減らない草履
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 10:08 UTC 版)
「千夜一夜物語のあらすじ」の記事における「減らない草履」の解説
昔、カイロにアブー・カシム・エル・タンブリというケチで有名な薬種商がいたが、彼の草履は度を越えたつぎはぎだらけで、カイロの町中の人は草履のつぎはぎのひどさを知っていた。ある日、アブー・カシムが浴場(ハンマーム)に行き風呂から出ると、自分の草履がなくなっていて、代わりに美しい黄色いスリッパがあったので、誰かがはき間違えたと思い、そのスリッパを履いて帰ったが、アブー・カシムの草履は、そのあまりの汚さと臭さのため下足番が隔離していたもので、黄色いスリッパは法官(カーディー)のものであった。風呂から出た法官は、自分のスリッパがないことに怒り、残された草履のつぎはぎからアブー・カシムに違いないと思い、アブー・カシムを捕らえ、黄色いスリッパを取り返した。アブー・カシムは多額の金を払い、なんとか牢から出してもらった。 アブー・カシムは、損をしたのは草履のせいだと考え、草履をナイル河に捨てたが、草履は漁師の網にかかり、網を傷つけた。漁師たちは草履のつぎはぎからアブー・カシムの草履に違いないと思い、アブー・カシムに草履を返し、網の修理代を払わせた。 アブー・カシムは、次に草履を田舎の運河に捨てたが、草履が運河の水車に絡んで水車を壊し、水車の主は草履のつぎはぎからアブー・カシムの草履に違いないと思い、アブー・カシムに草履を返し、水車の修理代を払わせた。 アブー・カシムが草履の処分に困っていると、近所の犬が草履を咥えて走り去ったが、その草履が犬の口から外れて飛んで行き、老婆に当たり、老婆は死んでしまった。老婆の家族は草履のつぎはぎからアブー・カシムの草履に違いないと思い、アブー・カシムに草履を返し、老婆の血の代償を払わせた。 アブー・カシムは法官の前に行き、草履の所有権を放棄すると宣言した。それを見た法官も証人たちも大笑いした。
※この「減らない草履」の解説は、「千夜一夜物語のあらすじ」の解説の一部です。
「減らない草履」を含む「千夜一夜物語のあらすじ」の記事については、「千夜一夜物語のあらすじ」の概要を参照ください。
- 減らない草履のページへのリンク