群のコホモロジー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/30 07:45 UTC 版)
数学、とくにホモロジー代数学において、群のコホモロジー(英: group cohomology)とは代数的トポロジーに由来する技法であるコホモロジー論を使って群を研究するために使われる数学的な道具立てである。群の表現のように、群のコホモロジーは群 G の G 加群への作用をみることで、その群の性質を明らかにする。G 加群を Gn の元が n 単体を表す位相空間のように扱うことで、コホモロジー群 Hn(G, M) などの位相的な性質が計算できる。コホモロジー群は群 G や G 加群 M の構造に関する洞察を与える。群のコホモロジーは加群や空間への群作用の固定点や群作用に関する商加群や商空間を研究において一定の役割を果たす。群のコホモロジーは群論そのものへの応用はもちろん、抽象代数・ホモロジー代数・代数的トポロジー・代数的整数論などの分野でも用いられている。代数的トポロジーには、群のホモロジーと呼ばれる双対理論がある。
これらの代数的な概念は位相的な概念と密接に関連している。離散群 G の群のコホモロジーは G を基本群とする適当な空間——つまり対応するEilenberg-MacLane空間——の特異コホモロジーである。したがって Z のコホモロジーは円 S1 の特異コホモロジーと思うことができ、同様に Z/2Z のコホモロジーは P∞(R) の特異コホモロジーと思うことができる。
群のコホモロジーについては非常に多くのこと——低次コホモロジーの解釈・関手性・群の変更——が知られている。群のコホモロジーに関する主題は1920年代に始まり、1940年代後半に発達し、現在でも活発に研究が続いている。
動機
群 G はその表現を通じて研究されるべきであるという群論における一般的なパラダイムがある。このような表現をわずかに一般化したものに G 加群がある:G 加群とは群 G の各元が自己同型として作用するアーベル群 M である。われわれは G は乗法的に、 M は加法的に書くことにする。
G 加群 M が与えられたとき、 G 不変な元のなす部分加群
頂点が基点に写される特異単体の各辺に対応する基本群の元 x, y, ... を割り当てた様子。左から順に特異1単体、特異2単体、特異3単体。 Sn から Bn への準同型 κ を次のように定義する。
n = 0 の場合は自明なものが1つあるのでそれで定める。
n = 1 の場合。T : Δ1 → X を特異1単体とする。Δ1 の辺01は頂点が基点なので自然に基本群の元 x を定める。κ による T の像がこの x になるように κ : S1 → B1 を定める。考えている特異単体が明らかで T を [01] と表しているときは κ([01]) = [x] と書ける。
n = 2 の場合。T : Δ2 → X を特異2単体とする。先ほどと同様に、辺01が定める基本群の元 x と辺12が定める基本群の元 y がある。κ による T の像が [x, y] になるように κ : S2 → B2 を定める。考えている特異単体が明らかで T を [012] と表しているときは κ([012]) = [x, y] と書ける。
一般の場合も同様にして定める。これで
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