機能・がん抑制タンパク質との関連
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 00:57 UTC 版)
「ガンキリン」の記事における「機能・がん抑制タンパク質との関連」の解説
ガンキリンはがんタンパク質(oncoprotein)であり、その過剰発現によりマウス線維芽細胞およびヒト腫瘍細胞において腫瘍の形成や細胞増殖を促進する。これはガンキリンがサイクリン依存性キナーゼCDK4に結合することにより、CDK4がp16やp18により阻害されることを妨害し、同時にがん抑制タンパク質RBとも結合してRBのCDK4によるリン酸化、転写因子E2Fの活性化を引き起こすことが一因である(図)。 ガンキリンの結合は、RBのユビキチン化およびプロテアソームによる分解も促進する。なお、ガンキリンがプロテアソームS6b サブユニットとRBに同時に結合するという事実は、ガンキリンがユビキチン化タンパク質を26Sプロテオソームへ運ぶキャリアーとして働き、その分解を促進する可能性を示唆している。 ガンキリンは細胞のアポトーシスを阻害する。この抗アポトーシス活性は、ガンキリンがE3ユビキチンリガーゼMDM2に結合し、がん抑制タンパク質p53のユビキチン化およびプロテアソームによる分解を促進することによると考えられている(図)。p53は多種多様な生体ストレスから細胞を守り、がんを防ぐ働きから 「ゲノムの守護神」とも呼ばれる最も重要ながん抑制タンパク質で、ヒトのがんの約 50% で遺伝子変異が認められる。 ガンキリンは、上記2つの主要ながん抑制タンパク質RBおよびp53に加えて、C /EBPα、TSC2、HNF4α、CUGBP1などのがん抑制タンパク質にも結合し、そのユビキチン化およびそれに続くプロテアソームによる分解を促す。さらにガンキリンはがん抑制タンパク質p16、PTENおよびFIH-1(低酸素誘導性因子-1を阻害する因子)をも阻害するため、「がん抑制因子の殺し屋(killer of tumor suppressors)」とも呼ばれる。 ガンキリンはその他、NF-κB/ RelA、MAGE-A4、IGFBP-5、SHP-1、ATG7、Keap1/Nrf2、WWP2/Oct4、PI3K/Akt、IL-6/STAT3、IL-8、YAP1、並びに低酸素誘導性因子-1等といった多くのタンパク質に結合し、多くのシグナル伝達経路に影響を与え発がんに寄与している。
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