血液脳関門を通過するDDS
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/23 03:39 UTC 版)
「超音波検査」の記事における「血液脳関門を通過するDDS」の解説
集束超音波の超音波照射エネルギーを徐々に下げていくと熱的作用が低下して機械的作用のみを利用することができる。この機会的作用による組織の振動は、組織内の毛細血管の密着結合を緩めることで血管透過性の亢進を導く。そのため集束超音波を用いて血液脳関門の透過性を亢進させ、治療薬を脳へ送達させる方法が考えられた。超音波照射のみで血管透過性を亢進させるためには超音波照射強度が高くなり組織障害のリスクが高まる。事実、1990年の報告では血液脳関門の透過性を十分に高めるには頭蓋骨切除が必要であった。超音波造影剤として利用されるマイクロバブルを併用すると比較的低い超音波強度で超音波の機械的作用を増強させることができる。 マイクロバブルに超音波を照射すると振動(オシレーション)と圧壊(キャビテーション)が誘導される。マイクロバブルの振動と圧壊は細胞膜に作用し一過性の小孔を形成し、細胞外の物質が細胞内に取り込まれることが知られている。この作用をソノポレーションという。マイクロバブルを血管内投与し体外から超音波照射すると組織の血管内でマイクロバブルの振動や圧壊が誘導され、周囲の血管内皮細胞間の密着結合に作用して血管透過性を変化させることができるのではないかと考えられている。血液脳関門の透過性の亢進の持続時間は数時間で可逆的と考えられている。代表的な研究として下記のようなものが挙げられる。集束超音波を血液脳関門に作用させ、乳癌治療薬の抗体医薬であるハーセプチンを脳内に移行させたという研究が知られている。脳腫瘍の患者に集束超音波とマイクロバブルを用いて抗癌剤のドキソルビシンリポソームやテモゾロミドを脳腫瘍に送達させた報告がある 。一方で集束超音波とマイクロバブルの併用は無菌性炎症を起こすという報告もあり副作用が懸念される。
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