群のコホモロジーとは? わかりやすく解説

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群のコホモロジー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/01/30 02:38 UTC 版)

数学、とくにホモロジー代数学において、群のコホモロジー: group cohomology)とは代数的トポロジーに由来する技法であるコホモロジー論を使ってを研究するために使われる数学的な道具立てである。群の表現のように、群のコホモロジーは群 GG 加群への作用をみることで、その群の性質を明らかにする。G 加群を Gn の元が n 単体を表す位相空間のように扱うことで、コホモロジー群 Hn(G, M) などの位相的な性質が計算できる。コホモロジー群は群 GG 加群 M の構造に関する洞察を与える。群のコホモロジーは加群や空間への群作用の固定点や群作用に関する商加群や商空間を研究において一定の役割を果たす。群のコホモロジーは群論そのものへの応用はもちろん、抽象代数ホモロジー代数代数的トポロジー代数的整数論などの分野でも用いられている。代数的トポロジーには、群のホモロジーと呼ばれる双対理論がある。

これらの代数的な概念は位相的な概念と密接に関連している。離散群 G の群のコホモロジーは G基本群とする適当な空間——つまり対応するEilenberg-MacLane空間英語版——の特異コホモロジーである。したがって Z のコホモロジーは円 S1 の特異コホモロジーと思うことができ、同様に Z/2Z のコホモロジーは P(R) の特異コホモロジーと思うことができる。

群のコホモロジーについては非常に多くのこと——低次コホモロジーの解釈・関手性・群の変更——が知られている。群のコホモロジーに関する主題は1920年代に始まり、1940年代後半に発達し、現在でも活発に研究が続いている。

動機

G はその表現を通じて研究されるべきであるという群論における一般的なパラダイムがある。このような表現をわずかに一般化したものに G 加群がある:G 加群とは群 G の各元が自己同型として作用するアーベル群 M である。われわれは G は乗法的に、 M は加法的に書くことにする。

G 加群 M が与えられたとき、 G 不変な元のなす部分加群

頂点が基点に写される特異単体の各辺に対応する基本群の元 x, y, ... を割り当てた様子。左から順に特異1単体、特異2単体、特異3単体。

Sn から Bn への準同型 κ を次のように定義する。

n = 0 の場合は自明なものが1つあるのでそれで定める。

n = 1 の場合。T : Δ1X を特異1単体とする。Δ1 の辺01は頂点が基点なので自然に基本群の元 x を定める。κ による T の像がこの x になるように κ : S1B1 を定める。考えている特異単体が明らかで T[01] と表しているときは κ([01]) = [x] と書ける。

n = 2 の場合。T : Δ2X を特異2単体とする。先ほどと同様に、辺01が定める基本群の元 x と辺12が定める基本群の元 y がある。κ による T の像が [x, y] になるように κ : S2B2 を定める。考えている特異単体が明らかで T[012] と表しているときは κ([012]) = [x, y] と書ける。

一般の場合も同様にして定める。これで

という図式ができた。κ が複体の射となるように、つまりこの図が可換図式となるように 𝜕 : BnBn−1 を定めたい。

例として n = 2 の場合を考える。T を 特異2単体とし、これを [012] と書くことにする。また境界を [01], [12], [02] と書くことにする。先ほどと同様に辺01が定める基本群の元を x、辺12が定める基本群の元を y で表す。特異複体の境界作用素の定義から 𝜕[012] = [01] + [12] − [02] である。辺02は辺01と辺12を繋いだものとホモトープなので κ([02]) = [xy] である(考えている特異単体がホモトピー写像を与える)。これに注意することにより κ𝜕[012] = [y] − [xy] + [x] が分かる。よって 𝜕[x, y] = [y] − [xy] + [x] と定義すれば可換図式になる。

n = 3 の場合も同様に考えれば 𝜕[x, y, z] = [y, z] − [xy, z] + [x, yz] − [x, y] と定義すればよいことが分かる。

一般の場合には

と定義するとうまくいく[注釈 1]。この 𝜕 により {Bn} は複体になるので、この複体のホモロジー群を取ることができる。また、この複体の Hom(・, Z) を取ると双対複体が得られ、これからコホモロジー群を得ることができる。このコホモロジー群は GZ に自明に作用する場合に#双対鎖複体で定義したものと全く同じである。このようにして彼らは基本群 G から純代数的に複体を構成し、群の(コ)ホモロジー群の定義に到達した。そして κ が定める特異ホモロジー群から群のホモロジー群への準同型を調べることでホップの研究を一般化した。

脚注

注釈

  1. ^ MacLane (1976, p. 13) では右辺の最初の項が [x2, ...,xn+1] となっているが、これは誤りと思われる。

出典

  1. ^ これは G 加群の圏が群環 Z[G] 上の加群圏と同値なので十分多くの入射対象をもつことを使っている。
  2. ^ Milne 2008, p. 62.
  3. ^ Serre 1979, Section VII.3.
  4. ^ テンソル積 NZ[G] M はどんな右 Z[G] 加群 N と左 Z[G] 加群 M に対しても定義されていることを思い出そう。もし N が左 Z[G] 加群ならば、すべての gGaN に対して ag = g−1a と定めることで、N を右 Z[G] 加群にする。この取り決めによりテンソル積 NZ[G] MN, M が左 Z[G] 加群のときにも定義できる。
  5. ^ Milne 2008, Remark II.1.21.
  6. ^ Brown 1982, Section III.9.
  7. ^ Quillen, Daniel. The spectrum of an equivariant cohomology ring. I. II. Ann. Math. (2) 94, 549-572, 573-602 (1971).
  8. ^ Hopf 1964, p. 13.
  9. ^ Weibel 1999, p. 10.
  10. ^ Eilenberg & MacLane 1943, p. 155.
  11. ^ MacLane 1976, pp. 11–14.
  12. ^ Eilenberg & MacLane 1945, p. 491.

参考文献

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