1,3-ジヒドロキシベンゼンとは? わかりやすく解説

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レゾルシノール

分子式C6H6O2
その他の名称レソルシン、レゾルシン、レゾルシノール、Resorcin、Resorcinol、1,3-Benzenediol、Pelagol RS、Resorcine、Pelagol Grey RSデベロッパーF、C.I.オキシデーションベース31C.I.デベロッパー4、ペラゴールグレーRS、C.I.Oxidation Base 31、C.I.76505、C.I.Developer 4、Developer F、ペラゴールRS、m-ジヒドロキシベンゼン、m-Dihydroxybenzene、m-Hydroxyphenol、1,3-Dihydroxybenzene、Benzene-1,3-diol
体系名:1,3-ジヒドロキシベンゼンベンゼン-1,3-ジオールレソルシノール、1,3-ベンゼンジオール、m-ヒドロキシフェノール


レゾルシノール

(1,3-ジヒドロキシベンゼン から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/13 05:04 UTC 版)

レゾルシノール
識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
ECHA InfoCard 100.003.260
KEGG
PubChem CID
UNII
国連/北米番号 2876
CompTox Dashboard (EPA)
特性
化学式 C6H6O2
モル質量 110.111 g/mol
外観 白色の固体[2]
匂い かすかに[2]
密度 1.28 g/cm3, 固体
融点

110 °C

沸点

277 °C

への溶解度 110 g/100 mL at 20 °C
蒸気圧 0.0002 mmHg (25 °C)[2]
酸解離定数 pKa 9.15[3]
磁化率 −67.26×10−6 cm3/mol
屈折率 (nD) 1.578[4]
2.07±0.02 D[5]
危険性
GHS表示:
H302, H313, H315, H318, H400
P273, P280, P305+351+338
引火点 127 °C; 261 °F; 400 K[2]
608 °C (1,126 °F; 881 K)[4]
爆発限界 1.4%-?[2]
NIOSH(米国の健康曝露限度):
PEL
無し[2]
REL
TWA 10 ppm (45 mg/m3) ST 20 ppm (90 mg/m3)[2]
IDLH
N.D.[2]
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

レゾルシノール (resorcinol) とは、ベンゼン-1,3-ジオール(benzene-1,3-diol)の慣用名である。片仮名転記では、レソルシノールと書かれる場合も有るものの、本稿ではレゾルシノールの表記に統一する。この化合物はベンゼンジオールの1種であり、ベンゼン環のメタ位に、2個のヒドロキシ基を有する構造をしており、水に溶け易い。カテコールヒドロキノン(ハイドロキノン)の位置異性体にあたる。

合成

樹脂や、ベンゼン-1,3-ジスルホン酸を溶融アルカリで処理することで、レゾルシノールを得る。プロピレンベンゼンを原料とし、1,3-ジイソプロピルベンゼンから製造する。工業的にはクメンの自動酸化プロセスを応用した1,3-ジイソプロピルベンゼンの酸化により、過酸化物のジヒドロキシパーオキサイドを得て、酸触媒存在下で分解(クリベージ反応)によりレゾルシノールを得る。クメン法の副産物である1,3-ジイソプロピルベンゼンから製造可能なため、石油化学コンビナートによる生産に適する手法である[6][7]

性質

レゾルシノールは、常温常圧で無色の固体として存在する。しかし、光に対して少々不安定であり、光の当たる場所に放置すると、空気中の酸素により徐々に酸化されて変質し、ピンク色を呈するため保管は注意を要す。

レゾルシノールはヒドロキシ基を2つ有し、水素結合の供与も受容も可能であるなど、比較的分子間力が強くなる構造を有する。この関係で、常圧で沸点は280 セルシウス度 (℃)[8]、融点は110 ℃前後である[9][注釈 1]。これに対して、ヒドロキシ基を2つともメタノールとのエーテルにした1,3-ジメトキシベンゼンは、常圧で沸点は217 ℃前後、融点は-52 ℃である[10]。1,3-ジメトキシベンゼンは、レゾルシノールよりも分子量こそ大きいが、水素結合の受容のみ可能であるため、分子間力がレゾルシノールよりも弱く、レゾルシノールの方が沸点も融点も高い。

ベンゼンは水溶性が低いのに対して、レゾルシノールの水溶性が高い理由も、水素結合の供与と受容のいずれも可能であるヒドロキシ基を2つ有する点が影響している。もちろん、水に限らず、レゾルシノールは極性溶媒に溶け易い性質を持つ。なお、レゾルシノールはヒドロキシ基は、いずれもベンゼン環に直結したフェノール性のヒドロキシ基であり、単なる炭化水素に直結したヒドロキシ基と比べて、酸としては強い。レゾルシノールの水溶液の酸解離定数は、25 ℃において、9.81である[9]。また、レゾルシノールを100 (g/L)の濃度で溶解させた水溶液は、20 ℃において、pHが4から6程度と、弱酸性を示す[9]

用途

レゾルシノールの総需要の半分以上が、タイヤの強化材として用いられるタイヤコードの接着剤の原料である。次いで木材用接着剤原料、樹脂用難燃剤原料、樹脂用紫外線吸収剤原料となる。また、無水フタル酸と酸触媒反応してフルオレセイン(ガレイン)を生成し、蛍光染料の原料として重要である。

医療用途

主にピーリング剤として、5-15 パーセント (%) 濃度でニキビの治療に用い、ピーリング作用は10%以上の濃度で作用する[11]。文献では、20%濃度までが安全とされる[11]。しかし、妊婦が使用する際の安全性は、充分に確認されていない[11]

その他

レゾルシノールは還元力を有しており、殺菌剤や防腐剤として利用される場合も有る。

製造者

主なメーカーは杭州 Amino-chem、住友化学、独ランクセス、印Atulなどである[12]

これまで主なメーカーであった三井化学は、2012年4月に製造プラントで爆発事故を起こし、復旧は断念されて2012年12月末を以って正式に事業撤退した[13]。また、米国Indspecも2017年7月末をもって事業撤退した[14]。一方で住友化学は大分工場にプラントを新設し、 千葉と大分との2プラント体制にした[15]

脚注

注釈

  1. ^ 常圧における融点の値は、資料により差異が見られるものの、いずれも、110 ℃前後の値である。

出典

  1. ^ a b “Front Matter”. Nomenclature of Organic Chemistry: IUPAC Recommendations and Preferred Names 2013 (Blue Book). Cambridge: The Royal Society of Chemistry. (2014). p. 691. doi:10.1039/9781849733069-FP001. ISBN 978-0-85404-182-4 
  2. ^ a b c d e f g h NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0543
  3. ^ Gawron, O.; Duggan, M.; Grelechi, C. (1952). “Manometric Determination of Dissociation Constants of Phenols”. Analytical Chemistry 24 (6): 969–970. doi:10.1021/ac60066a013. 
  4. ^ a b CRC handbook of chemistry and physics: a ready-reference book of chemical and physical data.. William M. Haynes, David R. Lide, Thomas J. Bruno (2016-2017, 97th ed.). Boca Raton, Florida. (2016). ISBN 978-1-4987-5428-6. OCLC 930681942 
  5. ^ Lander, John J.; Svirbely, John J. Lander, W. J. (1945). “The Dipole Moments of Catechol, Resorcinol and Hydroquinone”. Journal of the American Chemical Society 67 (2): 322–324. doi:10.1021/ja01218a051. 
  6. ^ 岩国大竹工場爆発火災事故に係る事故調査委員会報告書について”. 三井化学. 2023年3月30日閲覧。
  7. ^ 南部博彦 (1980). “自動酸化技術を利用したフェノール類の製造――クメン法の発展とその応用――”. 有機合成化学 38 (7). doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.38.713. https://doi.org/10.5059/yukigoseikyokaishi.38.713 2023年3月30日閲覧。. 
  8. ^ Resorcinol(CID:5054)
  9. ^ a b c レソルシノール
  10. ^ 化学大辞典編集委員会 編集 『化学大辞典 (縮刷版) 4』 p.541(右下部) 共立出版 1963年10月15日発行 ISBN 4-320-04018-X
  11. ^ a b c J. Boer, G. B. E. Jemec (2010-1). “Resorcinol peels as a possible self-treatment of painful nodules in hidradenitis suppurativa”. Clinical and experimental dermatology 35 (1): 36–40. doi:10.1111/j.1365-2230.2009.03377.x. PMID 19549239. 
  12. ^ レゾルシノールの市場規模、2025年までに10億米ドル到達予測 用途別で最大シェアを占めるゴム製品の優位性は今後も続く見通し”. 株式会社グローバルインフォメーション (2021年1月6日). 2023年3月30日閲覧。
  13. ^ 岩国大竹工場でのハイドロキノンプラント稼動及びレゾルシン事業撤退について | ニュースリリース | 三井化学株式会社”. www.mitsuichem.com. 2019年6月4日閲覧。
  14. ^ Resorcinol plant to close | Chemical & Engineering News”. cen.acs.org. 2019年6月4日閲覧。
  15. ^ “レゾルシン製造設備の増強について” (PDF) (Press release). 住友化学. 2008. 2023年3月30日閲覧.



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