自由意志と理性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 05:14 UTC 版)
Rationality in Action(邦題『行為と合理性』)と題された2000年度のジャン・ニコ講義においてサールは、自由意志についての従来の哲学的モデル(古典的モデル)には根本的な欠陥があり、それによって自由意志の理解が妨げられていると主張している。(数学的な決定理論を含む)古典的モデルによれば、自由意志に基づく行為とは、行為遂行者の心のなかで信念や欲求が因果的に十分(causally sufficient)なまでに達したときに遂行されるものである。しかしサールは、自由意志に基づく行為を実現するためには、われわれの信念や欲求と行為のあいだに飛躍(gap)が存在しなければならず、行為者の心にある信念や欲求のみでは行為を起こさせるためには因果的に不十分なのだと考える。このギャップを、サールは自己(self)と同一視する。非理性的な行為の可能性も、この飛躍によって生じるのであり、非理性的な行為を起こす可能性につねに直面しつつ理性的な選択を起こすのが、理性を持つ行為者の条件だとサールはする。 自由意志を脳の中に位置づけすることができるのかについて、サールは次のように考える。ある時間T1において行為者の心には信念や欲求があり、それは続くある時間T2において行為として実現されるのであるが、T1とT2のあいだにある飛躍を、実際の脳の物理的なプロセスのなかにどのように位置づけるのか(T1とT2のあいだの脳のプロセスに物理的因果性が存在するなら、自由意志は決定論的な世界のなかの幻想であり、もし因果関係が脳の中に見つからなければ、量子脳のような随伴現象的な説明を余儀なくされる)は、今後の課題とされる。
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