Goldman Sachs” (英語). Tom's Hardware. 2025年6月18日閲覧。
  10. ^ published, Nick Evanson (2024年3月11日). “Intel's chief financial officer admits the company is 'heavier than we want to be in terms of external wafer manufacturing'” (英語). PC Gamer. https://www.pcgamer.com/hardware/processors/intels-chief-financial-officer-admits-the-company-is-heavier-than-we-want-to-be-in-terms-of-external-wafer-manufacturing/ 2025年6月18日閲覧。 
  11. ^ Bajwa, Arsheeya (2024年4月3日). “Intel slides as foundry business loss spotlights wide gap with rival TSMC” (英語). Reuters. https://www.reuters.com/markets/intel-slides-foundry-business-loss-spotlights-wide-gap-with-rival-tsmc-2024-04-03/ 2025年6月18日閲覧。 
  12. ^ Lunar Lake deep-dive: Intel's new AI laptop CPU is utterly different” (英語). PCWorld. 2025年6月18日閲覧。
  13. ^ 次世代CPU「Lunar Lake」でIntelが目指す“AI PC”とは? 驚くべき進化点と見える弱点、その克服法”. ITmedia PC USER. 2025年6月18日閲覧。
  14. ^ Kazuki (2024年6月6日). “Lunar Lakeでハイパースレッディング(HT)をするのは効率のため。Arrow LakeはHT対応に戻る可能性も”. ギャズログ|GAZLOG. 2025年6月18日閲覧。
  15. ^ ASCII. “Lunar LakeではPコアのハイパースレッディングを廃止 インテル CPUロードマップ (1/3)”. ASCII.jp. 2025年6月18日閲覧。
  16. ^ Intel officially unveils Lunar Lake, its Copilot+ AI PC chip” (英語). Engadget (2024年6月4日). 2025年6月18日閲覧。
  17. ^ NPUに新GPUにHTT廃止。 Intel「Core Ultra シリーズ2」は全部刷新して電力効率を追及した薄型・軽量向けCPU”. がじぇっとりっぷ (2024年9月23日). 2025年6月18日閲覧。
  18. ^ 株式会社インプレス (2024年6月4日). “【笠原一輝のユビキタス情報局】 ノートPCがより高性能、より長時間駆動へ!Lunar Lakeで40%の電力削減を実現できたワケ”. PC Watch. 2025年6月18日閲覧。
  19. ^ Bonshor, Gavin. “Intel Unveils Lunar Lake Architecture: New P and E cores, Xe2-LPG Graphics, New NPU 4 Brings More AI Performance”. www.anandtech.com. 2025年6月18日閲覧。
  20. ^ Intel's next-gen "Skymont" efficient core details leak out” (英語). VideoCardz.com. 2025年6月18日閲覧。

関連項目




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