沼野充義による批評
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/23 09:07 UTC 版)
「美しいアナベル・リイ」の記事における「沼野充義による批評」の解説
ロシア文学者・東京大学名誉教授の沼野充義は、本作について、まず(単行本版の)タイトルが、耳に抵抗のないつるつるした表題が氾濫する時代に対する反逆的姿勢であるとする。またグロテスク・リアリズムと社会的コミットメントと独自の私小説の間を行き来しながら実験をおこなってきた大江と、ナボコフのような「審美的」な作家は無縁であると思われてきたところ、『憂い顔の童子』(登場人物ローズさんの元夫が「『ロリータ』おたく」 という設定であった)、『さようなら、私の本よ!』(ナボコフの『賜物』からタイトルが採られている)、そして本作、と大江にとって、どんどんナボコフが近しいものとなってきていることの意外性に言及する。そしてそれが、大江が本作において、これまで書くことのできなかった「ロマンティックな小説」の試みをして、思いがけない若々しさを発揮していることと、本質的に関係するだろうとして、大江は、本作において円熟とは異なる唐突で大胆な表現の自由を獲得したと評した。
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