羊水フィブロネクチンの糖鎖
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/03 17:04 UTC 版)
「フィブロネクチン」の記事における「羊水フィブロネクチンの糖鎖」の解説
一方、羊水フィブロネクチンの糖鎖は事情が少し異なり、臨床医学的に重要である。まず、含量は、血漿フィブロネクチンや細胞性フィブロネクチンが5.8%のところ、羊水フィブロネクチンは9.5〜9.6%と糖鎖が多い。 羊水フィブロネクチンには、血漿フィブロネクチンの糖鎖プラス、以下の糖鎖がある。 1985年、ワシントン大学の箱守仙一郎研究室の松浦秀充(Matsuura Hidemitsu)は、癌胎児性フィブロネクチン(=羊水フィブロネクチン)に反応し、細胞性フィブロネクチンや血漿フィブロネクチンに反応しないモノクローナル抗体・FDC-6を作成した。 1989年、松浦、Greene、箱守は、FDC-6のエピトープが、C末端のヘパリン結合部位とフィブリン結合部位の間のフィブロネクチンIII型ドメインの1つであるIIICSに存在することを突き止めた。構造は、Val-Thr-His-Pro-Gly-TyrのThr(トレオニン)にα-N-アセチルガラクトサミンが結合した構造だと同定した。このエピトープは、癌胎児性フィブロネクチンに特異的に存在し、細胞性フィブロネクチンや血漿フィブロネクチンには存在しなかった。このことで、癌胎児性フィブロネクチンを特異的に検出できる手段を得たことになる。松浦らは、この抗体の特許を取得した。 この抗体を利用したのが、産科で早産の検査に行なわれるフィブロネクチン検査である。フィブロネクチン検査は米国でも日本でも普及している。 詳細は「胎児性フィブロネクチン」を参照 細胞はがん化すると糖タンパク質の糖鎖が正常と異なる。がん組織も同様である。それで、フィブロネクチンの糖鎖の変化に着目してがんの診断に応用しようと試みされているが、臨床検査に導入されるまでの研究成果は得られていない。
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