腕木式信号機の登場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 03:00 UTC 版)
腕木式信号機は、18世紀末から遠距離通信の手段として用いられるようになっていた腕木通信にヒントを得て、長方形の着色した板を用いて現示を表すものとして1841年に登場した。まずロンドン・アンド・クロイドン鉄道のニュー・クロス駅に設置され、1842年にはロンドン・アンド・ブライトン鉄道でも普及した。 当初は、腕木は信号柱の中に収納することができるようになっており、その状態が進行で、直角に腕木を出している状態が停止現示であった。しかし、進行現示であることを明確に示す必要があったことや着雪などで収納できない事由が発生したことから、後に斜め45度が進行に改められた。また夜間の灯火は、当初は白で進行を表していたが、停止の赤のレンズが破損した時に白になってしまうことや、沿線の民家などの灯りを誤認してしまうことから、緑が用いられるようになった。 ロンドン・アンド・クロイドン鉄道では、当時の能力の低かったブレーキ力を補うために1846年に遠方信号機を導入した。これは駅の本来の信号機より手前にもう1つの信号機を設置して、本来の信号機を中継するものであった。当初は遠方信号機が注意現示の時には一旦停止し、徐行して本信号機の位置まで前進していたが、後に徐行して通過に改められた。グレート・ウェスタン鉄道でも1852年に円板方形板信号機を遠方信号機として導入した。これは、本信号機の腕木式信号機と明確に区別できるようにしたためである。しかし、やがて腕木式信号機の腕木末端を魚尾形にしたりV字形にしたりといった形で、遠方信号機と本来の信号機を区別するようになっていった。 当初は信号機は駅の停止位置に設置されているわけではなく、プラットホームの中央付近に信号柱を立てて、それに双方向の腕木を取り付けており、両腕信号機と呼ばれていた。機関士は隣接線路に支障しない位置であれば、任意の位置に列車を止めることができた。現在でも博物館明治村に両腕信号機が保存されている。
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