誘拐された母音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/17 01:17 UTC 版)
「ヘブライ語のティベリア式発音」の記事における「誘拐された母音」の解説
「誘拐された母音」とは、上に挙げた「完全母音」のそれぞれと対を成す、短く発音される7種類の母音である。 すべての種類の「誘拐された母音」が記号化されているわけではない。これは、「誘拐された母音」のそれぞれの音価の区別があいまいで、どの「誘拐された母音」を発音するのか、厳密に記号化するほど重要ではなかったからだと思われる。 「誘拐された母音」の記号としては通常「シュワー」が使用されるか、「シュワー」の隣に他の母音記号を組み合わせて表記される。これらの記号は普通、喉音を表す文字の下に記されるが、喉音以外の字母に記されている例も少なくない。 例:הַגֳּרָנוֹת(『ヨエル書』 第2章第24節)・אֶשְׁפֲּטֶךָ(『エゼキエル書』第35章第11節) IPAでの音価記号の形記号の名称(ヘブライ語)備考[ɑ̆] [ ְ ] または [ ֳ ] שְוָא(シュワー)またはחֲטַף־קָמַץ(ハタフ・カマツ) [ă] [ ְ ] または [ ֲ ] שְוָא(シュワー)またはחֲטַף־פַּתָּח(ハタフ・パタフ) [ĕ] [ ְ ] שְוָא(シュワー) [ɛ̆] [ ְ ] または [ ֱ ] שְוָא(シュワー)またはחֲטַף־סֶגוֹל(ハタフ・セゴール) [ĭ] [ ְ ] שְוָא(シュワー) この母音の表記に [ְִ] 「ハタフ・ヒリック」という記号が使用されている例があるが、非常にまれである。 [ŏ] [ ְ ] שְוָא(シュワー) [ŭ] [ ְ ] שְוָא(シュワー) 注:『アレッポ写本』では、通常はただの「シュワー」で表記されるような場合でも、替わりに「誘拐された母音」が表記されている場合が見られる。これは、置かれた状況により、微妙に異なって発音される「シュワー」の音価をより正確に表現しようとしているのである。また「ハタフ・ヒリク」は、下に「ヒリック」が記された喉音の字母の直後の字母に使用されている例が5箇所、同写本中にある。
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