開水路
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/23 07:35 UTC 版)
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開水路(かいすいろ、英語: open channel)とは、水面を持つ水路およびその流れの区分のことである[1]。
概要
水がある容器の中(水路)を流れているとき、その流れが水面を持つかどうかによって開水路と管路(管水路)に区分され、水面を持つものが開水路、持たないものが管路と呼ばれる[1]。工学的な定義では、潤辺が閉曲線となるものが管路であり、そうでないものが開水路となる[4](潤辺については図2を参照のこと)。
例としては、船が使う運河や農業灌漑などに使う用水路、さらには下水道のようなものであっても水が満杯ではなく自由表面が現れるものも開水路として扱われる[5]。つまり、開水路かどうかは水路の形状そのものではなく、水の流れ方によって区別されるものである。
実際の河川など現実の開水路においてはある一方向(基本的には河道に沿った方向)の流れ成分が他の成分と比べて大きく(これを、流れが卓越しているという)、その他の方向の流速成分は無視できる場合が多い[6]。このような性質を持つ流れはユニフロー(uni-flow)あるいはプリズム的水路流れ(prismatic channel flow)と呼ばれ[7]、このユニフローにおいて、卓越した方向の流れを主流、主流に垂直な方向の流れを2次流(secondary currents)と呼ぶ[7]。この2次流のうち、河川の蛇行などの遠心力によって発生する2次流をプラントルの第1種2次流といい、この場合は主流の20%以上になることもある[6]。一方、直線的な水路に発生する2次流をプラントルの第2種2次流という[6]。上で述べたような無視できる2次流はこちらの第2種2次流であり、層流では理論的にゼロ、乱流でも平均して主流の約3%程度の大きさである[6]。
全ての水の流れは、3次元空間におけるナビエ・ストークス方程式によって再現されるが、厳密解は一般的に得られない[8]。しかし、このようなユニフローを対象とした一次元水理解析法と呼ばれる解析手法は、ほぼ解明されており[9]、水路内の水理量を平均量で代表させるなど簡便で合理的なため、多くの河川計画に使われている[10]。以下では基本的にこの一次元水理解析法を元にした記述を行う(2次元ないしは3次元的構造の流れについては高次元流解析の節を参照のこと)。
開水路の流れは、時間的にその水理量(水深や平均流速)が変化しない定常流(steady flow)と、変化する非定常流(unsteady flow)に分けられる[1]。定常流のうち、さらに空間的に(流れ方向に)変化しない流れを等流(uniform flow)と呼び、そうでないものを不等流(non-uniform flow)と呼ぶ[11]。射流と常流、限界水深で後述するように、流速によって常流と射流にも区別される[11]。また、非定常流であってもその変化が緩やかな流れは準定流(quasi-steady flow)となり、後述のキネマティックウェーブ理論で扱われる[12]。
基礎方程式と理論
以下で説明する開水路における一次元解析法では、以下の仮定を行う[13]。
- 2次流は無視できるため、流速は主流の断面平均流速図2: 開水路の断面図と断面を決定する諸量[1]図3: 定常開水路流れの概念図[14][15]図4: 比エネルギー・水深曲線[27]図5: 流量・水深曲線[28]図6: 層流の流速分布図7: 各平均流速公式による平均流速の変化概形この節の加筆が望まれています。
跳水
詳細は「跳水」を参照射流から常流に変化するときに生じる現象。エネルギーを損失する。
漸変流近似
水面形の分類
不等流計算
非定常流
この節の加筆が望まれています。河川の代表的な非定常流には「洪水」による段波などが存在する。
常流の水面波の伝播射流の水面波の伝播基礎方程式
連続式
エネルギー式
段波・ダムブレーク波
微小かく乱
キネマティックウェーブ理論
拡散型洪水波理論
ダイナミックウェーブ理論
高次元流解析
この節の加筆が望まれています。開水路と構造物
この節の加筆が望まれています。参考文献
- 禰津家久『水理学・流体力学』朝倉書店、1995年。ISBN 4-254-26135-7。
- 禰津家久、冨永晃宏『水理学』朝倉書店、2006年。ISBN 4-254-26139-X。
- 日下部重幸、檀和幸、湯城豊勝『水理学』コロナ社、2003年。ISBN 4-339-05507-7。
- 川合茂、和田清、神田佳一、鈴木正人『河川工学』コロナ社、2002年。ISBN 4-339-05506-9。
- C.A.ブレビア、S.J.フェラント『コンピュータ水理学』磯部雅彦訳、サイエンス社、1988年。ISBN 4-7819-0505-6。
- ^ a b c d e 日下部・檀・湯城『水理学』、p.38
- ^ 日下部・檀・湯城『水理学』、pp.38-39。
- ^ 禰津『水理学・流体力学』、pp.168-172。
- ^ 禰津・冨永『水理学』、p.201。
- ^ ブレビア・フェラント『コンピュータ水理学』、p.140。
- ^ a b c d 禰津・冨永『水理学』、p.147。
- ^ a b 禰津『水理学・流体力学』、p.28。
- ^ 禰津『水理学・流体力学』、p.26。
- ^ a b c 禰津『水理学・流体力学』、p.145。
- ^ 川合・和田・神田・鈴木『河川工学』、p.53。
- ^ a b 日下部・檀・湯城『水理学』、p.39。
- ^ 川合・和田・神田・鈴木『河川工学』、p.54。
- ^ 禰津『水理学・流体力学』、p.130。
- ^ a b 日下部・檀・湯城『水理学』、p.115。
- ^ a b 禰津・冨永『水理学』、p.202。
- ^ a b c d e 禰津・冨永『水理学』、p.221。
- ^ 禰津・冨永『水理学』、p.29。
- ^ a b 禰津・冨永『水理学』、p.28。
- ^ a b 日下部・檀・湯城『水理学』、p.52。
- ^ a b 禰津・冨永『水理学』、p.203。
- ^ a b c 禰津『水理学・流体力学』、p.146。
- ^ a b c d e f g h 禰津・冨永『水理学』、p.204。
- ^ 禰津『水理学・流体力学』、p.22。
- ^ 禰津・冨永『水理学』、p.148。
- ^ 禰津・冨永『水理学』、p.154。
- ^ a b 禰津・冨永『水理学』、p.149。
- ^ a b 禰津・冨永『水理学』、p.206。
- ^ a b 日下部・檀・湯城『水理学』、p.118。
- ^ 禰津・冨永『水理学』、p.205。
- ^ 禰津『水理学・流体力学』、p.148。
- ^ 禰津『水理学・流体力学』、p.147。
- ^ a b c d 禰津・冨永『水理学』、p.207。
- ^ a b c 日下部・檀・湯城『水理学』、p.117。
- ^ a b 禰津『水理学・流体力学』、p.149。
- ^ a b 禰津・冨永『水理学』、p.208。
- ^ 日下部・檀・湯城『水理学』、p.123。
- ^ a b ブレビア・フェラント『コンピュータ水理学』、p.141。
- ^ ブレビア・フェラント『コンピュータ水理学』、p.142。
- ^ 禰津・冨永『水理学』、p.143。
- ^ a b 日下部・檀・湯城『水理学』、p.124。
- ^ 禰津・冨永『水理学』、p.217。
- ^ a b 禰津『水理学・流体力学』、p.155。
- ^ a b c 日下部・檀・湯城『水理学』、p.126。
- ^ a b 禰津・冨永『水理学』、p.218。
- ^ 日下部・檀・湯城『水理学』、p.125。
- ^ a b c d e f 禰津・冨永『水理学』、p.219。
- ^ 日下部・檀・湯城『水理学』、p.127。
- ^ 禰津・冨永『水理学』、p.220。
- ^ a b 日下部・檀・湯城『水理学』、p.128。
- ^ a b 日下部・檀・湯城『水理学』、p.129。
- ^ 禰津・冨永『水理学』、p.222。
脚注
- ^ 流れの性質が、空間的にある程度均質であるとみなせる状態。
- ^ 全ての勾配が同じなので、以降これらを全てと書く。
- ^ 記号については特に断らない限り開水路のパラメーター節で定義したものとする。
関連項目
開水路流れ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/15 01:54 UTC 版)
自由表面を伴った流体流れに関し、水力直径が決定される必要がある。これは、開水路の断面積を潤辺で割ったものである。半円形水路では直径の半分となる。長方形水路では、水力直径は断面積を潤辺で割ったものとなる。いくつかの文献では、水力直径の4倍となる特性長さが用いられているが、これは配管流れにおける乱流の発生に関してレイノルズ数が同じ値となるように選択されたものである。他の文献では、遷移領域及び乱流領域では必然的に異なった値となるレイノルズ数とともに、水路ごとに慣習的に特性長さとしての水力直径を用いている。
※この「開水路流れ」の解説は、「レイノルズ数」の解説の一部です。
「開水路流れ」を含む「レイノルズ数」の記事については、「レイノルズ数」の概要を参照ください。
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