(連続の式 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/20 15:47 UTC 版)
  
 連続の方程式(れんぞくのほうていしき、英: equation of continuity、連続方程式、連続の式、連続式などとも言う)は物理学で一般的に適用できる方程式で、「原因もなく物質が突然現れたり消えたりすることはない」という自然な考え方を表す。 
 保存則と密接に関わっている。 
 
  
 狭義
 
 狭義には、流体力学における質量保存則 
 
 
   
   
    - 
     
         
       領域 Ω における物理量  q の総量  M の時間変化を  q の生成と流出と合わせて図示したもの。代表点のみの軌跡を記している。青い点の個数はΩにおける q の総量  M ( t ) を表す。ピンクの点の個数は湧き出し Δ t S を、黄色の点は流れだす流量 Δ t J を表す。図より
              が成り立つ事がわかる。
       
 
 
 
  
広義の連続の式をフラックス形式あるいは一般の保存則という[1]。q をあるスカラー物理量、Ωを固定された有界積分領域、∂ΩをΩの境界である閉曲面とする。 
q についての連続の式は、 
 
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  領域 Ω における q の単位時間あたりの増加量 
     と 境界 ∂Ω における q の単位時間あたりの流出量(流量) J との和は、 領域Ωにおける q の単位時間あたりの湧き出し量 S に等しい。 と 境界 ∂Ω における q の単位時間あたりの流出量(流量) J との和は、 領域Ωにおける q の単位時間あたりの湧き出し量 S に等しい。
   - 
    
        
 
と表現できる。 
ここで q は連続的に分布する量であり、上述の量はすべて何らかの「密度量」で表現できなければいけない。そこで、q の密度 ρ、q の流束 j 、q の湧き出し密度 σ を導入すると、 
 
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と表せる。ここで、dS は、境界 ∂Ω 上の微小素片における外向きの面積ベクトルであり、第2式は流束と面積ベクトルとの積の総和が境界を通って流れ出す q の流量であることを表している。 
これにより連続の式は 
 
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となる。 
ガウスの定理を使って第2項を体積積分で書き換え、第1項の時間微分と体積積分を交換すると 
 
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となるので、微分形 
 
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が得られる。 
特に、湧き出しがないときの連続の式 
 
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を保存形、あるいは、q の保存則の微分形と呼ぶ。 
 
流体における連続の式
 
質量保存則
 
速度が v で表される流れを考える。ρを質量密度、j を質量の流束とする。流れ、すなわち、移流あるいは対流は速度 v での物質の移動であるので、流束は 
 
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となる[2]。 
質量保存則から連続の式は 
 
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となる。 
 
輸送定理による導出
 
速度が v で表される流れにおける連続の方程式は、質量保存則とレイノルズの輸送定理を用いても導ける[1]。 
 
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ここで、
    は実質微分であり、Ω(t ) は流れと共に移動する任意の積分領域とする。1番目の等式は質量保存則を、2番目の等式はレイノルズの輸送定理を表している。
 は実質微分であり、Ω(t ) は流れと共に移動する任意の積分領域とする。1番目の等式は質量保存則を、2番目の等式はレイノルズの輸送定理を表している。 
これより、 
 
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が成立する。 
この式は、実質微分の定義 
 
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と公式 
 
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を使って、 
 
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と等価であることがわかる。 
 
非圧縮性流体についての連続の方程式
 
連続の方程式 
 
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に対して、非圧縮性流体の性質(密度が一定であること)を付加すると、非圧縮性流体における連続の式が導き出される。密度が一定というのは、空間的に一様という意味ではなく、変形していく領域内で一定という意味である[2]。つまり、
    となるので、ρ≠ 0 であることから、
 となるので、ρ≠ 0 であることから、 
 
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を得る。この式を非圧縮性条件ともいう。 
この条件を満たす流れにおいて、流れていく流体要素の体積は不変である。 
 
電磁気学における連続の方程式
 
電荷保存則
 
電磁気学における連続の式とは電荷の保存則の微分形である[3]。ρ を電荷密度、j を電流密度とすれば、連続の式は 
 
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となる。 
 
変位電流
 
マクスウェルの方程式において、電荷の保存則を満たすためにオリジナルのアンペールの式 
 
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に変位電流を導入する必要があった。修正されたアンペールの式 
 
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において、両辺に発散 ∇· を作用させると、左辺はゼロとなるので、 
 
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となり、ガウスの式 
 
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を代入することで連続の式が得られる。 
 
四元電流
 
電荷の保存則を表す連続の式は四元電流を使うことで、ローレンツ共変でコンパクトな形にすることができる。四元電流 Jμ (μ= 0, 1, 2, 3) を 
 
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と表す。ここで c は光速である。微分演算子 
 
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を定義すると、連続の式は 
 
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と表現できる。ただし、添字におけるアインシュタインの規約を採用した。 
 
量子力学
 
量子力学における連続の式は確率の保存則を表す[4]。 
Ψ(r , t ) を規格化された波動関数とする。確率密度 ρ、確率流束 j を 
 
 - 
  
    ![\begin{align} 
\rho &= \Psi^{*} \Psi\\
\boldsymbol{j} &= \frac{\hbar}{2m\mathrm{i}} \left [ 
  \Psi^{*}  \nabla \Psi  - \Psi      \nabla \Psi^{*} 
\right ]
\end{align}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/b222041499e1d149c84e2efbbd1d16a842959ab6)  
と定義すると、シュレディンガー方程式 
 
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を用いて、確率に対する連続の式 
 
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が得られる。 
 
連続の式の導出
 
シュレディンガー方程式とその複素共役の式 
 
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それぞれに Ψ* , Ψ をそれぞれ掛けて2式の差を取ると 
 
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更に 
 
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となり、連続の式 
 
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ただし、 
 
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    ![\begin{align}
  \rho &= \Psi^{*} \Psi\\
  \boldsymbol{j} &= \frac{\hbar}{2m\mathrm{i}} \left [ 
        \Psi^{*} \nabla \Psi 
      - \Psi     \nabla \Psi^{*} 
  \right ]
\end{align}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/b222041499e1d149c84e2efbbd1d16a842959ab6)  
が得られる。 
 
拡散方程式 
 
ブラウン運動などのミクロスケール由来の現象による物質の質量輸送現象を考える[5]。このとき、経験則であるフィックの法則(フィックの第一法則)により流束は 
 
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と密度の勾配で与えられる。係数 κ は拡散係数と呼ばれ、次元 
    をもつ。拡散係数が定数の時、連続の式から拡散方程式
 をもつ。拡散係数が定数の時、連続の式から拡散方程式 
 
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が得られる。 
 
脚注
 
 
出典