絶対フロベニウス写像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 01:24 UTC 版)
「フロベニウス自己準同型」の記事における「絶対フロベニウス写像」の解説
X を標数 p > 0 のスキームとする。 X のアフィン開集合 U = Spec A を選ぶ。環 A は Fp-代数であるので、フロベニウス自己準同型を持つ。V を U のアフィン開集合とすると、フロベニウスの自然性により、V上へ制限したときの U 上のフロベニウス写像は V 上のフロベニウス写像である。結局、フロベニウス写像を貼り合わせることは、X の自己準同型を与える。この準同型のことを絶対フロベニウス写像と言う。定義により絶対フロベニウス写像は、X から自分自身への準同型である。絶対フロベニウス写像は、 Fp-スキーム上の恒等函手からそれ自身への自然な変換である。 X が S-スキームで、S のフロベニウス写像が恒等写像であれば、絶対フロベニウス写像は S-スキームの射(morphism)である。しかし、一般には、そうとは言えない。例えば、環 A = F p 2 {\displaystyle A=\mathbf {F} _{p^{2}}} を考える。X と S とを、双方とも、恒等射となる構造射 X → S をもつ Spec A とする。A 上のフロベニウス写像は、a を ap へ写す。 この写像は F p 2 {\displaystyle \mathbf {F} _{p^{2}}} -代数の写像ではない。もしそうだとすると、 F p 2 {\displaystyle \mathbf {F} _{p^{2}}} での元 b による積がフロベニウス自己準同型を適用することと可換となってしまう。しかし、 b ⋅ a = b a ≠ F ( b ) ⋅ a = b p a {\displaystyle b\cdot a=ba\neq F(b)\cdot a=b^{p}a} であるから、これは正しくない。前者は A の始まる F p 2 {\displaystyle \mathbf {F} _{p^{2}}} -代数構造の b 作用であり、後者はフロベニウスにより引き起こされた F p 2 {\displaystyle \mathbf {F} _{p^{2}}} 上の作用である。結局、Spec A 上のフロベニウス写像は F p 2 {\displaystyle \mathbf {F} _{p^{2}}} -スキーム上の射ではない。 絶対フロベニウス写像は、次数 p の純粋な非分離射である。この微分は 0 である。絶対フロベニウス写像は積を保存し、このことは任意の 2つのスキーム X と Y に対し、FX×Y = FX × FY であることを意味する。
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